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 home > 今日の朝刊2004年07月22日(木)付 

 社 説


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07月22日付

■豪雨と猛暑――自然が突きつけたこと

 新潟県と福井県が大雨に襲われたのに続いて、今度は関東地方が熱波に見舞われた。何とも異様な夏で、これから先が思いやられる。

 東京の都心では20日、大正時代に気象庁が現在の場所で観測を始めて以来、最も暑い39・5度を記録した。同じ日のバンコクやシンガポールをしのぎ、酷暑で知られるニューデリーの39度をも上回ったというから驚きだ。

 気温として発表される数字は、芝生の上1・5メートルの高さで、直射日光が当たらないようにおおった温度計で測定したものだ。コンクリートとガラスに囲まれ、照り返しのきついビル街では、40度を大きく超えたに違いない。

 そんな街中を歩いていると、汗まみれになるばかりか、頭もぼんやりしてくる。銀座の街路樹も葉をしぼませていた。少しでも水分を蓄えておこうと木々も必死なのだろう。

 東京は20世紀の100年間で平均気温が3度高くなった。名古屋、仙台、福岡など他の都市は上昇が2度台だから、地球の温暖化が進むなかでも東京の高温化はひときわ目立つ。

 都心では超高層ビルや高層マンションがどんどん増えていく。たしかに東京にはビジネス機会が多い。観劇や音楽を楽しむ場所もたくさんある。若者から働き盛り、便利さを求める年配者までを引きつける魅力にあふれている。首都圏の経済力が突出する構図である。

 しかし、明るい面ばかりではない。集積と集中は大地震など大災害のときの危険を高めるし、緑と空き地が減っていく分、暑さもひどくなる。

 実際、都心の暑さは、海沿いの高層ビル群が内陸への海風をさえぎっているからだという説がある。エアコンがなければやっていけない街の建物は、室内を冷やした分だけ熱気を街にはきだす。

 そればかりか、夏場にフル稼働する火力発電所から排出される二酸化炭素は地球の温暖化を早める。

 東京の熱波は、日本海側に洪水を招いたのと同じ高気圧からの空気の流れがもたらした。日本海側で雨を降らせた暖かい湿った空気が山脈を越え、乾燥した熱風になって吹き下ろしたのだ。いわゆるフェーン現象である。

 新潟県では、豪雨による死者15人のうち12人が70歳以上のお年寄りだった。そのなかには、寝たきりだった男性が自宅1階に取り残され、家の中でおぼれた悲劇もあった。妻が2階に引き上げようとしたが1人では持ち上がらなかった。何とも痛ましい。

 表裏の関係にあった熱波と豪雨。若者たちが集まる東京都心を熱波が襲い、お年寄りが住む町を大雨が襲った。ふたつの対照的な自然の猛威は、この国の社会のふたつの顔をも見せてくれた。

 自然の猛威から生命を守り、より暮らしやすい社会と環境をつくるにはどうしたらいいか。異様な夏が私たちに突きつけた課題である。


■米軍の再編――言われるままでは困る

 在日米軍の姿が、この数年で大きく変わるかも知れない。

 世界的な米軍再編のなかで、日本を拠点とする米軍の配置や機能をどう改めるか。日米両政府の非公式協議を通じて、ブッシュ米政権の描く輪郭が少しずつ明らかになってきた。再編は、米国家安全保障会議の担当者が「ビッグバン」と表現するほどの大規模なものとなる可能性もある。主な構想をあげてみる。

 ▼アジア太平洋地域をにらむグアムの第13空軍司令部を東京・横田の第5空軍司令部に統合する▼米ワシントン州の陸軍第1軍団司令部を神奈川県のキャンプ座間に移す▼沖縄海兵隊の一部を日本本土などに移転させる▼空母艦載機の夜間離着陸訓練を神奈川県の厚木から山口県の岩国に移す、などだ。

 横須賀を基地とする空母に加えて、2隻目の空母を太平洋に配備する、普天間基地の移設先として辺野古沖以外も考える、という案も検討されている。

 狙いははっきりしている。地域紛争、大量破壊兵器の拡散や国際テロといった脅威に対処するため、冷戦以来の固定的な配置を改め、機動的に戦力を投入できる態勢に切り替えようというのだ。

 朝鮮半島から台湾海峡、インド、パキスタンをへて中東にいたる「不安定な弧」を重視し、日本を作戦の中心と位置づける。司令部の集中はその表れだ。

 そうだとすると、単なる米軍部隊の移動と片づけるわけにはいかない。むしろ、在日米軍の役割が質的に大転換すると言う方が正確だろう。

 何より、在日米軍が広くアジア太平洋からインド洋、中東までをにらむ機能を持つことになる。イラク戦争でも日本の基地から艦艇や空軍機が参加したが、司令部機能までが日本に置かれるとなると、その意味合いははるかに重い。

 日米安保条約は、在日米軍の目的を「日本と極東の平和と安全のため」と定めている。こんどの再編は、この目的を大きく超えることにつながる。

 米軍は一つであって、在日米軍と他の米軍を区別することはできないというのが、米政府の本音だろう。しかし、日本には日本の政策がある。「周辺事態」での協力など、安保体制の範囲は確かに広がってきたが、無制限にしていいはずはない。国民合意も得られまい。

 再編をきっかけに、在日米軍と自衛隊の一体性がさらに進む可能性もある。対テロ戦争やイラク戦争で、小泉首相は米国の要請に応えて自衛隊の活動をいっきに拡大した。集団的自衛権の行使を認めるべきだとも言う。そんな潮流に流されることなく、日本にとって何が利益かという立場から、米側の再編構想を冷徹に判断しなければならない。

 これを機会に、沖縄の負担をいかに軽くするかということも重要だ。

 日米の協議内容は公表されていない。しかし、米国の提起をどう受け止め、どう対応するのか。国会で説明し、議論に付すことは小泉首相の義務である。



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