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コロナ危機で変わる社会

「5人に1人退学検討」の危機、「高等教育の意味」の問い直しを FREE代表・岩崎さん

「5人に1人退学検討」の危機、「高等教育の意味」の問い直しを FREE代表・岩崎さん
撮影・村上宗一郎
高等教育無償化プロジェクトFREE代表(東京大学文学部4年)/岩崎詩都香

私たち「高等教育無償化プロジェクトFREE」は、コロナ禍による学生生活への影響を調べるインターネット調査を4月9日から始め、27日までに回答した1200人の「5人に1人」が退学を検討していると公表しました。学生のアルバイトや、親の収入が減ったことなどによるものです。その後も調査を続けていますが、「5人に1人」という状況は変わっていません。

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渋谷駅前で「本当の高等教育無償化」を訴える「FREE」のメンバー=2019年12月8日午後、東京都渋谷区(朝日新聞撮影)

学生の困窮は突然ではない

専門学校は2年制が多いのに、そのうちの1年間の学業が危うくなってきて、学生は「夜も眠れない」「毎日、悪夢をみている」と悲鳴を上げています。東京大学の大学院生も、やめることにしたと回答しました。文部科学省の学生支援緊急給付金に申し込んでも認められず、東京都庁が緊急雇用対策として募集した学生アルバイトに採用されたものの1カ月で打ち切られ、無収入になったからです。「悔しい」という声をいただきました。

すでに「コロナ世代」と言われつつあります。退学者が続々出てしまったら、その人たちの将来はどうなるのか。国として止めなければなりません。

学生は、コロナ禍によって突然困窮したわけではありません。授業料などの学費を稼ぐためにアルバイトをしたり、多額の奨学金を借りたりしている状況がもともとあった。そのうえにコロナ禍が起き、アルバイトをがんばることさえ許されなくなりました。

国立大学の授業料の標準額は53万5800円で、半世紀前と比べて45倍くらいに上がっています。私立は平均で100万円近い。一方、非正規雇用が増えたりして、高い学費を負担できる家庭は少なくなっている。そのため、自分の稼ぎだけで学費を出している学生は少なくないし、稼ぐために休学している人もいます。アルバイト漬けで体を壊したり、学業に専念できなかったりするのは本人にとってももったいないし、社会にとっても損失です。

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撮影・村上宗一郎

教育は社会も個人も豊かにする

日本の学費が高いのは、高等教育に対する公的支援がとても少ないからです。私たちは学生と家庭の努力に帰してしまう高等教育の環境に違和感をもち、2018年9月にFREEを立ち上げ、改善を求めて活動してきました。

政府が学費を上げてきた根拠は、学生自身の利益になるから自分で払うべきだというものでした。実際、大学や専門学校に行くのは「就職のため」「学歴を手に入れるため」と答える学生は多いし、おとなもそう思っている人が多い。高等教育が、SDGsに掲げられている「質の高い教育」だと思われていないという実感があります。

でも、大学や研究機関は社会を支えています。教師も医者も看護師も、本来、何回でも学び直さなきゃいけない職業です。学び直せば最先端の知識や技術を現場に持ち帰ることができ、社会も個々人も豊かになる。学費がその足かせになるのはよくないと思います。高等教育の意味や、そこで何を得て社会に還元するかを問い直すことが、個人レベルでも社会レベルでも必要です。

今回、コロナ禍で悲鳴を上げている学生が、SNSで署名を集めるなど行動を起こしました。200以上の大学で、学生がいっせいに声を上げたインパクトは大きかったと思います。学生たちは「自分は学べているのか?」などと、大学に入った意味も問うている。「日本の大学生は遊んでいる」といわれるけれど、勉強したいという思いが私たちのアンケートにもあふれています。

同時に、これまで声を上げたことがなかった学生たちなので、「怖い」という感情ももっています。SNSなどでたたかれますから。大学に対して声を上げると、自分の評価はどうなるのか心配にもなる。日本は、従順に生きることを要求され、声を上げることが許されない社会のように感じます。

学生は、社会をよくするために動いている。社会を組み替えないと未来がもっと悪くなるから声を上げている。おとなの方々も「自分には関係のない問題だ」と壁をつくらず、議論に加わってほしい。みんなで議論しなきゃいけない、大事な問題ですから。

(聞き手・松下秀雄)

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