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【夫婦別姓問題、どうしますか?】 私たちは「家族戸籍」にこだわります 自民党・片山さつき参院議員

【夫婦別姓問題、どうしますか?】 私たちは「家族戸籍」にこだわります 自民党・片山さつき参院議員
撮影・朝日教之

夫婦別姓問題の行方は、突き詰めれば自民党慎重派の動向にかかっています。同党の「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」の中心メンバーで、男女共同参画担当相も務めた片山さつき参院議員は、いまの「家族戸籍」の重要さを強調します。なぜ、夫婦別姓が認められないのか、慎重派の論理を聞いてみました。(聞き手 編集部・金本裕司)

最高裁の「合憲」がリーズナブル

――最高裁は6月、夫婦同姓を定めた民法などの規定は憲法に違反しないと判断しました。どう評価されますか。

行政でも法律家でも、過去の例をきちっと踏まえ、何が変わっていて、変わっていないかを詰めることが大事です。判決は、きわめてリーズナブルなものと思います。

――憲法違反ではないという一方で、2015年の判決と同様に、「この種の制度のあり方は国会で判断されるべきだ」とボールを国会に投げ返しています。

姓名についていろいろな組み合わせを考え、国民の賛意を得るよう方策を考えるということはあり得ることです。

旧姓の通称使用を拡大し対応

――しかし、国会では野党が提出している夫婦別姓法案も審議は行われず、議論も進んでいません。結果的に、別姓問題は進展していないのでは。

政府・与党では、2002年に自民党の高市早苗さんが通称使用を進める法案(注1)を発表しています。私も男女共同参画担当相兼規制改革担当相の時に、女性が主になっている職業を調べました。准看護師、保育士、介護福祉士などは旧姓が使えなかったし、民間でも生命保険の営業職はまだ使えませんでした。そこで、第4次、5次の規制改革実施計画に明記するという強力な手法で、通称使用できるようにしたわけです。

2015年の最高裁判決では、10対5で「合憲」としていたので、しばらくは法的な大きな動きはないと思っていました。ところが、昨年秋ごろから、党の法務系の国会議員の間から、「次の最高裁判決でひっくり返るのではないか」という声が出始めた。第5次男女共同参画基本計画(注2)の政府文書の話が出てきたころで、「最高裁判決が出てからではみっともない。自民党が先んじて夫婦別姓に前向きに転じよう」と言いだしたのです。しかし、今年の最高裁判決は結局合憲、しかも11対4でした。大した根拠もなく、何のための騒ぎだったのかと思いましたね。

(注1)高市氏が2002年、自民党法務部会に、議員立法として提案した「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」。夫婦別姓に反対する立場から、通称使用の拡大を進める内容。目的を「『夫婦の氏が同一であること』を維持しつつ、婚姻前の氏を通称として称する機会を確保するため、戸籍に『婚姻前の氏を通称として使用する』旨を記載する制度を設ける」とし、国や自治体などが、通称使用に必要な措置を講ずる責務を有する、とした。
(注2)政府が2020年12月末に閣議決定した。政府が示した原案は、「婚姻前の氏を使用することができる具体的な制度の在り方について、国会において速やかに議論が進められることを強く期待しつつ、(中略)政府においても必要な対応を進める」としていた。しかし、自民党内から反対の声があがり、最終的に「夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史を踏まえ、また家族の一体感、 子供への影響や最善の利益を考える視点も十分に考慮し、(中略)司法の判断も踏まえ、更なる検討を進める」という表現になった。

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撮影・朝日教之

同姓は合理的、不都合を是正すればいい

――男女共同参画基本計画の原案をみてどう思われましたか。

不自然に「氏」の問題だけが長い。女性に対するDVとか、女性の孤独、孤立によって自殺率が上がっていることなど片付いていない問題が山積しているのに、どうして「氏」が先にくるのか、と思いました。

今の夫婦同姓制度は合理的で、不便な点を徹底的に直せばよいと思っています。今度、高市さんの案を拡大して、「片山試案」(注3)を考えました。慎重派グループ幹部にもお見せし、安倍晋三元首相にもご説明したら、「これで反対な人は戸籍廃止論者だよ」という話でした。(試案が成立すれば)社会的には何だって旧姓でいけます。家族単位の戸籍登録制度は残るので、子どもの姓は自動的に決まり、争いがないという最大のメリットが維持されます。

(注3)高市氏の案を拡大し、通称使用の範囲を広げた。高市氏の案では、「婚姻前の氏を通称として称しようとする者は、婚姻届にその旨を付記して届け出なければならない」としているが、片山氏の案は、婚姻の後でも旧姓を通称として使いたい場合は登録を認める。また、離婚後の子どもが、籍に入った親の名字ではない名字を通称使用することも認める、という。

