【市川美亜子、前田大輔】参院選でネット選挙が解禁され、海外に暮らす日本人の関心が高まっている。動画が更新され、候補者の演説も見られるようになった。一方で在外投票の煩雑な手続きは変わらず、投票が難しい人からは「せっかく情報が増えたのに」と嘆きも聞かれる。
特集・ネットと選挙「遠く離れた地でも親しみを感じられる」。リトアニアに住む石井恭子さん(38)は公示日、選挙権のある千葉選挙区の候補者の交流サイト(SNS)を次々と見比べた。
リトアニアに渡って11年。これまで候補者がどんな人か分からないまま在外投票してきた。今回は、公示後もTシャツ姿で支援者を回る写真がネット上で更新され、「選挙公報と違って人柄が分かる」という。
米ニューヨークで日本人向けにフリーペーパーを発行する三浦良一さん(57)は6月末、「ネットで変わるか在外選挙」と題する座談会を開き、2ページにわたって掲載した。総領事館の職員が「企業や県人会などにも出かけて、在外投票の登録をお願いしている」と述べた記事を載せた。
これまでは国政選挙が近づくと総領事館から選挙日程が書かれた紙が届く程度だった。公示後にネットで見た政治家の動画は、落ち着いた物腰で公約を訴える姿がテレビの政見放送より説得力があった。「生の情報は大きい」と1票を投じた。
関心は高まるが、在外投票には壁もある。8年前に英国・ロンドンに渡った香西直子さん(33)は今回、ネット選挙が始まることを知り、4月に申請書類を取り寄せた。
だが、書類の提出のため大使館に出向く必要があり、手続きに2カ月程度かかると言われ、今回はあきらめた。「動画で選挙が身近になったのに。ネットで登録申請できたら便利だと思う」
外務省によると、在外投票は大使館などに登録申請した後、外務省や自治体の選挙管理委員会での照会手続きに2カ月程度かかる。投票は大使館に足を運んだり、投票用紙を郵送したりする必要がある。開票日までに日本に投票用紙を送るため、投票期間も1週間程度に限られる。
ネット選挙解禁にあわせた手続き改善について、外務省は「ネットでの申請は、なりすましの可能性が出てくる」。総務省は「現時点で議論は始まっていない」と語る。
在外投票の登録者はここ数年、10万人前後で横ばい。投票者も2万人程度で、海外に住む20歳以上の日本人約86万人の数%にとどまっている。
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〈在外投票〉 海外で3カ月以上暮らす20歳以上が対象。在外公館で申請すれば国政選挙に投票できる。2000年衆院選から比例区に限って導入されたが、05年に最高裁が「選挙権を制限する」と違憲判決を出し、07年参院選から選挙区にも拡大。国内で最後に住民票を置いていた選挙区で投票できるようになった。今回の参院選は、世界215カ所の在外公館で投票できる。
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朝日新聞官邸クラブ