日本(にっぽん)未来の党代表の嘉田由紀子滋賀県知事は2日、東京都内で記者会見し、原発稼働ゼロから最長10年以内に廃炉する「卒原発」や消費増税法凍結を軸とした総選挙向け政権公約を発表した。原発ゼロへの工程表「卒原発カリキュラム」も公表し、小選挙区に109人を擁立すると発表した。首相候補が誰かは明言しなかった。
公約は(1)「卒原発」(2)中学卒業まで子ども1人あたり年間31万2千円の手当支給など「活『子ども・女性』」(3)最低保障年金創設と年金一元化など「守『暮らし』」(4)「脱『増税』」(5)天下り禁止など「制『官僚』」(6)環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加反対など「誇『外交』」。
嘉田氏は女性重視の視点を強調し、「(原発事故のあった)3・11は戦後政治の転換点。旧態依然たる政治を進めようとする旧勢力に対し、未来への安心を埋め込む政治をつくり出す」と民主、自民2大政党への対決姿勢を示した。
■「脱原発」が原動力
日本未来の党代表の嘉田由紀子滋賀県知事が2日発表した衆院総選挙の政権公約は、持論の「卒原発」を前面に打ち出したものだ。最長10年で原発ゼロを実現する工程表「卒原発カリキュラム」を掲げ、「脱原発」で支持拡大を狙う。公示を前に、原発の議論が加速し始めた。
2日午後、東京都内で開いた公約発表会見。嘉田氏は「(原発事故のあった)3・11の転換点を自覚せずに旧態依然たる政治を進めようとする勢力に対し、未来への安心を埋め込む政治を作り出していきたい」と力を込めた。
公約は総選挙公示の2日前に間に合った。その柱は持論の「卒原発」と女性・子ども政策だ。嘉田氏は会見で「極端かもしれないが、卑弥呼の時代に戻るつもりで。戦略は何よりも私自身の存在だ」と語り、女性票を集めて脱原発の原動力にする思惑をにじませた。
そんな嘉田氏が投げかけたのが、10年で原発ゼロを実現する道筋を示した「卒原発カリキュラム」。嘉田氏のブレーンで未来の代表代行に就任した飯田哲也環境エネルギー政策研究所長が中心になってまとめた。会見で配ったカリキュラムには、野心的な提案がずらりと並んだ。
現行の原発を完全廃炉にする時期は10年以内。最初の3年間を電力システム改革への道筋をつくる「助走期」、次の7年間をエネルギー体制を移行させる「離陸期」と位置づけた。
「助走期」では、まず全国で唯一稼働している関西電力大飯原発(福井県)を停止し、「原発稼働ゼロ」にする。大間原発(青森県)を含むすべての原発の新増設は禁止し、高速増殖炉「もんじゅ」や六ケ所再処理工場も即時廃止だ。
その上で、原発に依存してきた電力会社に対し、必要に応じて現金に交換できる交付国債を政府が給付して、経営の安定化を図るとした。電力料金の値上がり分を、交付国債で埋める仕組みだ。また、使用済み核燃料についても、3年間のうちに「100年間の乾式貯蔵場所の社会的合意を作る」と踏み込んだ。
そのほか、東電を破綻(はたん)処理し、発送電分離など電力システム改革も進める。こうした環境整備を進め、「離陸期」で代替エネルギーへの移行を軌道に乗せるとしている。
ただ、急ごしらえの新党だけに見切り発車の感は否めない。この日、総選挙で選挙区から立候補する109人の公認内定者の名簿も発表。国民の生活が第一の前衆院議員が多くを占めたが、新顔を含め連絡先や職業などは入っていなかった。役職ポストも、幹事長は空席のまま選挙に突入することが決まった。
会見後、さいたま市内で初の街頭演説に臨んだ嘉田氏は、こう言って理解を求めた。「日本未来の党、生まれてたった5日。109人の同志が小選挙区から手を挙げてくれた。みなさん、109人ですよ」
■橋下氏、元ブレーンを批判
「使用済み核燃料はどうするのか。非現実的だ。滋賀県にでも持って行くつもりか」。民主党の前原誠司国家戦略相は2日、京都市内で記者団にこう語り、未来が六ケ所再処理工場などの即時廃止を掲げたことを批判した。
政権公約に「2030年代に原発稼働ゼロ」を盛り込んだ民主党は「脱原発」の票が分散することへの警戒感がにじむ。野田佳彦首相は2日、千葉県四街道市で「『即原発ゼロ』と言う方もいるが、できますかね。現実的に進める民主党か無責任な政策を押しつける他の党を選ぶのか。全然違う」と訴えた。
