マグワイア、大リーグ記録の62号放つ

  ●本塁打新記録一騎打ち
 ●ソーサVS.マグワイア ●ソーサの62本目

62号を放つマグワイア
 62号本塁打を放ち、ベースを回るマグワイア=AP

 米大リーグ、セントルイス・カージナルスのマーク・マグワイア一塁手(34)は8日、米ミズーリ州セントルイスのブッシュ・スタジアムで行われたシカゴ・カブス戦で、今季第62号本塁打を放ち、大リーグ年間本塁打の最多記録を更新した。これまでの記録は1961年にロジャー・マリス(ヤンキース)が達成し、7日にマグワイア自身が到達した61本だった。

 前日、タイ記録をマークしたマグワイア選手は第2打席の4回、トラックシル投手の第一球を打ち返した。打球は、鋭い当たりで、左翼フェンスのやや上に突き刺さった。一塁ベースを確認するように踏んだ後、ゆっくりカブスの選手と握手やハイタッチを繰り返しながら、ベースを一周した。世紀の快挙を目の当たりにして興奮する満員の観衆に、マイクを握ったマグワイアは「セントルイスに、そしてみなさんのサポートに感謝します。私の家族、息子、シカゴ・カブス、サミー・ソーサに。信じられない」と語った。

 58本で追うライバル、サミー・ソーサ外野手の目の前での2日続けてアーチだった。カージナルスの今季145試合目での達成だ。残り試合は18試合あり、さらに記録を伸ばしそうだ。マグワイア選手は途中、出場していない試合もあり、出場試合数でいえば137試合目、今季451打数目での新記録だった。61本塁打した時点のマリスは、588打数だった。

 マグワイア選手は今年5月8日、メジャー4726打数目での通算400号を放ち、それまで最短だったベーブ・ルースの4854打数を上回った。八月二十日には大リーグ史上初の三年連続50本塁打を記録していた。

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マグワイアの本塁打記録達成の軌跡
                                            
 号  月・日    相 手  主な本塁打記録
 1、3・31ドジャース開幕戦で満塁弾
 4、4・ 4パドレス開幕から4試合連続のナ・リーグタイ
 7、  14Dバックス1試合3発
13、5・ 8メッツ史上最速の通算4726打席目で400号
16、  16マーリンズ飛距離166メートルの特大アーチ
20、  19フィリーズ今季2度目の1試合3発、大リーグタイの41試合目で年間20号
25、  25ロッキーズ22日から4試合連続
27、  30パドレス5月終了時の最多本数。従来の記録は24
5月の月間16本は史上タイ
37、6・30ロイヤルズ6月終了時の最多本数。従来の記録は32
40、7・12アストロズ史上最速の90試合目で年間40号
44、  26ロッキーズカージナルスの年間球団新
45、  28ブルワーズ7月終了時の最多本数。従来の記録は41
50、8・20メッツ史上初の3年連続50本
史上最年長の34歳324日で50号達成
年間50号到達は史上タイの125試合目
52、  22パイレーツここ3年の合計が史上最多の162本に
55、  30ブレーブス8月終了時の最多本数。従来の記録は51
57、9・ 1マーリンズナ・リーグの年間新
ここ2年の合計が史上最多の115本に
59、   2マーリンズ自己の年間最多。昨季の記録を上回る
60、   5レッズルースの年間記録に並ぶ
61、   8カブス大リーグの年間タイ。マリスと並ぶ
62、   8カブス大リーグの年間新記録

(注)Dバックスはダイヤモンドバックス

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マグワイア、新記録達成に祝福の輪

 マグワイア、新記録達成は、四回二死、第2打席だった。初球、真ん中低め直球は、弾丸ライナーとなった。全力で一塁へ、マグワイアは走る。左翼線いっぱいの本塁打となるのを見届けると、一塁コーチと抱き合った。興奮で飛び越していた一塁を踏み直し、「ウイニングラン」が始まった。カブスの野手も、握手をする。チームメートが出迎える本塁で、前日と同じようにマシュー君を抱き上げた。花火が舞い、スタンドでカメラのフラッシュが光り続ける。マグワイアは改めて、マシュー君とキスをした。

 前日のデーゲームから、この日はナイトゲームに変わった。サングラスをはずしたマグワイアの顔には、試合前から笑みがこぼれ続けていた。新記録への緊張は、感じられなかった。

