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【夫婦別姓問題 どうしますか?】「姓」は便利だからできた、壊す必要はない  亀井静香・元衆院議員

【夫婦別姓問題 どうしますか?】「姓」は便利だからできた、壊す必要はない  亀井静香・元衆院議員
撮影・朝日教之

2009年、自民党からの本格的な政権交代で誕生した民主党政権。多くの改革に期待がかかった政権でしたが、夫婦別姓は実現できませんでした。立ちはだかったのが、政権に参画した国民新党の亀井静香代表でした。警察官僚出身で、元々は自民党で政調会長や建設相を務めた人。前回衆院選で引退しましたが、なお政界にはつながりが深いようです。どうして夫婦別姓に反対なのでしょうか。(聞き手 編集部・金本裕司)

多数決で決めていい問題か?

――6月の最高裁判決をどう評価されますか。民法などの規定は憲法に反しないとする一方で、これは政治、国会の場で結論を出す問題だという趣旨でした。

国会でとなれば、多数決で決めるということになる。こういう問題を、多数が少数の意見を支配するという形で扱っていいのですか。最高裁の判断に、基本的な疑問を呈します。

――別姓を求めている人がいて、最高裁も国会で議論をと言っています。議論してもいいのではありませんか。

国会で多数派がよしと認めれば、その結論に従っていい問題ですか。「姓」は明治時代にできたものでしょう。普通の人が姓をもつようになったのは明治以来です。姓を名乗り、慣習として夫婦同じ名前を名乗りましょうとなった。姓なんてものは、生活上、便利だから付いたんだ。それをわざわざ分けることに、何のメリットがあるのか。例えば、アパートの表札に別々の姓を付けて、子どもはどうするの。子どもが困っちゃうでしょう。

――子どもはどんな場面で困りますか。

子どもに、お父さんの名前で生活するのか、お母さんの名前で生活するのか、そんな選択をさせることはないと思うよ。亀井さんとか、菅さんとか一つの姓にする方が便利ですよ。

――2015年の最高裁判決で「違憲」とした裁判官は、「女性の社会進出は著しく進んでいる。姓の変更で個人の識別に困難を引き起こす事態が生じ、婚姻前の姓使用の合理性と必要性が増している」「姓の変更でアイデンティティーを失ったような喪失感を持つこともありえる」といった判断をしています。少数意見でしたが、働く女性が増えるなかで、当然出てくる意見ではないでしょうか。

生活の必要上で付けたのだから、なんで別姓にすることが便利なのか分からない。

通称名で対応すればいい

――亀井さんは15年当時、現職議員でしたが、最高裁判決前に朝日新聞に、「仕事などで立場上使っている名前まで、結婚で変える必要はないと思う」と発言されています。それでも別姓はだめということですか。

それは簡単な話で、通称名でいいんじゃないですか。私の事務所でも、働いている人が結婚して名前が変わったら不便ですよ。

――通称名を使い分けるためには、事務的な作業がたくさんあって、逆に煩雑になるのが実態です。

本来一つの姓で通せばいいと思いますが。通称使用には、それは役所などの手続きはいろいろあるでしょう。国家のお世話になっているのだから、それくらいは国家に協力しないといけないでしょう。

――自民党の反対派のみなさんは、「ファミリーネーム」の重要性を主張しています。「家」制度や伝統を守ることが大切という人もいます。利便性をいう亀井さんの主張は、反対派の主張とは少し違うのですか。

私の言っているのは、便利なものをあえて壊してどんなメリットがあるのかということです。

――自民党の反対派の人たちには、いろいろな圧力があるのでは。神社本庁とか神道政治連盟とか、自民党が下野した時も強い応援団だったと思いますが、そういう団体の人たちは別姓に反対ですから。

私は、神社本庁や神政連から圧力をかけられたことはない。

――亀井さんだからでは。圧力を感じている人がいるのでは。

架空の議論だ。

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撮影・朝日教之

針の穴から「家族」という堤防は崩れる

――もう一度伺いますが、亀井さんは朝日新聞のインタビューで、「姓が変わることで自己喪失感を持つこともあるかもしれない」という認識を示しています。

喪失感というのはあるかもしれない。でも好きな相手なんだから、幸せな話なんじゃないの。

――そうでしょうか?

家にいろんな表札がかかっていては意味がない。外から自分の家に帰った時、「ああ我が家に帰った」というのは、一つの名前の方がいいんですよ。俺も離婚の経験があるからあえて言うのだが、家族は大切ですよ。家族が崩壊するということは、容易なことじゃないですよ。

――別姓にすると家族は崩壊しますか?

やはり針の穴から堤防は崩れる。あえてその危険を冒す必要はないということだ。

――結婚したいが、姓だけは一緒にできないという人が現実にいます。政治家として、若い人たちを応援してやろうとはならないのですか。

繰り返すが、明治以来、便利だから続けて生きたものを壊す必要はないでしょう。子どももかわいそうだ。学校で友達から、「あんたの家は何でお父さんとお母さんの姓が違うの、一緒に住んでいるだけなの」と聞かれちゃう。子どもに責任を持たないといけないでしょう。

自分の子どもには「好きにしろ」と言う

――亀井さんは、お子さんは。

子どもは5人。男3人、女2人。

――お子さんが、別姓でいきたいと言ったらどうされますか。今の制度では別姓はできないので、事実婚になりますね。

私は好きにしろというね。

――娘さんが夫の姓でなく亀井姓でいくと言ったら、どうされますか。

うちの娘はそうはしないと思うが。いずれにせよ、好きにしろです、亭主と相談しろと言う。籍を入れる必要もないでしょう。

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撮影・朝日教之

――亀井さんは、野中広務さんとともに、社会党との政権を作った中心メンバーでした。自民党の考えを押しつけるのではなく、社会党の村山富市首相を守る役回りだったと思います。また、死刑廃止問題にも議連の会長として取り組んでおられました。自民党のいわゆる保守派とは違う面もありますが、別姓はどうしてもだめですか。

私は保守じゃない、根っからの自由主義者だと思っている。死刑廃止なんて賛成しない人がおかしい。神様でもあるまいし、人間が人間を裁くなんて、命を奪うなんてあってはいけない。人に人を裁く権利はない。当たり前のことだ。

――自由主義者なら、働く女性で困っている人がいる、仕事をするうえで不都合を感じている人がいるのだから、何とかしようとならないのですか。

通称使用までだめだと言っている訳ではありませんから。困るといっても、役所での手続きとかでしょう。役所でやることは、国家の行事みたいなものなんだから、協力すればいいのでは。

国家が「束ねる」には同姓が必要 

――国家の側から考えて、別々の姓では、国家運営上やりづらいのですか。

国家である以上、まとめないといけないからね。束ねるのに不便が起きるよ、やはり。

――政府の調査でも、世界で同姓制度をとっているのは日本だけです。

世界と全部一緒じゃないといけないということはない。日本は日本のありようがある。

――自民党の推進派、若手議員をどう思いますか。

もっとやるべきことがあるのでは。(姓の問題など)政治家が口を出す問題ではないでしょう。人々の営みに政治が口を出してはいけない。

――自民党内には、臓器移植法案のように、党議拘束を外せばよいという議員もいます。

元々国会でやる問題じゃないというのが私の前提です。

――自民党総裁選では、岸田文雄氏は途中で慎重な言い回しになりましたが、その岸田氏を含めると、立候補した4人のうち3人は別姓推進派でした。

そう言った方が世間に受けると思っているのだろう。夫婦別姓なんて言っていたら選挙に負けると思うよ。夫婦別姓は世論にはならないですよ。

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