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ポストコロナと生物多様性 データで見るSDGs【9】

ポストコロナと生物多様性 データで見るSDGs【9】
日本総合研究所シニアスペシャリスト/村上 芽

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村上 芽(むらかみ・めぐむ)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト。金融機関勤務を経て2003年、日本総研に入社。専門・研究分野はSDGs、企業のESG評価、環境と金融など。サステイナビリティー人材の育成や子どもの参加に力を入れている。『少子化する世界』、『SDGs入門』(共著)、『図解SDGs入門』など著書多数。

「愛知目標」の次は? 注目されるCOP15

SDGsの目標年は2030年ですが、169のターゲットの中には、2020年や2025年と書かれているものも時々登場します。大きな理由は、2015年のSDGs採択時にすでに走っていた国際目標との整合性をしっかりと取るためでした。

それがよく表れているのが、「目標15:陸の豊かさも守ろう」です。目標15の下にある12のターゲットのうち五つに、「2020年までに」という期限が設定されています。これは、2010年に愛知県で開催された生物多様性条約の締約国会議(COP10)にちなんで「愛知目標」と名づけられている、2020年までの国際目標が反映されているためです。

2021年の今年は、国連の生物多様性条約事務局を中心に、「ポスト2020生物多様性フレームワーク」の議論が進められています。最新の締約国会議となるCOP15は、10月11日から15日まで、オンラインでパート1が開催されました。パート2は、2022年4月22日から5月8日まで、中国・雲南省昆明市で予定されています。「ポスト2020」の具体的な内容は、この、パート2で決定される見通しです。

2030年以降、SDGsの全体像がどうなるかはまだわかりませんが、少なくとも生物多様性に関する主だった目標・指標についての「次」については2022年に見えてくる、というわけです。

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COP15の会場予定地、中国・昆明の工事現場に掲げられた生物多様性の看板(撮影・朝日新聞)

感染症対応で新たな認識

では、具体的に何が議論されるのか見ていきましょう。キーワードは、2050年ビジョンの「自然と調和した生活」(Living in harmony with nature)になりそうです。

「自然と調和」とは、なんとも言い古された言葉のようですが、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックで、新たな意義が加わりました。それは、将来のパンデミックの予防にほかなりません。

というのも、コロナ以前から、私たちは動物由来の感染症に悩まされ続けてきました。確認されているだけでも200種類以上もあるそうです。エボラ出血熱、MERS(中東呼吸器症候群)、SARS(重症急性呼吸器症候群)、炭疽(たんそ)菌などが含まれ、新型コロナウイルス感染症についても、その可能性が示唆されています。

2021年7月に開催されたG7では「自然協約」(Nature Compact)が採択されました。この協約では、生物多様性を喪失させないことが、将来のパンデミックから人間と野生生物、動物の健康を守ることと深くつながっているという認識が示されています(前文の段落E)。

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ザンビアのエボラウイルス調査。捕獲し麻酔したコウモリから採血する(2012年、高田礼人・北海道大教授=左=提供)

レッドリストで増える絶滅危惧種

生物多様性をわかりやすく表現すると、「生き物を絶滅させないこと」でしょう。SDGsのターゲット15.5と愛知目標の目標12は、ともに絶滅危惧種の保護を求めています。目標の進捗(しんちょく)状況を知るには、「レッドリスト指数」があります。国際的な自然保護ネットワークであるIUCN(国際自然保護連合)が提供しています。スイスに本部を置く民間団体で、国際機関ではありませんが国・政府機関・NGOが幅広くメンバーに加わっており、自然保護の分野では世界最大級とされています。

「レッドリスト指数」では、これまでに13万8374種の植物・動物・菌類を評価しています。このうち、すでに絶滅または野生としては絶滅した種が約0.7%、絶滅の危機にさらされている危惧種が33.9%にのぼっています(グラフの絶滅危惧IA類CRから準絶滅危惧種NTまでの合計)。データ不足で判定できていないものが14%もあるため、リストの半分近くが危機に陥っている可能性もあります。

IUCNは、さらに調査対象を拡大しようとしていますが、わかっているだけでも種の数は膨大なので、知らないうちに絶滅してしまっている種がどれだけあったかは不明です。

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出所:環境省ホームページ

生物の種に脅威を与えてきた要因としては、農業・漁業、生物資源の利用、自然のシステム改変、住宅・商業用不動産の開発などが大きく、人間がより豊かな生活を送ろうとして他の生物の存在を脅かしてきたことがわかります。

日本の状況はというと、レッドリスト指数に基づく評価では、図表2の地図のように「赤信号」がついています。1点満点としたスコアが0.77点と低く、しかも減少を続けているためです。日本では環境省がデータを取りまとめていますが、最新版の「環境省レッドリスト2020」によると、絶滅危惧種が40種類増えて3716種類となっています。

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日本でも関心深める必要

日本では「生物多様性」という言葉はもちろん、愛知目標に基づいて国内で作られている「生物多様性国家戦略」に対する一般の理解も、低いと言わざるをえません。図表3のように、2019年の調査では「生物多様性」という言葉を「聞いたこともなかった」人が47%、「生物多様性国家戦略」では73%にのぼります。

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パンデミックの経験をどのように生かすのか。一つの重要な手がかりとして、生物多様性や生態系に対して関心を持ち、理解を深めていくことが必要ではないでしょうか。

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絶滅危惧種のアオウミガメ(撮影・朝日新聞)
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