 六一年、マリスがルースの記録を破る61号を放ったのは、ヤンキースの最終163試合目(引き分け再試合1を含む)だった。60号が出た159試合目から、4試合後のことだ。しかしマグワイアは、タイ記録、新記録を2試合連続で成し遂げた。

 祝福の輪に、右翼の守備位置からソーサも駆けつけた。二人でお互いにキスを投げ合う。それからマグワイアは、一塁側スタンドに駆け込み、かつての記録保持者マリスの遺族と抱き合った。目から、涙がこぼれていた。

 試合が中断し、歓声が響き続ける球場で、マグワイアがマイクを握った。

 「セントルイスの町、息子、シカゴ・カブス、そしてサミー・ソーサ。みんなに感謝を捧げたい。すべてがアンビリーバブルだ」


マグワイア、タイ記録達成

 三十七年ぶり、本塁打の最多記録に並んだ――。

 米大リーグ、セントルイス・カージナルスのマーク・マグワイア一塁手(34)は七日、地元球場での試合で今季61号本塁打を放ち、一九六一年にロジャー・マリス(ヤンキース)がうち立てた大リーグの年間記録と肩を並べた。

 対戦相手は、本塁打競争を繰り広げていたサミー・ソーサ外野手(29)の属するシカゴ・カブスだった。野球は、長く米国の「国技」と目されてきたが、このところ、バスケットやアメリカンフットボールなどに押され、人気は停滞気味だった。そのもやもやを打ち破るような本塁打量産。新記録もまず間違いない。

 「だれが史上最大の長距離打者か」という議論も起き、人々の間に「ベースボール回帰」現象を生んでいる。
(9月8日付夕刊、米ミズーリ州セントルイス=山本秀明、山中季広)

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 一回、マグワイア選手の初打席。スタンドは総立ちになる。モーガン投手の3球目は真ん中高め速球。これを左翼席へ打ち込んだ。
 両手を広げ、右手でガッツポーズ。ベースを一周し、バットボーイを務めていた一人息子のマシュー君を抱き上げた。十歳の息子の手には、しっかりと栄光のバットが握られていた。

 ◆父の誕生日

 マグワイア、ソーサ両選手のどちらが早くマリスの記録を捕らえるか、米国内は盛り上がっていた。今季144試合目でのタイ記録達成は、六一年のマリスの163試合目(引き分け再試合1を含む)を上回った。

 八七年、マグワイア選手は49本塁打した。50本の大台が期待されたが、マシュー君の誕生と重なった。
 「50本は、また狙える。でも、この子が生まれるのは一回だけだ」。そう言って最終戦を欠場していた。

 試合後、マグワイアはマリスの遺族とタイ記録を喜んだ=AP
 総立ちのスタンドには両親がいた。ライナーが二階席と三階席の間に弾むと、二人は抱き合った。この日は父ジョンさんの六十一歳の誕生日だった。
 「父の誕生日に61号が打てて幸せだ。ベースを回っていて、子供のころに(大リーグ通算最多本塁打の)ハンク・アーロンがベーブ・ルースの記録を抜いた場面を思い出した」。マグワイア選手は感慨深げだ。

 ◆けがが転機

 この本塁打打者の転機は九一年のシーズンだった。それまで才能に任せてバットを振っていた。それがこの年、腰やかかとを痛め打率2割1厘と悩み抜いた。対戦投手のビデオを見て研究するようになった。けがの予防に、筋力トレーニングも本格的に始めた。

 無理なスイングがなくなり、九五年には39本塁打、九六年は52本塁打、そして昨年は58本塁打。腕回りは51センチ。196センチ、114キロの体は「ビッグマック」と呼ばれるようになった。

 「人生はやり直せる。大学時代やマイナー選手時代は本当に雑なものだった。でも何かをきっかけに変えることができる」と話す。

 ◆ライバル

 本塁打競争でも人気でも、マグワイア選手がソーサ選手を一歩リードしてきた。マグワイア選手は米国生まれで、エリート野球人生を歩んできた。ドミニカ共和国出身のソーサ選手には、そんなマグワイア選手に引け目を感じる部分があったようだ。

 しかし、マグワイア選手は、ソーサ選手と会うたびに仲のよさを見せて、「二人が主役」と強調した。他人を思いやる姿は、児童虐待防止団体に年間百万ドル(今季の年俸八百三十三万ドル)を寄付する行動と合わさって、「模範選手」のイメージを定着させた。

