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初対決、天才打者も脱帽 イチローの腰が、ひける。147キロのストレートが、外角高めに決まった。腕を伸ばしきった先のバットが、むなしく空を切る。 1回、カウント2−2からの6球目だ。「うれしい」と怪物ルーキー。「速かった」と天才ヒッター。 こん身の直球が、初対決を制す。それは、5年連続首位打者の振り子打法を狂わせた、1球にもなった。 昨年12月の入団会見。「イチローさんを力でねじ伏せたい」。18歳は誓っている。「持てるものを全部出してほしい。僕もそうする」。対戦を前にして、25歳も応じた。松坂はその初勝負を制すと、さらなる力を見せつける。 3回2死二、三塁。鋭く曲がるスライダーで、バットを振らせない。6回無死。直球を5球続けた後、スライダーを沈ませて空振りに。3連続三振にねじ伏せた。「直球ばかりか、変化球にも力があった」と、イチローに天を仰がせた。 3日に右手中指に違和感を覚えた。それ以来の登板にもかかわらず、8回141球を投げて自己最多の13奪三振。3安打無失点に抑え込んだ。「今まで自信が持てなかった。でも、今日で自信が確信に変わった」。イチローを封じ、一層の飛躍を自ら明言する。 野茂、伊良部が米国に渡り、力勝負できる投手が消えて久しい。「これからもイチローさんから三振を狙う」。松坂の挑戦は、終わらない。「勝負以外の楽しみができました」。イチローが、雪辱を誓った。 真っ向勝負を求め合う2人。新たなライバル物語が、始まった。(由利英明) ●首位打者も引き立て役 5年連続首位打者のイチローも、この日は松坂の「引き立て役」だった。初対決は、外角直球に腰が引けたように振り遅れて空振り三振。2打席目はほぼ真ん中へのスライダーに手が出ず見逃し三振。3打席目も外角スライダーを空振り三振し、鋭い目つきをしてベンチへ引き上げた。 同一投手から1試合で3連続三振を喫したのは、1994年9月の近鉄戦で高村に喫して以来のこと。「(投球のとき)なかなか胸のマークが見えてこない」と、打ちにくい理由を分析し、「後半でもあれだけのスピードを出せるんだから、基礎体力があるのでしょう」と18歳のルーキーを絶賛した。
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