SDGs ACTION!

膵臓がんの発見早期に 線虫使った尿検査を開発 HIROTSUバイオサイエンス

膵臓がんの発見早期に 線虫使った尿検査を開発 HIROTSUバイオサイエンス
HIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮社長(左)とエリック・デルクシオ氏=2021年11月16日

1滴の尿から「がん」を発見する。そんな検査方法により、これまで困難とされてきた膵臓(すいぞう)がんの早期発見が可能となりそうだ。「線虫」という体長1mmほどの生物の嗅覚(きゅうかく)を利用した技術で、HIROTSUバイオサイエンスが開発した。2022年の実用化をめざす。11月16日、広津崇亮社長と同社湘南R&Dセンター長のエリック・デルクシオ氏が記者発表した。(編集部・吉田拓史)

線虫がにおいを検知

同社は2016年に九州大学の助教だった広津さんが立ち上げたバイオベンチャー企業。広津さんたちの研究グループは2015年、C・エレガンスという線虫が優れた嗅覚を持ち、健康な人の尿からは逃げ、がん患者の尿には近づいてくることを突き止めた。同社は、この性質を利用した検査方法「N-NOSE」を開発し、2020年から検査サービスを開始。肺がん、胃がん、乳がんなど15種類のがんの「有無」をステージ0段階から高い感度で判定することができる。ただ、どの種類のがんかが特定できないため、精密検査へつなげる「1次スクリーニング検査」という位置づけだった。

今年8月、同社は大阪大との共同研究で、線虫が早期の膵臓がんにも反応することを確認し、米国科学誌「オンコターゲット」で論文を公表した。そして今回、線虫が膵臓がん患者の尿に反応する遺伝子を特定。その遺伝子を働かなくすることで、他のがんには反応し、膵臓がんにだけ反応しない線虫をつくることに成功した。

がん患者68人の尿を使った実験では、がんかどうかの判定は100%、膵臓がんかそれ以外のがんかの見極めでは91.3%が正しく判別できたという。サービス開始まで、さらに症例数を増やし、信頼性を高めていく。

art_00218_本文2
N-NOSE線虫(左)は尿に近づくが、膵臓がんに反応しない線虫(右)は遠ざかる=HIROTSUバイオサイエンス提供

「医学界の夢」実現へ

膵臓は他の臓器に隠れて検査が難しく、がんになっても自覚症状が出づらいため、早期発見は極めて難しい。見つかったときには手遅れというケースも多く、「早期発見は医学界の夢だった」と広津社長。第一弾に膵臓がんを選んだ理由だ。

膵臓がんは国内で年間3万人が亡くなり、がんによる死者数では4番目に多い。米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏、元横綱・千代の富士の九重親方、元プロ野球監督の星野仙一氏、漫画家さいとう・たかを氏ら、多くの著名人も亡くなっている。

技術的には他のがんの特定も可能だ。同社は死亡者数の多いがんや検査をする際に心身への負担が大きいとされる女性特有のがんを優先的に研究し、将来的にはすべてのがんを特定できる検査方法の確立をめざしている。

N-NOSEについて広津社長は、米国オレゴン健康科学大などのチームやイタリア技術研究所を中心としたチームが今年になって再現性の確認に成功したと説明し、「線虫がん検査は世界で注目される存在。科学界では信頼性の高い技術として認められたといえる」と話した。N-NOSEによる検査費用は1万2500円で、膵臓がんの判定を加えた場合の料金は未定だ。

この記事をシェア
関連記事