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ドゥーガル・ディクソン氏 インタビュー

2006年03月30日

写真

インタビューに答えるドゥーガル・ディクソン氏

 未来の地球に暮らす生き物を科学的知識に基づいて描き出した「アフターマン」や「フューチャー・イズ・ワイルド」などの著作があるイギリスのサイエンスライター、ドゥーガル・ディクソン氏がこのほど来日し、アサヒ・コム編集部のインタビューに応じてくれました。

 見るだけでも驚くような未来生物を描き出したのはなぜか? 将来の厳しい環境の中で滅亡していく人類の運命をどう考えるべきなのか? そして我々は科学とどう向き合っていくべきなのか?

 ディクソン氏はインタビューの中でこういった難解なテーマについて、誰にでもわかるような易しい言葉で身振り手振りを交えながら熱心に答えてくれています。

 それは「一人でも多くの人に科学の楽しさを知ってほしい」という、サイエンスライターとしてのディクソン氏が目指す姿そのものでした。

 また、恐竜に興味を持ち始めた子ども時代のエピソードも当時の時代背景と共に語りながら、今の子どもたち、そして大人たちにも「科学を学ぶことの大切さ」を訴えています。

 アサヒ・コムではインタビューの模様を、記事と動画でお届けします。

インタビューのビデオ動画はこちら  Windows Media Player    Real Player

◇       ◇

――科学の裏付けを元に未来の生物を描くというアイデアはどのようにして生まれたのですか?

 「空想」を利用することで、事実をよりわかりやすく理解してもらおうと思ったからです。ただ、これがなかなかたいへんなことなのですが...

 「フューチャー・イズ・ワイルド」では「進化」という自然のプロセスを取り上げています。架空の生物を登場させることで読者の「空想力」をかきたてて興味を持ってもらうことで、科学的な原理にも注目してもらおうと思いました。

表紙

フューチャー・イズ・ワイルド=(C)The Future is Wild TM 2006、(C)DIAMOND,Inc.

――本の中で「2億年後」を取り上げていますが、この時期には何か特別な意味があるのですか?

 2億年後の地球では、すべての大陸が集まって一つの大きな「超大陸」を形成すると考えられています。今とは全く違うそのような環境ではいったいどんな生物がいるのだろうという点に強く興味を持ち、舞台に選びました。

 20年以上前に書いた「アフターマン」で描いた5000万年後の世界は「フューチャー・イズ・ワイルド」ではあえて取り上げませんでした。「アフターマン」の世界は「フューチャー・イズ・ワイルド」の中の一つの「章」と考えてもらえれば、また違った楽しみ方ができるのではないかと思います。

――「フューチャー・イズ・ワイルド」に登場する生物は、今の私たちの常識から見ると驚くようなものばかりです。生物たちはなぜこんなにも姿を変えてしまうのでしょうか?

 実はそうでもないんですよ。例えばガネットホエールという未来の生物は、鳥ということを除けば現在のアザラシやアシカとよく似た特徴を持っています。

 イカが海から地上に移りすんで8トンもの体重を持ち、メガスクイドになるというアイデアを考えたときに参考にしたのはゾウです。よく見るとそれがわかるはずですよ。

――ディクソンさん自身がいちばん気に入っている生物は何ですか?

 表紙にもなっているオーシャンフリッシュです。私がアイデアを出したということもあり、特に愛着がありますね。この生物は様々な環境に適応できるという特徴があり、森にすむとフォレストフリッシュとなります。この頃は鳥類は既に絶滅しており、その代わりにこの「飛ぶ魚」が空を支配するようになるのです。とてもエキサイティングだと思いませんか。

――「フューチャー・イズ・ワイルド」では既に人間は地球上から姿を消していて、全く登場しません。また、ディクソンさんは本の中で人類が「あまりにも大きい破壊的なダメージを地球に与えることで、自らその歴史に幕を閉じることになる」と書いています。

 その点を人に聞かれたときには「あまり心配する必要はないよ」と答えています。

 地球上ではこれまで何度か大量絶滅が起こり、生物の数が劇的に減ってしまった時期がありました。ただ、そんなときでも必ずその環境に適した生物が登場し、地球上で生命を育み続けました。そういった中で進化の歴史が刻まれてきたのです。

 さらにもう一つ。もし人間が絶滅せずに生き残り、今と同じような活動を続けたとすると、他の生物に与える影響が大き過ぎて、進化の科学的な予想がつかなくなってしまいます。だから、「フューチャー・イズ・ワイルド」は「人類が絶滅する」ということを前提に描かれています。人類が絶滅しない可能性を否定するものではないのです。

――日本では子どもたちがどんどん科学に興味を持たなくなっているとも言われています。子どもたちに興味を持ってもらうためには、どうすればいいと思いますか?

 実はイギリスでも同じ問題が指摘されています。最先端の科学の研究はどんどん専門化していて、一般の人々がほとんど理解できない状況になっています。そのことから、人々が科学者に対して不信感を抱くようになっているのではないかと思います。

 サイエンスライターとして、そのギャップを埋めるのが私の使命だと思っています。最新の科学の成果をわかりやすい形で人々に示すという私の仕事は、とても意味があると自負しています。

イラスト

2億年後の生物「メガスクイド」=(C)The Future is Wild TM 2006、(C)2006 Discovery Communications Inc.

――最初に興味を持ったのは恐竜だったそうですが、そのきっかけは何だったのですか?

 最初に恐竜に出会ったのは5歳の時に見たマンガでした。当時はまだ恐竜は一般的なものではなく、当然私もこれが何なのかということすらわかりませんでした。父親に尋ねたところ、棚から古い自然史の本を取り出してくれて見せてくれました。そこには地球上に人間が住み始める遙か昔のことが素晴らしい絵と共に描かれていて、私はすっかり夢中になりました。

 学校に行くようになって友達に恐竜の話をしたのですが、誰もわかってくれません。先生でさえも「何の話をしているのだ?」という感じでした。それほど恐竜は一般的ではなかったのです。だから学級新聞で恐竜の話を書くなどして、みんなにこの素晴らしさを伝えようと思いました。

 世の中が私に追いつくにはそこからさらに10年かかりました。でも、その時には既に私はもっと前を走っていたんです。

――今、いちばん興味を持っていることは何ですか?

 地球では興味深い生命の進化がこれからも繰り広げられていくと考えられています。では他の星ではどうなのか。そういった可能性を探る仕事にもチャレンジしていきたいですね。

――子どもたちにメッセージをお願いします。

 科学を勉強して、どんどんと想像力を養って下さい。知識を蓄えて、その上で未来について想像してみて下さい。自然の世界を理解すればするほど、将来、必要なときに正しい選択ができるようになると思います。

――大人にはどうでしょう。

 全く同じことを言いたいのですが... それがなかなか難しいのです。大人になると責任を持つ仕事が増え、他にしなければならないこともたくさん出てきます。だから、空想の生物を考えるなどというくだらないことに使う時間などない、そう考えがちです。

 ただ、科学はいつも私たちの身の回りにあります。だからずっと大切にしてほしい、そう思います。



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