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99日本シリーズ/挫折を経て

◆中継ぎに誇り――落合英二、5年ぶり10勝――若田部健一

落合
中日・落合

 8年前の5月1日、神宮球場。スカウトたちが見守る中、東都大学野球を代表する4年生の2人が、豪速球を投げ合っていた。

 日大の落合、駒大の若田部。直球で押しまくる。「意地の張り合いでした。落合さんは若田部さんを打とうと、打席でもむちゃ振りしていた。おれが東都のエースだと自己主張していた」。日大の3年生だった中日・渡辺が振り返る。

 8回だった。投げた途端、落合の右ひじに激痛が走った。疲労骨折と診断された。折れた骨の1ミリほどが元通りにつかない。スカウトたちは潮が引くように姿を消した。残ったのは中日だけだった。

 だから、落合のプロ生活はけがとの闘いから始まっている。昨年、「中継ぎエース」の役割をもらって「先発に勝ち星がつき、抑えにセーブがつけば、僕はいいんです」と言えるようになったのも、そんな経験と無縁ではない。

 1度、地の底をはった男は、わき役にもプライドを持つ。「おれがやらなきゃ」という先発投手のころの力みは消え、苦しい場面で登場する「待ち」の仕事を確実にこなすようになった。一昨年までのプロ6年間で通算14勝の平凡な投手が変身した。

若田部
ダイエー・若田部

 「落合とは、お互いに刺激し合う存在だった。大舞台でやり合えるのは楽しみ」。若田部は「旧友」と呼ぶ落合との再対決へ、意気込みを隠さない。

 落合の故障で一躍ドラフトの目玉になって、入団1年目にいきなり10勝を挙げた。2年目は5勝、3年目にまた10勝。ライバルとは対照的だった。

 しかし、心にすきがあったのかもしれない。壁にぶつかる。勝ち星が挙がらず、昨年は2軍落ちも経験し精神的に腐っていた。

 その若田部を復活させたのは、新任の尾花投手コーチの一言だ。「投手陣には磨けば光る宝がいっぱい。1番手は若田部」。評価され、闘志に火が付く。今季は5年ぶりに10勝に届いた。首脳陣は「球種や調子でなく、精神面の充実が大きい」と話す。

 8年前のスコアブックに、若かった2人の戦いが刻まれている。ともに被安打7、自責点3。終盤に打ち込まれ、8回途中で交代している。配球もコースもお構いなしに、剛球を競った青春譜だ。

 ともに30歳になった。落合は今、ぶっきらぼうに言う。「若田部? 意識なんかしませんよ。僕らはダイエーと戦うだけです」

 むき出しにしていた青春時代のライバル心は消えている。挫折の時間を経て初体験するシリーズは、青春の決算でもある。(宇野彰一)

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◆99年日本シリーズ日程
   球場開始時間
第1戦23日(土)福岡ドーム18時
第2戦 24 18時15分
 25日(月)移動日 
第3戦26日(火)ナゴヤドーム18時20分
第4戦27日(水)18時20分
第5戦28日(木)18時20分
 29日(金)移動日 
第6戦30日(土)福岡ドーム18時15分
第7戦 31 18時15分
<注>どちらかの4勝で打ち切り

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