マグワイア70号、ソーサは66本

〜 大リーグ本塁打競争に終止符 〜

 ●ソーサVS.マグワイア
 ●マグワイアの62本目 ●ソーサの62本目

ソーサ
 1回の第1打席は、投ゴロ併殺打に終わったカブスのソーサ=AP
ソーサ及ばずも、プレーオフ進出決めて晴ればれ
 【シカゴ28日=山本秀明】

 米大リーグの年間最多本塁打記録争いを展開していたカブスのサミー・ソーサ外野手(29)は二十八日、当地でジャイアンツとのナショナル・リーグのワイルドカード(最高勝率の二位)決定戦に出場したが、本塁打は出ず、通算66本塁打で今季のリーグ日程を終了した。
 この結果、二十七日に全日程を終了したカージナルスのマーク・マグワイア一塁手(34)の70本が、新しい大リーグ記録として残ることになった。

 試合はカブスが5―3でジャイアンツを破り、プレーオフ進出を決めた。

  ◇            ◇

 地元リグリー・フィールドのほぼ満員の観客や、いつものように左翼場外のウェーブランド通りで、ホームランボールを待ちわびるファンの期待は、かなわなかった。

 八回、最後の打席でソーサは、ミートに徹した右前安打だった。この試合4打数で2安打したが、66まで積み上げた本塁打の数字は伸ばすことはできなかった。

 初めのうちは緊張が勝っていたようだ。一回の第1打席は、止めたバットに球が当たって投ゴロ併殺だ。四回は、カーブにタイミングが合わず空振り三振。六回にようやく、中前へ安打を打ち返した。

 ソーサは「本塁打よりプレーオフ進出が大事だ」と、口癖のように言ってもいた。ドミニカ共和国出身のスラッガーは今季、ずっとマグワイアの一歩後ろを歩いていた。

 チームは決戦で、プレーオフ進出を果たした。本塁打はなかったけれど、ソーサは晴ればれとした表情だった。

(1998年9月29日付 夕刊から)


マグワイア the70th
 70号本塁打を放ち、笑顔でダイアモンドを一周するマグワイア=AP
マグワイア、連日の2連発でソーサに4本差

 事実上、レースは終わった。
 米大リーグの年間最多本塁打記録争いは二十七日、セントルイス・カージナルスのマーク・マグワイア一塁手(34)が2本塁打を放ち、通算70本塁打の大記録をうち立てて今季を終了した。対するシカゴ・カブスのサミー・ソーサ外野手(29)は本塁打がなく66本でリーグ戦を終えた。

 カブスはプレーオフ進出をかけたワイルドカード争い(最高勝率の二位)で同率一位になり、二十八日に進出決定戦(1試合)を戦うことになったが、ソーサ選手が4本の差をうめるのは簡単ではない。全米を巻き込んだライバル物語が終わりを告げようとしている。
 (セントルイス=山本 秀明、ヒューストン=亘理 信雄)

  ◇            ◇

 米中部時間二十七日午後二時九分(日本時間二十八日午前四時九分)、セントルイスでのカージナルス―エクスポズの三回、マグワイア選手に二度目の打席が回ってきた。打球は左翼への69号本塁打となった。情報はすぐに、ヒューストンへ届いた。直後の二時十四分、アストロズと対戦するカブスの三回、ソーサ選手も二度目の打席。だが、空振り三振に倒れた。

 マグワイア選手は七回にも、70号をマークする。ソーサ選手は本塁打がなかった。第2打席の明暗が、そのまま本塁打競争の明暗になった。

 マグワイア選手が打てば、ソーサ選手が追いかける。ライバルがいたから、この歴史的な本塁打レースは繰り広げられた。

 一九六一年、ヤンキースのロジャー・マリスが61本塁打してベーブ・ルースの記録を破ったとき、チームにミッキー・マントルという人気者のライバルがいた。二十日に連続試合出場記録が止まったオリオールズのカル・リプケン選手には、八〇年代、海を隔てた日本に記録を更新し続ける衣笠祥雄(広島)という選手がいた。六一年当時、マントルの勝ちを望むファンが多かった。球聖ルースの本塁打記録を破ったマリスは憎まれ役だった。しかし今回は二人が尊敬し合い、友情のエールを交換しながらすがすがしく競い合ってきた。

 二人にはそれぞれの役回りがあった。幼児虐待防止団体に年間百万ドルを寄付するマグワイア選手は一人息子のマシュー君の面倒もよくみる模範的な市民、父親のイメージだ。

 ドミニカ共和国出身のソーサ選手は同郷社会に光を与えた。ニューヨーク・マンハッタン北部のワシントンハイツ地区は、同国の出身者約十五万人が住む全米最大のヒスパニック地域だ。スペイン語が通じ、店先や車に「SOSA」の四文字がおどる。「彼はわれわれに夢を与えてくれた」

 スポットライトはこれまで、マグワイア選手に当たり続けていた。62号本塁打の球にマグワイア選手のときだけ特別な印をつけたり、ソーサ選手が62号を打ったときにセリグ・コミッショナーが観戦していなかったり、大リーグの対応はマグワイア選手が中心といえた。

