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昭和女子大学創立100周年記念シンポジウム 「女性リーダーは世界を変える」

昭和女子大学創立100周年記念シンポジウム 「女性リーダーは世界を変える」
Sponsored by 学校法人昭和女子大学

■共催:朝日新聞社
■後援:30% Club Japan 

興味深いデータがある。2019年末に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数2020」と、今年6月に公表された「IMD世界競争力ランキング2020」。その上位25カ国を見比べてみると、半数近い11カ国が両方にランクインしていることがわかる。ふたつの結果を安易に結びつけることはできないが、少なくとも「女性が活躍している」ことと、「国際競争力が高い」ことを両立させている国は、決して珍しくはないということだ。翻ってわが日本は、ジェンダーギャップ指数が121位、国際競争力ランキングは34位。この現実をどう考えるべきだろう。
SDGsのめざすジェンダー平等の実現に向けて、これからの社会で女性リーダーが果たすべき役割とは何か。未来型のリーダーとして活躍するのはどんな女性か。昭和女子大学の創立100周年を記念して、識者とともに考えるシンポジウムが行われた。

第1部 基調講演
リーダー像のパラダイムシフト

もしもそう望むなら、女性が男性のように強くなることもできるだろう。しかし今必要なのは、それではない——。坂東眞理子 理事長・総長が考える、女性の能力と可能性を伸ばすために大切なこととは。

昭和女子大学 理事長・総長
坂東 眞理子
内閣府男女共同参画局長など要職を歴任。 『女性の品格』など著書多数。
上回るのでなく新しい価値観を

まだ女性に学問は不要だと考える人が珍しくなかった時代、本学は「目覚めたる婦人、正しき婦人、思慮ある力強き婦人」を育てるという高い目標を掲げて創設されました。以来100年、制度のうえで男女平等は達成されましたが、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で121位というのが日本の現実です。一方で少子化や格差の拡大、あるいは気候変動や感染症の蔓延といった地球規模の課題にどう対処するのか。求められているのは、新しいリーダーシップです。

みなさんは、リーダーと聞いてどんな人を思い浮かべるでしょう。これまでの世の中では、貪欲に、時に手段を選ばず競争に勝ち抜く力にあふれた人が「強いリーダー」として評価されてきました。しかし現在、そうした評価軸は過去のものになっています。たとえばチームのメンバーとともに学び成長する。リーダー自身がメンバーにケアや奉仕を提供する。上に立って命令するのではなく、周囲を巻き込んでいく。そうした、どちらかといえば女性的だと思われてきた資質がリーダーに重要になっています。

もちろん、やろうと思えば女性が男性のように強くなることも、なりふり構わず生産性を上げることもできるでしょう。しかし大切なのはそれではありません。上回るのでなく「違う」価値観を提示すること。つまりパラダイムシフト (考え方の大きな転換)が必要な時代ということです。

自分たち自身が変わらなければ

日本の法律や制度にもまだ問題はありますが、同時に私たちのなかのアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み・偏見)に対しても、しっかり向き合っていく必要があります。女性は出世して責任を負いたくないんだよね。家庭で子どもを育てるほうが幸せでしょ。悪気なく、むしろ思いやりのつもりでそうした言葉を口にする男性は少なくありません。一方で女性たちも、家事をおろそかにして家族に迷惑をかけるわけにいかない、管理職になると風当たりが強い、といった考え方をしていないでしょうか。

政治が悪い、経営者が悪いといっているだけでは世の中は変わりません。当事者として自分は何をするのか。それが問われています。以前、本学で講演されたキャロライン・ケネディ元米国駐日大使は、女性は総理大臣にならなくても社会は変えられると語りました。同僚が子育てと仕事の両立に苦労していれば、できる範囲で負担を減らしてあげる。あるいはもっと人を増やして欲しいと会社にかけあう。自分の手の届く範囲から変えていくことはできるんだ、ということです。

突出した個人が何かを変えてくれるのを待つのでなく、一人ひとりができることから、まず半径50センチから始めていきましょう。女性が自分の手で世の中をもっと良くしたいと考えてはいけない道理はありません。私たち自身がパラダイムシフトを起こすことで、世界は変えていけると思います。

第2部 パネルディスカッション
未来志向のリーダーとは

社会のなかでリーダーとして活躍する女性たちと、女性たちのさらなる活躍に期待する企業。それぞれの立場から、求められる新たなリーダー像と、女性の力をもっと生かしていくために大切なことを話し合った。

花王株式会社 代表取締役社長
澤田 道隆
ヒューマンヘルスケア研究センター長などを経て2012年6月から現職。
永山祐子建築設計 代表
永山 祐子
昭和女子大学生活美学科卒業。作品にドバイ国際博覧会日本館など。
ボストン コンサルティング グループ
マネージング・ディレクター&シニア・パートナー
秋池 玲子

産業再生機構などを経て現職。企業の戦略作成や実行支援を行う。
【ファシリテーター】
ジャーナリスト
昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員
治部 れんげ

国際女性会議WAW!国内アドバイザー、W20日本運営委員会委員などを務める
制度より大切な助け合う風土

治部 初めに、花王の女性活躍の取り組みについて教えてください。

澤田 当社では1991年に、紙おむつの「メリーズ」にちなんだ「メリーズタイム制度」がスタートしました。これは出産や育児のための休職制度と、その後に復職する人のための時短勤務制度です。今では普通のことに思えますが、当時としては先進的な取り組みですので、社内でも快く思う人ばかりではなかっただろうと思います。そんな中で堂々とこの制度を利用した女性たちこそ、当社の女性活躍を支えてきた最大の功労者です。

