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【夫婦別姓問題、どうしますか?】 困っている女性の実情知り、考えを変えた 自民党・稲田朋美衆院議員

【夫婦別姓問題、どうしますか?】 困っている女性の実情知り、考えを変えた 自民党・稲田朋美衆院議員
撮影・仙波理

自民党の稲田朋美さんは以前、選択的夫婦別姓に反対の論陣を張っていました。しかし、別姓が導入されないことで困っている人たちの実情を聞いて考えを変えたといいます。夫婦の「氏」である「ファミリーネーム」は維持しつつも、法的に結婚前の姓を使い続けられる「婚前氏続称制度」を提唱しています。(聞き手 編集委員・秋山訓子)

イデオロギーを離れ、不利益を解消

――以前は選択的夫婦別姓に反対されていたそうですね。

今も選択的夫婦別氏には反対です。ただこの問題は、家族を大切にするのか、それとも個人主義を徹底するのか、戸籍をなくすのか、そういうイデオロギー論争の象徴として語られてきました。自民党も家族解体や戸籍廃止といったイデオロギー闘争の象徴としての選択的夫婦別姓には反対ということで、野党時代の2010年の参院選で、法務部会長代理だった私が反対の選挙公約を書いたことがあります(注1)。

(注1)自民党は、2010年の参院選公約で、「わが党は、民主党の夫婦別姓制度導入法案に反対し、日本の家族の絆を守ります。また、女性の社会進出については、旧姓の使用範囲を拡大する法整備などで支援します」と、夫婦別姓反対を明記した。16年参院選、17年衆院選、19年参院選の公約は夫婦別姓には触れず、旧姓の使用拡大をうたった。直近の19年参院選公約は、「旧姓の幅広い使用を認める取組みを進めます。まずは、住民基本台帳とそれに連動するマイナンバーカードにおいて旧姓併記ができるよう準備を進めます」としている。

――その後、考えが変わったのですか?

本当に困っている人たちがいるという実情を知るにつけ、これはイデオロギーではなくて、女性に不利益をもたらし、活躍を阻む問題だと考えるようになったのです。政治家として解決したいと思いました。

ファミリーネームの必要性は変わらない

――野党や自民党の推進派が主張する選択的夫婦別姓ではないのですね?

違います。私は民法の夫婦同氏制度は維持すべきだと思います。ファミリーネームは必要だからです。

――一方、自民党が主張してきた通称使用の拡大とも違うのですね。通称使用では不十分とお考えなのですか?

今の法制度を前提とすれば、通称拡大しかないのですが、通称はあくまでも通称で、法的な裏付けがありませんし、特に海外では通用しません。たとえば企業にとっては二つの姓を管理するためのシステムや事務処理に大きなコストがかかります。不動産登記簿は結婚前の姓を併記できないので、通称で登記できない。だから契約もできないし抵当権も設定できない。

パスポートには旧姓併記が可能ですが、婚前氏(旧姓)を法的に使えない国は日本だけですから国際社会で通称が全く通用せず、不審者に間違えられるというような話をよく聞きます。こういう不利益を被っている女性が多い。それを解決したいと思いました。

離婚後に「婚氏」使える制度から着想

――「婚前氏続称制度」の着想はどこから?

「婚氏続称制度」が民法で定められています。1976年の民法改正ででき制度です(注2)。離婚をして元の姓に戻った後に、3カ月以内に届け出れば婚姻中の姓(婚氏)を使い続けることができます。社会人としてもう結婚中の姓が通用しているので、離婚してもそのまま名前を使い続けている人、いますよね。

これができるんだから、それを反対にして、結婚しても、結婚前の姓(婚前氏)を使用できるよう民法などを改正すればいいのではないかと考えたのです。

(注2) 民法第767条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。 2 前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3カ月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。

――婚前氏続称制度では、法的な名前は夫婦で一緒になるのでしょうか?

はい、夫婦は同姓です。でも、民法を改正して結婚前の姓を自分の呼び名として使い続けられるようにします。家族としての姓と個人のアイデンティティーとしての旧姓を法的に使い続けられる。家族か個人、どちらかをとるのではなくて、家族も個人も両方満足できるという意味があります。子どもの名前も家族としての姓になりますから、争いを引き起こすこともありません。今の制度を維持しつつも、一番抵抗が少なく、かつ法的な裏付けもあり、世界で活躍できる女性が増えると考えました。

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撮影・仙波理

別姓の推進、反対両派から異論

――ただ、選択的夫婦別姓賛成派と反対派、両方から異論が出そうにも思えます。

その通りの状況になっていて、私の説明の仕方が稚拙だったかなと思っています。「夫婦の名前を別々にするのか、別氏じゃないか」と批判されて、家族解体運動を勢いづかせると誤解されてしまった。初当選から一貫していますが、私の主張の根幹は、伝統を守りつつ新しいものを創造していくことです。

「敵認定」よりも一緒に議論を

――婚前氏続称制度を提唱し、今年の通常国会で、LGBT法案をとりまとめようとした稲田さんを「変節した」と批判する人たちもいます。

家族は当然大切だと思っていますし、今でも夫婦別姓には反対です。自分の核は守りつつ、より良い制度に向けて前進したいだけなのですが、「裏切った」と言われてしまうことがあります。今まで支持してくれた方で「稲田さんが変わってしまったから、もう応援できない」という人もいます。

できるだけ私も説明しようとしているのですが、「敵認定」というのか、少し主張が違うともう仲間ではないというような排除の論理が働いていると感じることもあります。地元で怪文書のようなものをまかれたり、雑誌にネガティブな記事を書かれたり、落選運動をされたりもしています。

――それは深刻ですね。

私は、落選運動よりも、私の意見に異論がある人とも議論をしたいと思っています。かたくなにこれでなければダメだというのではなく、互いに少しずつ譲歩をする、相手の意見を聞くことはできませんかと言っているだけなのですが。

――婚前氏続称制度やLGBT法案に取り組むようになるのに、何かきっかけはあったのでしょうか。

2017年に、自衛隊の日報問題で防衛相を辞任してからです。ものすごく批判されました。とてもつらく、落ち込みました。自分であれこれ考える日々のなかで、差別とか不公平に疑問や怒りを感じるようになったんです。この問題でも非常に不利益を被っている人がいる。それはおかしい、政治家として何かしなければと思うようになりました。

――でもそんな稲田さんを逆に支持してくれる人もいるのでは。

そうですね。女性を中心に「応援しています」と駆け寄ってきてくれる人もいます。「稲田さんもこういう身近な問題もがんばっているんだな」と思ってくれる人も増えてきたのを感じます。

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撮影・仙波理

司法のボール、投げ返すのが政治の役割

――稲田さんご自身は配偶者の姓を選ばれたのですよね?

はい。結婚したのは、弁護士になってまだ4年目でしたし、そういう時代でした。婚前氏続称制度が導入されても、今の姓を変えるつもりもありません。ただ、夫の家に入ったという意識はありません。

――最高裁判決では政治にボールが投げられました。

国会で議論して決めるべきことという判決でした。私たち政治家はボールを受け取って返さなければいけないと思っています。国会での議論は本当に重要です。私も法務委員会でこれまで2回、婚前氏の問題についてとりあげています。私は女性の不利益を解消したいのです。家族が大切なのはもちろんですが、そこに女性の我慢や犠牲を伴うのはおかしいと思っています。

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