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【社説】2006年11月21日(火曜日)付

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日中両国の関係の改善に弾みがついてきた。
安倍首相の初訪中から1カ月余、ハノイで両国首脳は再び顔を合わせた。首相は「戦略的な互恵関係に引き上げるために、さらに努力していきたい」と述べ、胡錦涛国家主席も意欲を見せた。
大局を見据え、双方が利益を得る外交をめざす「戦略的互恵関係」は10月の北京会談で合意された。ハノイでは、その具体化の一つとして、経済全般にわたる閣僚会議と、エネルギー分野での閣僚対話を検討することで一致した。
中国は日本にとって最大級の貿易相手国で、大切な投資先でもある。知的財産権の保護をはじめとして、詰めなければならない課題が山積している。
また、ともに石油の大消費国だが、摩擦ばかりが目につき、協力どころではなかった。互恵関係を築く第一歩として、エネルギー分野に取り組むのは現実的な判断といえる。
なかでも対立の象徴となってしまった東シナ海のガス田開発については、共同開発をめざして協議することで両国外相が合意した。その成果に期待したい。
2度の首脳会談の間にも、政府間ではさまざまな対話が動き出している。
深刻な対立を招きがちな歴史認識に関しては、相互理解を深める一助として有識者による共同研究を進める。12月にも最初の会合が開かれる。
その対象には、戦後も含まれる。平和の道を歩んできた日本の戦後史も研究してほしい、と日本側が要望した結果だ。この時代に踏み込めば、中国側は、文化大革命で多くの犠牲者を出したことなど政権の過ちにも触れなければならないが、提案を受け入れた。
政治体制が異なる国との歴史研究は不可能という声も日本側にあったが、歩み寄ることで動き出した。冷静に相手の声に耳を傾け、歴史問題の解決への道筋を探ってほしい。
また、途絶えていた日中防衛交流も再開する見通しだ。歴史から軍事まで幅広い交流が一斉に走り出した観がある。
ここまで好転したのも、靖国神社参拝で安倍首相が慎重な姿勢を取ってきたからだ。北京会談では「この問題が外交的、政治的問題となっていることから、靖国神社に行くか行かないか言及しない」と語っている。あいまいな言い回しだが、小泉前首相と違って外交に直結する問題であることは認めている。
北朝鮮の核実験という深刻な事態や東アジア情勢の変化を考えると、日中首脳の率直な対話は欠かせない。
胡国家主席ら中国首脳の訪日も視野に入ってきた。弾みのついた関係改善の流れを大切にしていきたい。まずは互恵の実績を一つずつ重ね、信頼関係を培っていくことだ。
安倍首相は会見で、日米同盟を基軸としつつも、中国や韓国なども含めた「ダイナミックな外交」を展開する考えを示した。その実践を見守っていきたい。
脳出血や心筋梗塞(こうそく)で倒れて労災認定を受けた人は、昨年度330人にのぼり、過去最高となった。このうち157人は亡くなっていた。「過労死」が国際語になって久しい。
こうした長時間労働をなんとか減らせないか。厚生労働省は来年の法案提出をめざし、労働法制の改正を労働政策審議会に諮問している。
労働基準法は、使用者に対して労働者を1日8時間、週40時間を超えて働かせてはならないと定めている。しかし、働き盛りの30代の男性の場合、4人に1人は週60時間以上働いている。連日、長い残業をしているのが実態だ。
この残業を減らすため、厚労省は残業代の割増率を引き上げることを提案している。いまでも残業代は勤務時間内の賃金に比べて高い。それをもっと高くしようというのだ。そうすれば、企業は社員を勤務時間内に効率的に働かせ、残業を抑えるだろうという発想だ。
労働側は基本的に賛成している。使用者側も人件費を押し上げる残業は減らしたい。ただ、割増率を引き上げることに対しては、「人件費がかさんで、国際競争に生き残れない」と反論する。
厳しい競争にさらされている業界の悩みはわかる。だからといって、長時間労働に目をつぶるわけにはいかない。残業を減らすには、割増率を引き上げるしか決め手はない。ここは経営者も厚労省の提案を受け入れるべきだ。
法改正とは別に、急いで手をつけるべき問題がある。横行している不払い残業をなくすことだ。不払い残業が続けば、割増率を引き上げても意味がない。
残業代をきちんと払わないで働かせるのは、明白な労働基準法違反だ。こうした違法な残業で昨年度、労働基準監督署から是正を指導された事業所は、100万円以上の事例に限っても約1500社にのぼる。対象になる労働者は約17万人で、金額は約230億円に達した。
これは氷山の一角だろう。違法な残業の摘発を強めるべきだ。こんな残業をさせていた企業には課徴金を科すなど制裁をもっと重くすることを考えていい。
気になるのは、週40時間の枠にとらわれずに働かせることができる制度が提案されていることだ。さまざまな働き方が広がったため、自らの判断で働くことも認めようというのだが、この場合、残業代はまったく支払われない。
この制度は米国で広まり、日本でも規制緩和の流れの中で出てきた。企業は「労働時間でなく、成果で公平に評価することができる」と期待する。
しかし、不払い残業がはびこる現状で、こうした制度を採り入れれば、残業代を払わずに働かせることを合法化するだけではないか。適用する人を限定するとしても、導入は時期尚早だろう。
企業とそこで働く人たちとの力関係には、まだまだ大きな差がある。労働法制は働く人たちを保護するのが目的であることを忘れてはならない。
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