婚姻後でも通称登録を可能にする

――拡大したのはどのような点ですか。

結婚してしばらくしてから、旧姓を通称として使いたいと思ったら登録を認める点です。もう一つは、離婚後の子どもへの対応です。子どもはどちらかの籍に入りますが、そちらではない親の名字を名乗りたい子どももいるでしょう。たとえばですが、サッカーチームとか成績発表の際の名前を変えたくないとかあるでしょう。さらに、結婚で姓を変更した側の親が、子どもに自分の旧姓を名乗ってほしくて、子どもも承諾した場合には、わざわざ祖父母の養子に入れなくても姓を変更できるようにします。

ここまでやれば、夫婦別姓をめぐる論点はかなり消えます。これでも同姓はいやだという人は、家族戸籍がいやな人だと思います。私たちは日本にしかない家族戸籍の維持にこだわっているのです。

――片山さんが夫婦別姓に反対するコアの理由は、家族制度、家族戸籍が壊れてしまう、ということですか。

そうですね。日本には自治会がいくつあるかご存じですか。30万あるんですよ。何か災害などが起きても、遠くの親戚に頼っても誰もこられない。地域に住んでいる人同士で助け合って、この国は災害、疫病、貧困を乗り越えてきたんです。今回のコロナで地域の重要さはわかったと思います。

家制度があるから女性は搾取されたのか

――その地域を構成するのが「家」ということですか。だから家が大切だと。

私は「家」とは言わず、「家族」に代表される「共同生活世帯」と考えています。「家」という言葉がいやな人もおられるようですから。「共同生活世帯」についている名字が「氏」で、家族の「ファミリーネーム」ということです。

そもそも、現在の日本には戦前のような家制度なんてないし、それによって女性が搾取、抑圧されているなんて、現実にありますか。もちろん女性の社会進出には目に見えないバリアーがあります。出産があり、生理というディスアドバンテージもある。歴史的に女性が一歩引いて生きた国もたくさんあります。でもその背景には、どうしても女性が担わなければならない部分もあったからでは。そのような過去の男女の役割分担は、時代とともにずいぶん変わってきていて、まさに「共同参画」に向かっているのではないでしょうか。

――夫婦別姓も含め、ディスアドバンテージをなくしましょうというのは、おかしなことではないように思いますが。

もちろんです。だから、男女共同参画基本計画ではすべての問題を取り上げ、一つひとつ改善しようとしているのです。しかし、男女差がいまだに一番出ているのは、一個人として自立するための経済力ではないでしょうか。男女の賃金格差は法制度上はあってはならないことになっていますが、実際に平均をとると差がついています。もっともっと女性はがんばれ、という気がしています。

明治時代、地方から同姓を求める声

――歴史上の北条政子、日野富子などをあげて、日本は伝統的に別姓だった、同姓は明治以降のことではないか、という議論があります。

明治時代も最初の方針は、別姓だったのです。しかし、生活世帯が単位のほうがいいという声が地方から上がってきた。共同体の中で、生活を防衛していくためには、家族という単位がいいとなったのだと思います。先ほども言ったように、コロナ禍で、自治会のような単位がまた見直されていると思います。

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撮影・朝日教之

大蔵省、女性には「厚い壁」があった

――片山さんは、結婚して配偶者の名字に変えられたのですね。大蔵省でも、通称は使用されなかったのですね。

役所で働いていたころ、私の周りにも、自分個人にみんなが頭を下げているのだと勘違いしている人がいました。しかし、私は、よい先輩の指導で、個人ではなく役所の地位に対して頭を下げているのだと常に自分に言い聞かせていました。それもあって通称名を使うことにこだわりませんでした。

ただ、女性にとって、大蔵省には「前例」という分厚い壁がありました。こんな重要な、権限がある仕事を女にやらせて大丈夫か、という壁が。務まるかどうかポストごとに試され、23年間大変な苦労をして、女性初の主計官に上がりましたが、「傷だらけの人生」と自分でも言っています。

――「氏」を変えることでアイデンティティーの喪失感があったという人がたくさんいますが、片山さんは?

私はなかった。旧姓は朝長ですが、片山になってからも自己同一性で苦労することはなかった。ただ、「あなたは有名人だったから苦労しなかったんだ」とおっしゃる方もおられるかもしれませんが、キャリアを積んでだんだんと有名になったので、二世や生まれつきの有名人ではありませんから。

――夫婦別姓に反対している神道政治連盟などから、強い圧力があるのではないですか。自民党が野党だったときにも離れず支援してくれた団体です。

保守系にとっては、心強い団体だとは思いますよ。ただ、私も再従兄弟(はとこ)が1000年以上続く神社の宮司ですが、神社が歴史的に果たしてきて、今も主に行っていることは、(政治的に力を持つ)宗教団体活動というよりむしろ、地域の文化や習慣、コミュニティーを守ることで、きわめてSDGs的な活動ではないかと思います。

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