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理想の4番
新主砲が語る

広島・前田
長距離打者に変ぼうした広島の前田。日刊スポーツ提供
 新4番が元気だ。松井(巨)は開幕から存在感を示し、前田(広)は長距離打者へと変ぼうする兆しを見せる。イチロー(オ)の挑戦は、新たな4番像の構築だ。彼らが描く理想の4番とは――。(記録は21日現在)

確実性

広島・前田
打率2割7分8厘、打点19、本塁打7

 寡黙な職人肌が4番の心境をとつとつと明かした。9日の阪神戦の八回。この日唯一の安打、右越え逆転満塁弾を飛ばした日だった。「自分はそんなに(本塁打を)打てない。走者がいるときに、いい結果を出したいと思うだけです」

 打点王争いのトップを走る前田の勝負強さの中身は何か。広島OBの解説者、川口和久さんが投手の目で見る。「最初から勝負球で入るような細心さが必要で、正確なコースでないと打たれる。その打撃の確実さが怖いという4番です」

 古傷をもつ右足の状態がいい。ひと振りで決めるずば抜けた打撃感覚が全開だ。「とにかくストライクを、ああだこうだ考えずに振っていこうと思ってる」と前田。例えば7本塁打のうち第1ストライクを打ったのが4本。初球は、この満塁弾を含めて3本だ。

 広島の快進撃は、まさしく前田のひと振りから始まっている。開幕戦、昨季4戦全敗の巨人の上原に初打席で先制アーチを浴びせ、勝利への端緒を開いた。それも初球――。達川監督はいう。「3連敗するのではという重圧の中、あの一発で楽になった」。4番・前田のすごみが凝縮されていた。

威圧感

BW・イチロー
打率3割7分、打点12、本塁打1

違和感はあるけれど、いつか最強の4番として君臨する。イチローの4番は、そんな思いを抱かせる。

 本人は、こう語る。「見栄えという点ではよくないですね。4番というチームの中心として相手を威圧する雰囲気。打った後に表情に出ない貫録が僕にはないですから」恐らく、長打力を指しているのだろう。ダイエーの王監督が「やっぱりちょっと違う」と漏らした思いと同じだ。打って走れるアベレージヒッターとみる向きが、周囲にもある。

 しかし、仰木監督の見方は違う。「意外なときに本塁打を打って、後は三振というのではダメだ。好機にしっかりバットのしんでとらえる。外野フライでも内野ゴロでもいい」。その意味で、最も頼れる4番なのだ。

 「試運転」とする春先にしては、好成績と言っていい。「チャンスが多いのは悪い気はしない。集中しますね」。試合を重ねるにつれ、イチローもその魅力を肌で感じ始めている。パワーに欠けるとは思わない。が、挑戦を繰り返すイチローが自らうなずけるようになったとき、今度は自他ともに認める最強の4番が誕生する。

元気の源

巨人・松井
打率3割3分3厘、打点14、本塁打3

 「チームが苦しんでいる時、勇気を与える1本を打てる打者。それが4番だと思います」。プロ8年目のゴジラの”主砲”像だ。

 1996、98年の2度、4番で開幕を迎えたが、結果が出ない。「きれいに打ちたい」。四番としての完ぺきさを求めていた。

 今は違う。11日の阪神戦。一回の好機、ドン詰まりの打球が遊撃手の後方に落ちた。この先制打でチームは活気づき、10点。「形はどうあれね」。笑って、そう言った。

 長嶋監督は「3番打者最強論」を唱える。「だから、松井は3番」と言い続けた。それでも「4番を打ちたい」と主張してきたのには、わけがある。

 昨年、打率3割4厘、自己最多の42本塁打。満足いく数字だった。では、次に何を目指すのか。それが見えなかった。「打順へのこだわりというより、自分を追い込み、逃げ道をなくすことが大きかった」

 スロースターターのはずが、今年は開幕から打撃好調。チームにも、自身にも「4番」の意識はプラスに作用している。「自分の成績より、チームの勝利。チームのためにというのを忘れないでいたい」。それも、4番の条件だ。

 ●落合博満の目

 オリックスがイチローを、広島が前田を4番に置いたのは、正解だ。

 例えば、監督が打順を決めるとき、まっさらな紙にまず4番の名前を書けば、後は自然と埋まっていく。それが4番。打撃で日本一のイチローが入り、ネコの目打線は解消された。

 一方、前田の勝負強さはチーム一。本塁打も去年までは20本前後だが、それは江藤がいたから「自分はつなぎ」と考えていたのだろう。潜在能力は30本以上。ローズ(横)は、大物打ちのブラッグスが去った途端、長距離砲に生まれ変わっている。

 巨人はだれが4番を打ってもいい球団だ。ただ、「打順が選手を育てる」という意味では、3人の中で松井が最も大きく変わった。ボール球に簡単に手を出し凡退という場面が昨季までは目立ったが、それがない。自分に神経を使わせ、後ろの打者の打ちやすい状況を作ることも4番の仕事。少し分かってきたようだ。

では、12球団一の4番はだれか。日本シリーズのような短期決戦なら、集中力で清原(巨)。135試合を戦うなら、ローズということになる。

 今は打線のつながりで点を取る時代。「4番が打てなければ、負け」の時代は去り、4番の比重は軽くなっている。それでも、4番は4番という意識は、監督にも選手にもある。何より、135試合、休まないこと。そして、年齢による衰えがくるまで、だれにも渡さない覚悟で、3人には4番を打ち続けて欲しい。

(プロ野球解説者=談)

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