【青木美希、関根慎一】福島第一原発周辺の住民が帰還するため、放射線量を年1ミリシーベルト以下にする国の除染目標について主要10政党にアンケートしたところ、9党が1ミリ以下まで除染を徹底するべきだと答えた。一方、5党が一部地域で帰還をあきらめ、補償を優先するべきだとの考えを示した。
各党の姿勢を鮮明にするため二者択一で質問し、自由記述欄を設けた。自民は選択肢では答えなかった。
政府は除染後も目標に届かない場所が多いことを受けて目標緩和を検討。1ミリ以下にならなくても線量計を身につけて帰宅し、被曝(ひばく)量を自己管理する案を住民説明会で示している。アンケートでは(1)1ミリ以下まで除染を徹底すべきだ(2)除染には限界があるので1ミリ以下にこだわらない――のうち、9党が(1)を選んだ。自民は「除染や食品の出荷制限など総合的な対策で1ミリ以下にすることが長期的目標。まだ実施していない地域の除染を加速することが重要」とした。
住民帰還については割れた。民主、公明、共産、大地が「(1)高線量の地域を含め住民全員が帰還することを目指す」を選択。民主は「早計にあきらめるべきではない」とした。維新、みんな、生活、社民、みどりは「(2)一部地域は帰還をあきらめ除染費用を住民への補償にまわす」を選び、維新、みんな、みどりは国による土地の借り上げや買い上げを主張。生活は「居住に適した環境をつくれない地域は、移住を基本とする政策に転換する」。自民は「地元にも帰りたい、もう帰れないなど様々な意見があり、慎重に検討する必要がある」とした。
賠償問題では(1)国が責任を持って賠償し、後から東京電力に請求する(2)東電が賠償について判断するいまのやり方を続ける――のうち、民主、公明は(2)、他は(1)を選んだ。東電に判断を委ねていることについて社民は「行政か中立的な組織が行うべきだ」と回答。共産は「(帰還か否か)どちらを選んでも生活が再建できる賠償が必要」、みんなは「東電をはたん処理し一時国有化して、迅速かつ確実な賠償をすべきだ」。自民は「引き続き確実な賠償ができるように対処する」とした。
■政治は早く将来像示して
《解説》我が家へ帰りたいという思いは大切にしなければならない。一方で除染計画は行き詰まり、全員が安心して暮らせる元の生活環境を取り戻すのは非常に難しい現実も見えてきた。政治が早く将来像を示さなければ、住民は人生設計を描けない。巨額の復興予算を担う納税者にとっても先送りは許されない。
原発事故から2年を過ぎた今夏の参院選で、政党にあえて二者択一で回答を求めたのは、そうした思いからだ。自民を除く9党が応じたのは、少しでも前に議論を進めなければ政策が現実から乖離(かいり)していくという危機感からだろう。なかでも住民全員の帰還は断念して補償を優先する考えを5党が選んだのは、手詰まり状態に陥った除染・帰還政策に一石を投じるものだ。
自民は「政権を担う立場」として二者択一の回答を避けたが、いつまでも方向性をあいまいにはできない。参院選は具体案を提起して合意形成を進める好機だ。住民の中でも意見が割れ、簡単に結論を出せないテーマだからこそ、現実に目を背けず、政権党として実態に即した政策を主導して欲しい。
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朝日新聞官邸クラブ