 最近、セリグ・コミッショナーが不手際をソーサ選手にわびた。実社会でいまだに差別的な待遇を受ける人々は、ソーサの活躍に勇気をかき立てられた。

(1998年9月28日付 夕刊から)


試合楽しむ余裕も生まれ
 【セントルイス(米ミズーリ州)26日=山本秀明】

 年間最多本塁打記録争いをするカージナルスの マーク・マグワイア一塁手は26日、当地のブッシュ・スタジアムで行われたエクスポズ戦で2本塁打を放ち、通算68号本塁打を記録、カブスのサミー・ソーサ外野手に2本差をつけた。2人は27日、今季最終戦を迎える。

 マグワイア選手は4回、左翼へ67号を打ち、7回には左中間へ68号の2点本塁打をマークした。

 ヒューストンでアストロズ戦に挑んだソーサ選手は4度打席に立ち、チームのプレーオフ進出に望みをつなぐ2安打を放ったものの本塁打はなかった。

     ◇            ◇

 甘く入った獲物は逃さない。4回のマグワイアのひと振りだ。外角低めに構えた捕手のミットとは裏腹に、ハーマンソンが投げた直球は内角高めに来た。水平に、刀で切るように鋭く出たバットが、左翼2階席への本塁打を生んだ。

 7回のブリンジャーからの左中間本塁打は、ゴルフのスイングに似ていた。1―1からの外角の落ちる球だった。ひざよりも低い球をすくい上げるように振り払った。打球は、左中間への133メートル弾になった。

 多様なスイングが、本塁打の量産を可能にしている。68号を放ち、ライバルに2本差をつけたマグワイアは一塁へ走る間、左手に残したバットを高々と掲げ、そして投げ上げた。ベースを1周してベンチへ戻ったあと、もう一度グラウンドに現れて、地元のファンに右手を突き上げた。

 「1本目は強いスイングを心がけて、意外と簡単に打てた。2本目はいい感触で、バットを投げるのを忘れていたよ」と、マグワイアは顔中に笑みをあふれさせた。

 今季、意識していた数字はマリスの61本を超える62本塁打までだったという。62号を放った8日以降は試合を楽しむ余裕も生まれた。昨年までの大リーグ記録を、もう7本も上回った。

 最終戦に臨む気持ちを聞かれたマグワイアは「長い長いシーズンが、あと24時間もすれば終わるんだ」と答えた。開幕から注がれ続けた熱い視線が、彼に重圧をかけ続けてきた。それから解放され、新たな記録保持者になる日は、目の前だ。

ソーサは安打だけ
 【ヒューストン(米テキサス州)26日=亘理信雄】

 「明日、自分が打ったとしても、もう並べないかもしれない。でも、(個人記録よりも)チームとして(ワイルドカード争いをかけた)明日の最後の試合に全力を尽くすことが大切なんだ」

 26日の試合後、カブスのサミー・ソーサはロッカールームに通じる会見場で、自分に言い聞かせるように語った。「マーク(マグワイア)におめでとうと言いたい。70本打てるといいね」。しかし、ややうつむきながらの静かな口調には、どこか張りがなく、ここにきて2本も引き離されたショックがやはりうかがえた。

 その隣の部屋で、カブスのジム・リッグルマン監督も「ホームラン? それがなくても、今日のように勝てるのがうちの強みなんだ」と、今は勝つことが最も重要なことを強調した。

 そのためには、一発狙いに専念するわけにはいかない。ソーサはこの日、4打数で単打が2本。8回には、自ら逆転のホームを踏んだ。

 「ホームラン争いに敗れたら、歴史は敗者を正当に評価してくれるだろうか」と質問が飛んだ。「そのドラマはまだ終わっていない。引き離されるたびに(ソーサは)追いついてきた」と監督は淡々と答えた。「それに、何十年たっても語られる敗者だって、球史にはいる」

(1998年9月28日付 朝刊から)


両者とも66号、譲らず――ソーサの約45分後、マグワイアも
【ニューヨーク支局25日】

 両者相譲らず――米大リーグの本塁打王争いは二十五日、マーク・マグワイア一塁手(セントルイス・カージナルス)とサミー・ソーサ外野手(シカゴ・カブス)が、それぞれ1本塁打を放ち、今季66号で依然並んでいる。

 先に打ったのはソーサ。ヒューストンで行われたアストロズ戦の四回、第2打席でリマ投手から左翼席に運んだ。二十三日のブルワーズ戦に続く2試合連続の一発だった。

 約45分後、マグワイアは地元セントルイスでのエクスポズ戦の五回二死、ベネット投手から4試合ぶりとなる2点本塁打の66号を打ち、ソーサに追いついた。
 一時的にもソーサがマグワイアを本塁打数で追い抜いたのは八月十九日以来。当日は、カブスとカージナルスが直接対決。ソーサが48号を先行したが、マグワイアが48、49号を打って逆転した。

 シーズン最多本塁打を更新中の二人の争いは、残り2試合になった。

(1998年9月26日付 夕刊から)


