SDGs ACTION!

15歳が考える、持続可能な社会と企業とは ユーグレナCFO・川﨑さん

15歳が考える、持続可能な社会と企業とは ユーグレナCFO・川﨑さん
撮影・朝日教之
ユーグレナ2期目CFO/川﨑レナ

「ミドリムシ」を原料とする食品販売から、バイオ燃料の研究・開発までを手がける「ユーグレナ」(本社・東京都港区)が、18歳以下の「最高未来責任者」(CFO=Chief Future Officer)を起用し、若者の意見を企業活動の変革につなげようとしている。

今年10月には、大阪のインターナショナルスクールに通う、15歳の川﨑レナさんが2期目CFOに就任した。2期目の課題は「サステナビリティ」(持続可能性)で、1年かけて「フューチャーサミットメンバー」と呼ぶ同世代の若者5人とともに、会社への提言をまとめていく。川﨑さんの思いを聞いた。(聞き手 編集部・金本裕司)

――選考の際の課題文は「あなたにとっての『サステナビリティ』とは」でしたね。

「実は、課題文の最初に『サステナビリティが嫌いだ』と書いたんです。企業がキャッチコピーのように、サステナビリティとかSDGsとか言うのを不愉快に思っていたからです。でも、ユーグレナのことを深掘りしてみたら、サステナビリティがなぜ必要なのかを本当に考えている会社だと思いました。CFOになって、ユーグレナの中で何か変化を起こせたら、社会の中で大きな変化を起こせるかもと思って応募しました」「最近になって分かったのは、結果は同じでも、そこに至る思考回路が大切だということです。プラスチックを削減するとしても、未来の子どもたちのためにやらないといけないと考える会社と、会社の評価が上がるからやるという会社には、境目を引かないといけないと思います」

――「アース・ガーディアンズ・ジャパン」というNGOを創設し、代表を務めているのですね。

「ある会社のインターンで、世界に61支部がある『アース・ガーディアンズ』のメンバーにインタビューしたことがありました。私と同世代の人が、環境問題や人権問題、さらに音楽活動などにも取り組んでいる組織です。この活動を日本に広めたいと思い、日本支部を作りました。ワークショップなどいろんな活動をしていますが、私たちの活動経験が大きな会社で通用するかどうか試してみたくて、CFOに挑戦しました」

art_00050_本文1
撮影・朝日教之

ランドセルを送る活動に共感

――サステナビリティや環境問題に関心を持ったきっかけは。

「小学4年生のときに『ランドセルは海を越えて』という本を読みました。日本では小学6年生が終わると使わなくなるランドセルを、アフガニスタンに送る活動を取り上げた本でした。ランドセルを机代わりにして勉強している様子などを見て、私はどれだけ恵まれているのだろうと感じました。環境問題でも人権問題でも、自分ができることはやろうという使命感みたいなものが生まれました」

――サステナビリティの中でも特に関心のあるテーマはなんですか。

「教育に関心があります。私は普段インターナショナルスクールに通っていますが、小学生のときは夏休みの期間に公立の小学校にも行っていました。休み時間に歴史の話などをすると、みんな教科書とは違うそれぞれの考えをもっている。日本の教育が悪いということではありませんが、SDGsでも人権でもいろんな考え方を、外に発信できるようなカリキュラムがあればいいなと感じています」

「フューチャーサミットメンバーは、健康や経営、人権など幅広い関心を持っています。環境とか一つにまとめるのではなく、いろいろなサステナビリティを考えていこうと思っています」

――好きな本はありますか。

「黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』が大好きです。おばあちゃんに薦められて読みました。今までに200回ぐらい読んでいます。戦争中の厳しい時代でも、自由な教育と思想があり、ハッピーに生きていたのはすばらしいと思います」

art_00050_本文2
フューチャーサミットメンバーとの初会合=10月17日(ユーグレナ提供)

子どもの意見を聞ける大人になりたい

――15歳の川﨑さんには大人はどう映っていますか。嫌いな大人っていますか。

「『なりたくない大人』は、話を聞かない人ですね。10代には勝っていると思っている人とか、自分のやり方や考え方を変えない人は嫌だね、とメンバーで話しています。インターネットでもなんでも、理解できないから新しいものを否定するのって、ポテンシャルを捨てていると思います。5歳の子どもの意見も聞けるような大人になりたいと思っています」

CFOの提言で、ペットボトル商品の全廃などを実現

ユーグレナがCFOの募集を始めたのは2019年8月のことだ。

通常、企業のCFOといえば「最高財務責任者」(Chief Financial Officer)をさすが、同社が募集したのは18歳以下の「最高未来責任者」(Chief Future Officer)だ。

ヘルスケア事業やエネルギー・環境事業に取り組む企業として、会社の将来を展望するには、現在の経営陣に加え、未来を生きる当事者である子どもたちが議論に参加すべきだ、といった考えがあったからだ。

経営戦略部の木村健部長代理は「気候変動の問題でも自分事として最もとらえているのが今10代の人たちです。若い世代が考えていることを重視しない会社は、消費者、投資家、働き手からも重視されません」と語る。対象を18歳以下にしたのは、大学生にはインターンシップなどで接触機会があるが、日ごろ接点が持ちにくい高校生以下の生の声を聞きたかったからだという。

art_00050_本文3
初代CFOの募集広告=2019年8月9日朝日新聞朝刊

500人を超える応募があり、課題文や面接による選考を経て、同年10月、初代CFOに当時高校2年生で17歳の小澤杏子さんが選ばれた。CFOとともに議論を進める「フューチャーサミットメンバー」も選任、任期は1年。

初代メンバーのテーマは「環境問題」。月1回ミーティングを開き、会社がこの問題にどう取り組むべきかを議論し、複数の具体策を会社に提言した。

それを受けて、会社側は以下のように、実現可能なものから、実施に移している。

①飲料用ペットボトル商品を全廃し、紙パッケージ商品では消費者がプラスチックストローの有無を選べる商品を用意するなどして、21年中に、使用する石油由来プラスチック量を50%削減することに挑戦。

②社内で「ゴミ削減プロジェクト」を開始。マイボトルを持ち歩き、プラスチック包装を避けるよう意識して買い物をする。社内のゴミ箱は撤去。

③三重県多気町の研究所で、再生可能エネルギー100%の電力の使用を開始。使用するのは、「みんな電力」を通じた「度会ウィンドファーム」(同県度会町)の風力発電による電力。

art_00050_本文4
川﨑レナさんとユーグレナCFO事務局のメンバー(撮影・朝日教之)
2期目のエントリー課題は「サステナビリティ」

2期目は「サステナビリティ」という、より大きなエントリー課題を設定にした。課題文も「あなたにとっての『サステナビリティ』とはなんですか? また、ユーグレナ社がよりサステナブルであるために必要なことを教えてください」と問いかけた。

選ばれた川﨑レナさんとフューチャーサミットメンバー5人の議論が、これから本格化する。

「ユーグレナ」
2005年、世界で初めて石垣島で食用の微細藻類「ユーグレナ」(和名:ミドリムシ)の屋外大量培養に成功。健康を支える食品や化粧品の製造・販売を行うヘルスケア事業や、バイオ燃料の研究・製造などを行うエネルギー・環境事業などを展開。企業理念(フィロソフィー)は「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」。社員は単体で約200人、30歳代が中心。
この記事をシェア
関連記事