一方、脱原発に慎重な自民党。甘利明政調会長は2日のNHK番組で「もっと天然ガスを輸入して国富を流出させ、貿易赤字を真っ赤っかにすれば、(即時原発ゼロが)できるかもしれない」と指摘。再稼働については「安全を確認した原発は動かした方が国民利益にかなう」と語った。
未来に猛然とかみついているのが、石原慎太郎代表を迎えた後から原発政策の「変節」批判を受けている日本維新の会だ。
橋下徹代表代行は2日、「原発銀座」の福井県敦賀市で街頭演説。約30分間のほとんどを原発政策に割き、未来の卒原発カリキュラムをまとめた飯田氏に批判の矛先を向けた。「飯田さんのプランは、あの方1人の考えだ。嘉田さんの今回のプランは、ボロボロなのは間違いない」
もともと橋下氏は飯田氏をブレーンに迎え、大阪市特別顧問として脱原発政策づくりに参画させていた。大阪府市のエネルギー戦略会議が中間案としてとりまとめた「2030年までの原発ゼロ」の中心人物だ。
それだけに、橋下氏にとって、未来の政策は腹に据えかねたようだ。演説で「(原発を)なくした後、若狭湾の原発で働いている人たちの雇用や施設をどうするのか。方針や計画をまとめずにゼロにしろとは無責任だ」と繰り返した。
その飯田氏。2日夕、自身のツイッターで「本日昼をもって、特別顧問を辞することをお伝えしました」とつぶやき、橋下氏との決別を表明した。
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日本未来の党の政策要綱原案の要旨は次の通り。
【卒原発】
東電を破綻(はたん)処理し、国の責任で損害賠償や被曝(ひばく)安全に対応▽高速増殖原型炉「もんじゅ」と六ケ所再処理工場の廃止、大間原発など新増設の禁止、使用済み核燃料の総量規制からなる「卒原発プログラム」の策定▽原発稼働ゼロに伴う雇用・経済対策実施▽発送電分離など電力システム改革
【活子ども・女性】
子ども1人当たり、中学卒業まで年間31万2千円の手当を支給し、一部を「子育て応援券(バウチャー)」とする▽高校授業料無料化の堅持
【守暮らし】
税を財源とする最低保障年金と所得比例年金の構築による年金一元化▽後期高齢者医療制度廃止
【脱増税】
デフレ脱却と経済再生による税収増で消費増税の必要がなくなり、増税法凍結
【制官僚】
公務員制度改革の実施▽天下り全面禁止と政府関係法人の廃止でムダと利権をなくす
【誇外交】
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉入り反対▽自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)推進▽安全保障基本法制定と国連平和維持活動への参加推進▽ハーグ条約早期批准
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【卒原発カリキュラム】(要旨)
どんなに遅くとも10年後には完全に原発から卒業するカリキュラムをつくっていく。「卒原発」は(1)未来への助走期(2)未来(エネルギーシフト)への離陸期、の2段階で進める。
(1)未来への助走期=原発稼働ゼロからおよそ3年間は卒原発の仕組み作りと電力システム改革に道筋▽大飯原発の即時停止。他の原発の再稼働は認めない▽大間原発を含む新増設禁止と、高速増殖炉もんじゅ、六ケ所再処理工場の即時廃止▽使用済み核燃料を総量規制し、100年間、乾式貯蔵する場所の合意形成▽世界最高水準の放射性物質・廃棄物規制体制の確立▽廃炉地域には「経済シフトプログラム」を実施▽電力値上げを防ぐため、値上げ相当分を「交付国債」で給付▽東京電力は法的整理して3分割。福島原発事故の賠償は国が責任を持つ▽原発廃炉などに伴う財政支援措置を実施。
(2)未来への離陸期=助走期後、最長7年間で着実な原発廃炉と電力システム改革を進める▽着実な廃炉と使用済み核燃料の乾式中間貯蔵を実施▽競争的な電力・エネルギー市場確立による電気料金の低下▽節電発電所の普及拡大とエネルギー効率化▽地域分散型の再生可能エネルギーの普及で雇用拡大と経済の活性化をはかる。