 二人の競争は球場にファンを呼び戻した。観客動員数は、九四年から翌年まで続いた選手ストで大きく落ち込んでいた。それが今年は、スト前年の七千二十万人に達する見込みだ。この日もダフ屋から入場券を買う人が後を絶たず、一枚六ドルの立ち見券が二百五十ドルまでつり上がった。セリグ大リーグコミッショナーは「おかげで三年間尾を引いたストの痛手から立ち直れた」と喜ぶ。

 米大リーグでは一九一九年、ワールドシリーズを舞台に「ブラックソックス事件」と呼ばれる八百長があり、スター選手が永久追放になった。陰りが見えた人気を復活させたのは、翌二〇年と二一年に54、59本塁打したベーブ・ルース(ヤンキース)だった。マグワイア選手を「現代のベーブ・ルース」とたたえる声もある。

 61本目の本塁打を放った直後、マグワイア選手は、右翼の守備についていたソーサ選手に投げキスを送った。ソーサ選手は拍手で偉業を祝福した。

 ◆シーズン55本塁打の日本プロ野球記録を持つダイエー・王監督の話
 残り試合が多かったので、あまりプレッシャーを感じずに打てたんだろう。ソーサというライバルもいたから、自分だけの戦いではなく、いい緊張感があった。マグワイアにとっては、いいレース運びだった。
 彼は実績もあるが、記録を更新するシーズンというのは、気持ちがのってしまうところがある。打てない球も打てちゃうんだ。ただ、彼は引っ張るだけじゃなく、センター方向にも打てるのが強み。62本打ってホッとするかもしれないが、ソーサもいる。二人とも大幅に記録を更新するんじゃないかな。


アメリカ大リーグの本塁打記録、記録保持者の家族が会見

 米大リーグのカージナルスは7日から、カブスとの2連戦に突入。年間本塁打記録争いを繰り広げている現在58本塁打のサミー・ソーサ(カブス)が、60本塁打のマーク・マグワイア(カージナルス)と直接対決することになり、米ミズーリー州セントルイスは異常な盛り上がりを見せている。
 直接対決を前に、年間61本塁打の大リーグ記録を持つロジャー・マリス(ヤンキース)の遺族が6日、セントルイスのブッシュ・スタジアムで記者会見した。

 遺族はこの日、現地入りした。飛行機の中でマリス未亡人のパトリシアさんが体調を崩し、病院へ行くアクシデントがあったが、4人の息子が会見に臨んだ。
 長男のマリス・ジュニアさんは、父親の記録が破られそうなことに「奇妙な気分だ」と話した。続けて、ロジャー・マリスが記録をうち立てたものの、野球殿堂入りしていないことから「今起きていることは、父にとってもいいこと。父の名前が出ることで、殿堂入りできたらいい」と、父の名誉の再確認を期待した。

 ロジャー・マリスは引退前の2年間を、カージナルスで過ごした。晩年を過ごしたセントルイスで父親の記録が抜かれそうなことを、遺族は感慨深そうだった。 (9月8日付朝刊)


マグワイア最速60号 ベーブ・ルースに並ぶ

 1934年に来日した時のベーブ・ルース

 【セントルイス(米ミズーリ州)5日=山本秀明】米大リーグ、セントルイス・カージナルスのマーク・マグワイア一塁手(三四)は五日、当地のブッシュ・スタジアムで行われたレッズ戦で今季第60号本塁打を放ち、一九二七年に60本塁打を記録したベーブ・ルース(ヤンキース)と肩を並べ、大リーグの年間最多本塁打記録である六一年のロジャー・マリス(ヤンキース)の61本に、あと1本と迫った。大リーグ史上、年間60本塁打した打者は三人目となった。

 マグワイア選手は一回一死一塁で迎えた第1打席、レイエス投手の内角直球を左翼席へ打ち込んだ。カージナルスの今季142試合目での60号だった。ルースの60号は154試合目(当時は154試合制)で、マリスの60号は159試合目(現在と同じ162試合制)。マグワイア選手は、最も早い試合数で到達した。

 マグワイア選手のライバルであるシカゴ・カブスのサミー・ソーサ外野手(二九)は五日、ピッツバーグでのパイレーツ戦で58号を放ち、マグワイア選手を2本差で追っている。

