日本の科学技術研究の「効率」は、現状では欧米の5〜6割に過ぎない――。そんな内容を含む提言を学者の集まりである日本学術会議(黒川清会長)がまとめたことに、文部科学省が反発し、正面から反論を始めた。折から国は06年度から5年間の科学技術政策の基本計画を策定中。緊縮財政の中、例外的に伸びてきた科学技術関係予算にはやっかみもあり、予算削減の論拠にされては大変との思惑からだ。
学術会議は、研究資金と研究者数を「国が投入した資源」、論文数や特許出願数などを「それによって達成された成果」として、国際比較した。それによると、日本は重点とする生命科学など4分野で、米国の半分の資源を投じているのに成果は4分の1で、効率は米国の5割。欧州と比べても2倍の資源に1.2倍の成果で、6割の効率とされた。
学術会議は「日本の効率が極端に悪いことが客観的なデータで明瞭(めいりょう)に浮かび上がってくる」と指摘し、棚橋・科学技術担当相に2月下旬、改善を申し入れた。
文科省は「日本では大学が論文の7割を書き、研究費は2割しか使っていない。産業界のデータも一緒くたにするのはナンセンス」と反発。大学だけに絞れば、論文の生産効率は「いい勝負」と主張する。永野博・科学技術政策研究所長が、提言の責任者を務めた岸輝雄・学術会議副会長の出席した審議会の場で提言に反論したほか、今月まとめる科学技術の成果評価報告書にも独自試算を盛り込む予定だ。
岸副会長は「試算の一部が丁寧ではなく、反省点もある。刺激的過ぎたようだ。言いたかったのは、研究成果を適切に評価する手法を確立し、資源を効率的に配分すべきだということ」。文科省側も、論文の数はともかく、他の研究者に引用される論文数でみた「論文の質」では欧米に大きく水をあけられていることは認める。
この5年間で20兆円超が投じられてきた科学技術関係予算だが、まだまだ改善の余地はありそうだ。