治部 同様の取り組みがなかなかうまく進まない企業はどうすればいいでしょう。

澤田 メリーズタイム制度と並行して、花王では性別や年齢、病気の有無などにかかわらずみんながずっと働けるように助け合おう、という社内の意識づけを行ってきました。そうした風土が根付いていないところに、制度だけがあっても難しいだろうと思います。

治部 企業からは、女性たち自身が責任ある仕事を望まないので、管理職登用したくてもできないという話をよく聞きます。本当にそうでしょうか。

澤田 かつて私が研究開発部署の責任者だったころ、現場のリーダーを任せたいと思う優秀な女性がいました。本人に会ってそう話したところ、まだ子どもも小さいし、夫にも迷惑をかけられないので責任の重い仕事は無理だといいます。私は、会社全体でサポートするから信じてやってくれとお願いし、他のメンバーには何があっても自分が責任を持つからと約束しました。その後この人は期待以上の活躍で、今では花王グループを支えるキーパーソンの一人となっています。人材開発とは人を「育てる」ことではなく、その人が「育つ」場を提供することだというのが私の考えです。

孤立より手助けを闘うよりも協調を

治部 せっかくのチャンスを前に、家族のことを考えて尻込みしてしまう女性は少なくないですよね。永山さんは、建築事務所代表という仕事と母親という立場をどう両立していますか。

永山 幸い、実家の母など支えてくれる人が近くにいたこと、近隣に住む知人にベビーシッターをお願いできたことで今日までどうにかやってきました。以前の私は何でも自分でやらなければ気が済まないタイプでしたが、出産を機に人に任せる勇気を持てたことで、自分が救われただけでなく事務所もビジネス面で大きく成長しています。子育ては一人では難しいことも多いので、必要な時は手助けを求め、周囲をいかに巻き込んでいくかだと思います。

治部 永山さん自身も変わったことで良い結果につながったんですね。

永山 そうです。自分も周囲も子育ては常に母親が担うものだと思い込んでいると、必然的に女性はそれ以外の時間を持てなくなります。いろんな家族がいて、いろんな子育てがあるよね、というように女性を取り巻く社会の目も変わっていくといいですね。

治部 お仕事についても聞かせてください。建築業界というのはまだ男性中心の世界だと思いますので、その点で難しいことはないですか。

永山 たしかにこの仕事を始めた頃は、現場監督や職人さんに何かをやってもらおうと思ったとき、他の人よりも説明に時間を要することが多かったかもしれません。それは建築家が女性だからか若かったからなのかわかりませんが、私はそこで闘うよりも、理解し同調してくれる人を増やすように努力してきたつもりです。最近は大学の建築学科にも女性が増えていますので、これからは建築の世界もどんどん変わっていくと思います。

いつでも物事の明るい側面を見る

治部 秋池さんが社会に出たのは男女雇用機会均等法施行の少し後だそうですが、当時はまだ女性が第一線で働くことには困難も多かったのではないですか。

秋池 そうですね。ただ、形は違っても難しさというのはどんな時代にもありますし、先輩方のおかげで私たちもあったのですから、自分たちの世代だけがことさら苦労したと言ってはいけないと思っています。困難も視野を広げてみれば、意外な解決策がみつかるかもしれない。自分だけで考えて無理だと諦めてしまうのではなく、上司や家族など周りの人に相談してみたら思いのほか快く助けてもらえるということもあるのではないでしょうか。

治部 秋池さんのポジティブで柔らかな言葉を聴いていると、こちらも心が軽くなる気がします。
秋池 難しいこと、苦しいことばかりを見るのではなく、どこに自分の目を向けるかだと思います。例えば私は「たまたま」という言葉で片づけたくないと思っています。たまたま良い会社だった、たまたま助けてくれる人がいた、と言える環境になかったとしても、小さくても出来ることはあるはずです。そのように見つめた方が心も健康でいられますよね。

治部 ご自分の会社では、リーダーとしてメンバーにどう接していますか。

秋池 現在の世の中には、簡単には答えの出ない問題が増えています。誰もがすぐに賛成できるような答えが、存在しない課題も多い。だからこそリーダーは独りよがりになってはいけないと思います。出した方向性に反対する人の意見にも耳を傾け、納得いくよう議論もして、「最初は反対だったけれどやってみよう」という人をどれだけ増やしていけるかが大切です。

女性がリーダーに向いている理由

治部 最後に、これからの時代のリーダー像について、みなさんの考えをお聞かせください。

澤田 先ほどの坂東総長のお話にもあったように、未来型のリーダーとは、力でグイグイ引っ張るのでなく、チームの一人ひとりが持つ力をうまく引き出す人だと思います。そしてそういうことが得意な人は、どちらかといえば女性に多いのではないでしょうか。

永山 幸運にも私はこれまでクライアントに恵まれ、仕事を通していつも何か学ばせていただいています。その際心がけているのは、最初から自分のなかに答えを持たないこと。建築家とクライアント、あるいはリーダーとメンバーといった壁をつくらず、一緒に考えて答えを見つける。目線を合わせて並んで歩く。そんな気持ちが大切だと思います。

秋池 意思決定のためにいい議論をすること、そのためにいい準備をすること、その決定事項の実行について皆の納得を得ること。これらが大切です。また、任せられる仕事はどんどん任せることも重要で、それによって若手は経験を積み、リーダーはその間に新しい取り組みに時間を使える。そして成長したメンバーは、いずれ将来のリーダーになる。私は、常にそういう好循環を意識しています。

治部 本日は大変有意義な議論をありがとうございました。

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