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コロナ危機で変わる社会

デジタルで社会を変え、課題を解決する ソフトバンク、コロナ危機で「ライフライン」を意識

デジタルで社会を変え、課題を解決する ソフトバンク、コロナ危機で「ライフライン」を意識
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ソフトバンク社長兼CEO/宮内謙

新型コロナウイルスの感染拡大で、通信ネットワークが生活やビジネスのライフラインになっていると強く感じます。2011年の東日本大震災、近年相次ぐ豪雨などの大災害を経験するたびにライフラインとしての重要性を意識してきましたが、さらに認識が強まりました。

コロナ危機で社会はデジタルシフトを模索しています。少なくとも半年~1年はこの状況が続き、危機後も生活や仕事の様式は変わらざるを得ないでしょう。

わたしもリモートワークを続けています。在宅でも経営に関するデータや情報を確認できますし、孫正義会長をはじめとする幹部との会議もオンラインを通じていつでも可能です。

出社しなければいけない場合があるのは、契約関係の書類に代表印を押したりサインをしたりする時です。3月には内閣府にハンコ文化を変えようと提言しましたし、政府も民間での契約書に押印は不要との見解を示すなど、あらゆるものがオンラインで可能になろうとしています。

日本では商談は訪問して面談するのが当たり前でした。しかし、法人営業の社員からは「75%ぐらいはオンライン営業がいい」という声が出ています。

コロナ危機では顧客開拓が不安でした。でもインターネットを使ったオンラインセミナーで新しい顧客をつかめたのです。ウェブ会議システム「Microsoft Teams(チームズ)」で営業などの仕事の電話をかけたり受けたりできるサービスをマイクロソフトと共同で提供しており、それを説明するオンラインセミナーに1000人もの参加者が集まりました。新しい顧客も多く、「セミナー後に話を聞かせてほしい」と。

ソフトバンクショップには、スマートフォンの使い方を助言するスマホアドバイザーが約1200人います。コロナ危機により対面で説明できなくても、ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」でスマホ教室を開くことができました。

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5Gでデジタル社会に

わたしたちの役割は、スマホを通じて生活や仕事のライフラインを提供することです。今年3月には次世代の通信規格「5G」のサービスが始まり、高速で大容量の情報や動画が送れるようになりました。これから5Gが普及し、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」が22年ごろから本格的に始まることで、ITが生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるでしょう。

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5Gで臨場感のあるバーチャル・リアリティー(VR)を楽しむ(提供写真)

昨年には「Yahoo! JAPAN」事業を持つZホールディングスを子会社化し、同社と通信アプリ事業のLINE(ライン)も経営統合の準備を進めています。統合後は連携を強化することで、アプリや情報、決済、オンラインでのビジネス環境など、スマホであらゆるサービスを提供したいと思います。

スマホ決済アプリ「PayPay(ペイペイ)」では、スマホを使ってキャッシュレスで支払いや借り入れ、証券投資もできます。中小企業の皆さんが100万~200万円の短期借り入れをすぐにしたい時に活用できるなど、産業の基盤にもなります。

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スマホ決済アプリ「PayPay」を使ってキャッシュレスで支払う(提供写真)

そうした状況を踏まえ、今年4月、SDGs強化を宣言しました。「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」という考え方のもとで六つの重要課題を定めました。企業として「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」、事業を通じて「DXによる社会・産業の構築」などの社会課題解決をめざすものです=図。

近年、全国各地で豪雨などの大災害が頻発し、温暖化の影響が指摘されています。通信・情報で人々に幸福を、と言ってきましたが、本当に考えるなら、E(Environment=環境)、S(Social=社会)に目を向けないといけない。G(Governance=企業統治)を加えた「ESG」を意識するようになりました。

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ESG重視の経営へ

企業は株主などのステークホルダー(利害関係者)を大切にしてきたが、幅広く社会や環境を含めた三方よし、四方よしをグローバルに意識しないと持続できない――。ソフトバンクグループの重要な事業会社としてさらなる成長をめざすため、18年12月に株式上場しました。それから1年以上たち、持続的な成長のために何が必要かと考えたときにSDGsの17分野が合致したのです。

DXを通じた社会課題解決は成長戦略そのものであり、SDGsが掲げる目標にもつながります。

イオン九州とは、物流の効率化を目指して、ネットスーパーの夜間配送や、荷物とドライバーのマッチングサービスを使った配送の実証実験をするなど、DXによる課題解決に取り組んでいます。需要に応じて配送車両を手配することで、ドライバーの負荷と車両による環境への負荷の軽減を目指しています。また、行政との仕事では70自治体で仕事のデジタル化を進め、市民へのサービスを迅速にできるシステムを構築したいと思います。

今年度、携帯電話の基地局で使用する再生可能エネルギーは全体の30%ですが、22年度には70%に引き上げます。基地局やデータセンターなど多くの電力を使う拠点があり、再生エネを使うことで持続的な成長もできます。

自分たちだけが良くてもダメだという発想が企業を強くし、社会的に意義のあることが仕事のモチベーションにもなる。デジタル世代の若者はむしろ仕事にこうした新しい価値を見いだしているのではないでしょうか。17歳のスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの温暖化対策を求める主張が広がるのは、まさにそういうことでしょう。

今後、生活や仕事、産業の価値観が劇的に変わるパラダイムシフトが起きると思います。その時に大切なのはSDGsがめざす持続可能な社会です。一時的にいいことがあっても20年、30年と続かなければいけない。環境だけでなく、情報格差や貧困など社会を見つめ直す時だと考えています。

(聞き手・大海英史)

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