各政党の人権政策は? 衆院選に向けNGOヒューマンライツ・ナウがアンケート

10月31日に投開票される衆院選を前に、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(東京)が主要8政党の人権政策についてアンケートをおこない、結果を公表した。SDGsとも関連する19項目を尋ねている。グローバルビジネスではESG投資の影響もあり「ビジネスと人権」が重要テーマとなってきたが、政治の場では人権問題に対してどんな認識なのだろうか。(編集部・竹山栄太郎)
投票の判断材料に
アンケートの対象は自由民主党、立憲民主党、公明党、共産党、日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組、社会民主党。公示日の10月19日を回答期限とし、期限までに回答した6党の結果を21日に公表した。その後、日本維新の会と公明党も回答し、最終的に8党すべてが出そろった。
ヒューマンライツ・ナウによると、アンケートは市民に投票行動の判断材料を提供するため、「国際人権基準の観点から取り組みが必要で、かつ日本社会における関心が高く、多くの市民がその早期解決、被害救済を望んでいる」ものを選んだという。
質問は19項目で、テーマは「選択的夫婦別姓」「刑法性犯罪規定の改正」「国会議員の義務的クオーター制度(少なくとも30%を女性に)」「死刑廃止」「核兵器禁止条約の批准」など。
各党の回答原文と、回答をもとにヒューマンライツ・ナウがまとめた一覧表が、ウェブサイトで公表されている。


選択的夫婦別姓や同性婚は?
アンケートでは各党の姿勢の違いが示された。選択的夫婦別姓の導入について、自民は「氏を改めることによる不利益に関する国民の声や時代の変化を受け止め、その不利益をさらに解消する」。維新は「戸籍制度を維持しながら実現可能な夫婦別姓制度の導入を目指す」とし、公明や立憲などほかの6党は「賛成」と答えた。

同性婚の法制化についても、自民は「『現行憲法の下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない』という政府の立場と同様に考えている」として「慎重な検討が必要」と答えた。公明は「(LGBT)理解増進法案を成立させた上で、国民的議論を深めながら必要な法整備について議論を重ねていく」とした。ほかの6党は賛成した。
包括的な差別禁止法の制定について、自民は「現在、個別法に基づくきめ細やかな人権救済が行われているものと考えている」、公明は「必要性について検討していく」、維新は「国内法制度との整合性を考える必要がある」とした。立憲民主など5党は「賛成」と回答した。
エネルギー政策は?
人権条約で認められた、個人が直接国際機関に人権侵害の救済を求める個人通報制度の批准については、立憲や共産など野党5党が賛成し、自民も「真剣に検討を進めていく」と答えた。
企業に対して、事業活動にともない強制労働や搾取といった人権侵害が起きていないかを調べ、予防・軽減策をとる「人権デュー・ディリジェンス」を法的義務化することに対しては、全野党が賛成。自民が「引き続き検討していく」、公明も「検討すべきだ」とした。
「次世代の人たちの人権との関係で非常に重要な課題」(ヒューマンライツ・ナウ事務局長で弁護士の伊藤和子氏)と位置づけるエネルギー政策をめぐっては、賛否が分かれた。すべての原子力発電所を廃炉にし、再稼働や新増設は行わない「原発ゼロ政策」に対し、共産、社民、れいわが「賛成」とした一方、公明、立憲、国民は条件付きで再稼働を認める考えを示した。
石炭火力発電所の全廃と、二酸化炭素(CO₂)排出量について2030年までに現在の政府目標である「13年度比46%削減」より高い60%以上の削減を目標とすることについては、共産、社民、れいわは賛成した一方、自民は「反対」。立憲は「石炭火力の利用はCO₂排出量削減のため燃料アンモニアとの混燃を前提とすることを考えている」とした。

21日にオンラインで開かれた記者会見(会見時点では公明、維新は未回答)で、ヒューマンライツ・ナウのアドバイザーでジャーナリストの津田大介氏は「数年前と比べて人権問題が選挙の重要な争点になってきており、選挙結果にも影響があるのではないか」と述べた。
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