【大野亨恭】くまモンに続け――。全国的な「ゆるキャラ」人気にあやかって各政党がオリジナルのゆるキャラをつくり、参院選に投入している。無党派層の掘り起こしを狙うもので、インターネット選挙の解禁も後押ししている。
参院選特集ページはこちら18日、千葉県柏市。昼時でにぎわう商店街に、真っ赤な球体二つが積み重なった着ぐるみが現れた。民主党のゆるキャラ「民主くん」だ。意外に足が長い。少し体形が似ている野田佳彦前首相とともに商店街を練り歩いた。
容赦ない強い日差しが照りつけるなか、真っ赤な体は人混みの中でも映え、存在感は抜群だ。しかし、女子高生からは「あれ誰?」「(千葉県のマスコットの)チーバくんじゃない」などの声が漏れ聞こえる。認知度は低いようだ。
商店街では野田氏の後ろについて歩く。時折、子どもや主婦が囲み、記念写真に納まった。レストランで食事をする女性たちを見つけた野田氏が店内へ駆け込んで握手を交わすと、民主くんも勢いそのままに突進。だが、大きな頭が入り口にぶつかって思わず後ずさり。外から手を振って歓声に応えたが、背中は少し寂しそうだった。
民主党の関係者は「民主党に向けられる視線は厳しいが、民主くんがいてくれればみんな足を止めて近寄ってくる。視線もいくぶんか優しい気がする……」と述べ、ゆるキャラ効果を強調した。
民主くんは2007年に参院選の応援用として誕生した。党本部によると、民主くんは実は6人いるという。参院選でもさぞかし全国で大活躍していると思いきや、暑さに弱く、この参院選で街頭に立ったのは千葉県と愛媛県ぐらいだ。党本部の担当者は「現在は、1体が千葉に貸し出し……いや、出動中。あとの5人は都内で静養中です」と打ち明ける。そのうえで、こうぼやいた。
「くまモンみたいに予定ぎっしり、という訳ではない。候補者第一だから無理して前面に出す必要はないんだが、もう少し地方が活用してくれたらなあ」
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ゆるキャラの生みの親とされる漫画家のみうらじゅん氏は、ゆるキャラの条件の一つに「着ぐるみ化」をあげる。その点、政党がつくったオリジナルのキャラクターで唯一、着ぐるみで活動するのは民主党の「民主くん」だけだ。
ほかの党のゆるキャラは、主にインターネット上で活動している。
自民党は今年6月、約450万円をかけて安倍晋三首相(党総裁)のキャラクターを使ったゲーム「あべぴょん」を制作した。ダウンロード数は今月18日時点で20万回を超えるという。
さらに首相と石破茂幹事長のゆるキャラ・デザインを公募。約400点の中から選んだ絵柄を文房具やエコバッグに刷り込んで売り出している。
民主党も民主くんのほか、海江田万里代表のキャラクター、通称「スーパー万里くん」をつくり、党のマニフェストやポスターに掲載している。
共産党は「雇用のヨーコ」(雇用)、「小曽館育子(こそだて・いくこ)」(子育て)、「しいさあ」(沖縄)など、八つの政策ごとにキャラクターを設定。党のホームページ(HP)上に広報専門の「カクサン部」を立ち上げ、キャラクターが党幹部と会談する動画をネットで流している。党職員はカクサン部のキャラをプリントしたピンク色のTシャツも作った。非売品だが、選挙活動中に「入手したい」と要望が出ることもあるという。
自らを模したキャラクターに「かわいすぎるけど、ちょっと似てる」とはにかむのは社民党の福島瑞穂党首。09年に動画サイトで福島氏の姿を見たファンが作り出した「萌(も)えみずぽタン」だ。
今のところ党は公式キャラとして認めてはいないものの、党のフェイスブックやツイッターでちゃっかり活用。「かわいすぎだ」「似ていない」といった声も多いが、アニメ好きの人たちからは「頑張れ、みずぽタン」との激励が寄せられるという。党関係者は「今選挙の結果次第では党公式キャラへの昇格も検討したい」と前向きだ。
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みどりの風も今月に入って、支援者のアニメーターが萌えキャラ系の「ふうちゃん」を登場させた。党のHPで紹介しているが、「具体的な活用法までは考える余裕がない」(党関係者)という。
生活の党もHPで女の子のキャラクター「ネギッ娘」による小沢一郎代表へのインタビューを公開している。ネギッ娘はネット動画番組のキャラクターで、党とは直接関係がないという。だが、党関係者は「あの小沢代表が私邸でキャラとまじめな話をする極めてまれな動画。ネット解禁に合わせ、日本のアニメキャラを活用すれば普段政治に関心がない層へも訴えが届くのではないか」と意義を訴える。
社会現象にもなりつつある「ゆるキャラ」ブームに乗り遅れまいとばかりに、各党は駆け込み的にゆるキャラを作った。こうしたキャラが選挙中に活動できるのも、ネット選挙の解禁でこれまで認められていなかったHPの更新やフェイスブックなどによる発信ができるようになったからだ。
ただ、政党が十分に使いこなしているとは言えず、どれだけ票に直結するかは未知数。解禁されたばかりのネット選挙が広がっていけば、ゆるキャラによる選挙応援も当たり前の風景になるのだろうか――。
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朝日新聞官邸クラブ