ソーサが2本塁打でマグワイアに追いつく
【ニューヨーク支局23日】

 米大リーグ、シカゴ・カブスのサミー・ソーサ外野手は二十三日、ミルウォーキーで行われたデーゲームのブルワーズ戦に出場し、第64、65号の2本の本塁打を放ち、本塁打競争で先行していたマーク・マグワイア一塁手(カージナルス)に並んだ。

 この日、ソーサは2連続四球の後の五回、第3打席で64号を右翼に打ち込んだ。十六日のパドレス戦で満塁の63号を放って以来、6試合ぶりのアーチだった。続く六回は三番手のヘンダーソン投手から中越えに連続アーチ。この時点で、マグワイアに並んだ。カブスの残りは3試合。

 一日の休みを置き、二十五日(日本時間二十六日)からヒューストンでアストロズと3連戦を行う。マグワイアはこの日、セントルイスでナイター試合のアストロズ戦に出場。第1、第2打席はともに四球。第3打席は安打だった。

(1998年9月24日付 夕刊から)


マグワイア、65本塁打でソーサに2本リード
【シカゴ20日=山本秀明】

 米大リーグ、カージナルスのマーク・マグワイア一塁手は二十日、ミルウォーキーで行われたブルワーズ戦で、一回、カール投手から左翼へ二日ぶりの本塁打を放ち、更新中の年間本塁打記録を65本とのばした。

 マグワイアと本塁打王を争うカブスのサミー・ソーサ外野手はこの日、シカゴでのレッズ戦に先発出場したが、5打数無安打に終わり63本塁打のまま。四日間本塁打がなく、マグワイアとの差は2本に広がった。

◇     ◇     ◇

 カブスの本拠、リグリー・フィールドでは試合前、昨年までの大リーグ記録を上回るソーサの62本塁打に対する祝賀セレモニーが行われた。母国ドミニカ共和国からやってきた母ルクレシアさんや兄弟と並んでグラウンドに立って、ソーサは笑顔を振りまいた。

 米プロバスケット協会(NBA)シカゴ・ブルズのマイケル・ジョーダン、スコッティ・ピッペンもお祝いに駆けつけた。が、そんな華やかさは、試合後まで続かなかった。今季地元最終戦に本塁打の期待がかかったソーサは、5打数無安打だった。力みがありありで、2三振。

「家族のために、友人のために、やろうという気持ちは強かったのだが」と、ソーサ。マグワイアとの差が2本と広がり、「残り5試合に全力を尽くす」というのが精いっぱいだった。

(1998年9月21日付 夕刊から)


マグワイア64号、ソーサは無安打で再び1本差
 【ニューヨーク支局18日】

 米大リーグの本塁打記録を更新し続けているカージナルスのマーク・マグワイア一塁手は十八日、ミルウォーキーでブルワーズ戦に先発出場して64号本塁打を放ち、この日、本塁打の出なかったカブスのサミー・ソーサ外野手に、再び1本の差をつけた。残り試合は、マグワイアが8、ソーサは7となった。

 第1打席で四球だったマグワイアは、四回の第2打席、無死二塁から高めの直球を左中間に運んだ。十五日のパイレーツ戦以来、3試合ぶりのアーチだった。

 地元シカゴで十八日、レッズ戦に先発出場したソーサは、前日のパドレス戦に続いて4打席とも無安打に終わった。ソーサは第1打席から二ゴロ失策、三ゴロ、空振り三振、それに二飛だった。

(1998年9月19日付 夕刊から)


MVP前評判、ソーサに"YES"――ワイルドカード争う量産に重み
 【ニューヨーク17日=山本秀明】

 ドミニカ共和国出身のスラッガー、サミー・ソーサ(カブス)に、今季の最優秀選手(MVP)の声が上がっている。大リーグ選手会は10月30日に、選手投票による表彰選手を選ぶ。このほど各賞の候補者が発表され、ソーサがMVP候補に名を連ねた。

 MVP候補はソーサのほか、本塁打争いを展開中のマグワイア(カージナルス) と、アルー(アストロズ)の2人。中でもソーサを推す声が根強いようだ。

 レースは実質的に、ソーサとマグワイアの戦いだ。マグワイアのカージナルスは、 現在ナ・リーグ中地区3位で、プレーオフ出場にはほぼ無関係。それに対してソーサ の所属するカブスは、プレーオフ進出をかけたワイルドカード争いの真っただ中にい る。

 勝負に関係のない本塁打よりも、プレーオフ進出、ワールドシリーズ出場にも関係する本塁打に意義あり、というわけだ。しかもソーサは16日、試合を決める満塁の63号本塁打など6打点を挙げて、打点部門でも両リーグトップに立った。近年増加の一途をたどる中米系選手の圧倒的支持も背景にある。

 そのソーサは17日、パドレス戦で4打数無安打に終わった。しかし、チームは延長の末に競り勝ち、ワイルドカード争いでメッツとのリードを広げた。「試合に勝てたから、本塁打がなくてもいい気分だよ」と、ソーサは優等生の答えを披露した。マグワイアはこの日、試合がなかった。

(1998年9月19日付 朝刊から)


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