日本と北朝鮮の外務省課長級協議が北京で行われた8月末、松原仁・拉致問題相(当時)が北京に派遣した内閣官房拉致問題対策本部の事務局員ら3人が、北朝鮮側代表と非公式に接触していた。外務省は把握していなかった。日本政府内の二つの機関が連携せず、それぞれ同じ日に同じ相手と話し合うのは極めて異例だ。交渉窓口は誰なのか、北朝鮮に誤ったメッセージが伝わった可能性がある。
外務省課長級協議は8月29〜31日に行われ、日本側は小野啓一北東アジア課長、北朝鮮側は劉成日(リュソンイル)課長が代表を務めた。日朝の政府間協議は4年ぶりだった。本協議で扱う議題を決めるための予備協議の位置づけで、3日間で計7時間協議した。
関係者によると、松原氏はこの間、拉致対策本部事務局員や自らの秘書ら3人を北京に派遣。3人は8月30日夜、北朝鮮大使館そばの朝鮮料理店で劉課長ら北朝鮮代表団と会食し、日朝関係改善に前向きな松原氏の姿勢をアピールして拉致問題の解決を求めた。
これに対し、劉課長は民主党政権との交渉に慎重な姿勢を示した。外務省課長級協議で早期の本協議開催を急ぐ日本外務省の交渉姿勢に不満を漏らす場面もあったという。具体的な交渉につながるやり取りはなかった。