 ●マグワイア一塁手の話
 ルースのしたことはすごいこと。それに並んだなんて、信じられない。次の1本に向け、いつも通りに振っていく。(9月7日付朝刊)


37年ぶりに本塁打記録更新か

 「マグワイアvs.ソーサ」――終盤を迎えた米大リーグが、本塁打競争で熱く燃えている。2日、カージナルスのマーク・マグワイア一塁手(34)が58、59号を打てば、カブスのサミー・ソーサ外野手(29)も56号と追い掛けた。残り試合はマグワイア選手が23、ソーサ選手が22。1961年にヤンキースのロジャー・マリス選手がつくった61本の年間最多記録が破られるのは時間の問題だ。37年ぶりの新記録を目前に、球場の外ではあやかり商売が登場し、マグワイア選手の筋肉増強剤使用をめぐってドーピング(禁止薬物使用)論争も巻き起こっている。(ニューヨーク=山本 秀明)<9月3日付夕刊>

■エリートとハングリー

 ロサンゼルス郊外の町に育ったマグワイア選手は、10歳のときにリトルリーグ初打席で本塁打したという。少年時代はパワフルな投手で、球を受けた父が親指を骨折した逸話が残る。南カリフォルニア大でも終始スター選手で、ドラフト1位でプロ入りした。

 メジャー2年目の87年、アスレチックスで49本塁打を放ち、アメリカン・リーグの本塁打王に輝いた。今季は史上初の3年連続50本塁打を記録し、2年連続のベーブ・ルース(ヤンキース)を抜いた。

 一方、ソーサ選手はドミニカ共和国出身、貧しい少年時代だった。父が病弱で6歳からオレンジを売り、靴を磨いて家計を助けた。初めてのグラブは、牛乳パックを裏返して作った。

 85年、16歳のときに3500ドルでマイナー契約。異国で夢中でバットを振って、800万ドルを稼ぐ選手にのし上がった。過去40本塁打が最高だったが、今季、突然の変身を遂げた。

 2人の競争はエリートと、ハングリー精神を持つ若者の争いといえる。人気はマグワイア選手の方が高い。選手名などが入った服の売り上げは、マグワイア選手がグリフィー選手(マリナーズ)に次ぐ2番目、ソーサ選手は8番目だ。

■人気回復に貢献

 先月末に米国のテレビショッピング会社が62本目のホームランボールを25万ドルで買い取ると発表した。金額は、マリスの61本目のボールを拾った少年が手にした額の50倍。ボールは数々のイベントで使われるそうだ。

 カブスの本拠リグリー・フィールド周辺ではビルの所有者らが、ひともうけしようと躍起だ。球場の左翼後方には、グラウンド内をのぞけるビルがいくつかある。今季はそこが、ソーサ選手を見たがる人の「臨時観客席」になった。所有者らは「来年はここを年間席として売り出そう」と計画しているという。

 大リーグの観客数は今年、約10%増えた。関連商品が前年よりも12%も多く売れたのは、94年のストライキ以降初めてといわれる。大リーグのパトリック・コートニー広報部長は「ストライキで失った以上のファンを取り戻した」と話す。

■作られた体?

 ドーピング論争は思わぬ余波だった。マグワイア選手が筋肉増強作用を持つアンドロステンジオンを使用していたことが表に出た。本人も「91年、けがをしたときに使ったら体が強くなった。それがきっかけ」と認めた。ブルージェイズのカンセコ選手も「6カ月前から使っている」と話し、球界に使用者が多いことをうかがわせる。

 アンドロステンジオンは、国際オリンピック委員会(IOC)や米プロフットボールリーグ(NFL)などで禁止薬物になっている。精神障害や肝臓、心臓疾患をもたらす副作用があると言われている。しかし、この成分を含む栄養補給剤などは米国では薬局などで購入でき、大リーグは禁止していない。「作られた体だ」「いや、ルール違反はしていない」と、世論は分かれる。大リーグは急きょ、医学関係者の意見を聴く方針を打ち出した。大リーグの薬物対策遅れを指摘する声もある。米国オリンピック委員会のマイク・モーラン広報担当は「大リーグは、これを機に薬物規制の見直しをしてほしい」と話す。(9月3日付夕刊)


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