「肩は重くなかったけど、力んでしまった。調子は悪くなかった」
試合後、宜野座の主戦比嘉裕は疲労のせいではないことを強調したが、ボールにいつもの切れはなかった。岐阜第一、桐光学園、浪速という3つの強豪校を相手に、167センチの小さな体で投げた球数は432球。準々決勝の第4試合で延長戦を投げぬいた後の連投で疲れがないはずがない。
1回裏、マウンドに立った比嘉裕は体の切れが悪いように見えた。一番、二番と1球もストライクを取れずに歩かせ、犠打をはさんで3四球。この回こそ次打者の併殺崩れで失った1点にしのいだが、その後も仙台育英打線に毎回のように小刻みに加点され、中盤を終えてスコアは0―6。宜野座は守りでリズムをつくれず、それが打撃にも悪影響を与えた。
グイグイと力で押してくる仙台育英の左腕芳賀の速球に、宜野座の打者のスイングは空を切る。5回までわずか2安打で、6回表に1死から先頭の山城尚、比嘉裕、嘉陽の3連打で1点を返すが、後続が倒れて1点止まり。芳賀に14三振を喫する1―7の完敗となった。
試合は完全に押されていたが、ナインは最後の最後まで笑顔をたやさず、甲子園で野球をすることができる喜びを満喫していた。6回裏から比嘉裕の後を受けた背番号1の2番手仲間も、憧れのマウンドに立てた喜びを全身で表した。
仲間は、比嘉裕があまりにもすばらしかったので出番がなかったが、昨秋に肩を壊すまでは文字どおりのエース。7回裏2死二塁のピンチを迎えると、捕手山城尚をマウンドに呼ぶ。サインの確認かと思えば、笑顔で山城尚に話しかけ、聞いた山城尚の方も笑顔で守備位置に戻っていく。次の球、肩を痛めて下手投げに変えていた仲間がいきなりオーバースローで投げた。目先を変えて打者を打ち取ろうという相談だったらしく、見ている方も楽しくなる熱投だった。
宜野座を圧倒した仙台育英は、試合を重ねるごとに強くなっている印象がある。主戦芳賀も4試合を完投していながら疲労の気配はない。得意のパームボールを多投する組み立てではなく、準々決勝の市川戦と宜野座戦では力で抑えこむ直球勝負。甲子園に来てから成長している仙台育英と、試合巧者の常総学院のどちらに勝利の女神が微笑むのか。