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【志村亮】ネットを使って有権者に訴える初めての選挙となった参院選が、大詰めを迎えた。ネット空間の膨大な情報(ビッグデータ)の分析とあわせ、選挙戦は様変わりしつつある。昨年末の韓国大統領選で野党陣営を支え、日本でも選挙ビジネスを本格化させているネット広告大手オプトの鉢嶺登社長(46)に聞いた。
参院選特集・ネットと選挙――ネットと選挙は、かかわりを深めています。
「子会社を通じて、国政選挙、地方選挙を2008年ごろから分析してきた。投票前日までのブログの書き込みやツイッターのつぶやきなどを分析すると、開票結果が9割超の確率で一致するものもある」
――かなりの高精度ですね。
「アイドルグループ『AKB48』の『選抜総選挙』を分析したこともある。昨年の場合、(シングル曲を歌うことができる)16人のうち15人を的中できた」
――本当の選挙では、ネットの利用が多い若者の投票率は高くありません。
「悪口も含めて、つぶやきや書き込みが多い候補者は、当選する確率が高いようだ。選挙では知名度の高さが結果を分けることがある。知名度が高いかどうかは、年齢層にあまり関係がないと考えることができるかもしれない」
――政党もネット重視になるのでしょうか。
「公示(告示)前にデータを分析し、当落線上の候補者を集中的に応援する戦略を立てられる。選挙を重ねるたびにデータがどんどん蓄積され、分析の精度も高まっていく。今後、ネットのフォロワーが多い人を候補者に立てる動きが出てくるだろう」
――お金がかかるでしょうから、無所属の候補者は不利になりませんか。
「広告会社は、まずお金がある政党を対象にする。最初は厳しいかもしれない。ただ、ふつうのビジネスでも、内容を絞った中小企業向けサービスがある。資金の少ない候補者向けのサービスもいずれは出てくるはずだ」
――韓国では、どんな仕事をしたのですか。
「現地の子会社が、最大野党、民主統合党の仕事を受注した。(野党勢力の一本化で)若者の支持が高かった安哲秀(アンチョルス)氏が辞退し、文在寅(ムンジェイン)氏が立った。安氏を支持していた人に、(ライバルだった)文氏への投票を呼びかけるキャンペーンを張った」
――具体的には。
「『安氏を応援していたが、これからは文氏を支持する』と表明してもらった。選挙キャンペーンのサイト上で、フェイスブックの『いいね』ボタンを押してもらい、リレー形式で広がるようにした」
――文氏は敗れましたが、大接戦に持ち込みました。手応えは。
「正確につかむのは難しい。ただし、選挙で大事な『3ばん』が『4ばん』に変わった実感はある。地盤(組織)、看板(知名度)、かばん(資金)にネット上の評判という四つ目が加わったということだ」
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〈オプト〉 鉢嶺登社長が、ファクスを使った広告会社「デカレッグス」を1994年に設立。95年に現社名に変え、97年にネット広告に進出した。2012年12月期の売上高は789億円、グループ従業員1261人。ジャスダック上場。子会社「ホットリンク」が、ツイッターやブログなどの内容を分析し、企業の営業や宣伝に生かすビジネスを展開している。韓国では05年に現地企業を買収してネット広告事業に参入した。
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朝日新聞官邸クラブ