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COP26、現地参加で見えた成果 変わる国際交渉、若い世代へ期待も

COP26、現地参加で見えた成果 変わる国際交渉、若い世代へ期待も
COP26の交渉会場(IGES提供)
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)/髙橋健太郎

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髙橋健太郎(たかはし・けんたろう)
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES=アイジェス)気候変動とエネルギー領域副ディレクター。東京大学大学院農学生命研究科修士課程修了(農学修士)。コンサルティング会社で地球温暖化対策支援などに従事した後、2009年にIGESに入職。パリ協定第6条や排出量取引制度などを調査・研究している。国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)には11年から参加し、交渉を支援してきた。

コロナ禍でのCOP、検査や入場制限も

イギリス・グラスゴーにて、10月31日に開会した国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)締約国会議(COP26)は、当初の予定から1日延長し、11月13日に閉会した。

COP26では、1週目の前半に130カ国以上の首脳が集まり、多くのハイレベルイベントが開催された。議長国のジョンソン首相をはじめ、米国のバイデン大統領、岸田首相、インドのモディ首相らが出席。首脳級会合では、インドが2070年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を発表したほか、多くの国から気候変動対策や、現実の気候または予想される気候とその影響に対する調整の過程である「適応」に関する発表が次々と行われ、非常に注目された。UNFCCC事務局によれば、COP26には2週間で約4万人の参加登録があったといい、11月1~2日のハイレベルイベント期間中、会場は特に多くの参加者で混雑した。

新型コロナウイルスの影響で1年延期され、待ちに待たれた今回のCOPは、感染が収束しない中での開催となった。会場内では、イギリス政府が定める行動規範に従うことが求められた。具体的には、日本からの参加者の場合、イギリス到着後48時間以内にPCR検査を実施し、会場でも抗原検査の陰性結果を提示することが求められた。なお、交渉が行われる会合やサイドイベントの会場では入場制限が行われた。入場できない場合は、COP26のオンラインプラットフォームから視聴することが推奨されていた。

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COP26の会場に掲げられた地球のモニュメント(IGES提供)

COP決定で石炭に初めて言及

今回のCOP決定でのサプライズは、初めて石炭について言及されたことである。議長国であるイギリスは、石炭火力発電の段階的廃止の加速をCOP26における優先事項としていたものの、交渉上の正式な議題には、石炭は含まれていなかった。ではなぜ、決定文に加えることができたのであろうか。

COPでは、通常、交渉で議論される論点ごとに決定文が作成される。ただし、COP決定の冒頭部分(カバーテキストと呼ばれる)に当たる内容は、議長国の采配で決定案を作成することができる。今回のCOP26決定では、「対策が講じられていない石炭火力発電の段階的削減」について、各国に政策を加速させることが要請された。この石炭への言及は、以前からグテーレス国連事務総長が石炭火力発電の段階的廃止を呼びかけていたことに加え、多くの国が「GLOBAL COAL TO CLEAN POWER TRANSITION STATEMENT(石炭からクリーンエネルギー移行へのグローバル声明)」や「Powering Past Coal Alliance (PPCA)」で、石炭火力発電の段階的廃止を支持していることから盛り込むことができたのではないかと推察する。

なお、COP26議長が第1案として提案した内容は、「石炭の段階的な廃止を加速させる」との表現であったが、インドが閉会式の土壇場で“段階的削減”を提示し、妥協案として受け入れられた。この厳しい交渉場面は報道でも繰り返し取り上げられた。インドの修正提案に対し、小島嶼(とうしょ)国などの小国から、不透明なプロセスで修正提案が行われたことに対して不満が述べられ、議長が謝罪し涙を見せたことは大変印象的であった。議長の涙は、国連プロセスにおいて全会一致の法則で合意を得ることの難しさとともに、なんとかして国際的にメッセージを出さなければならないというプレッシャーによるものであったのだろうか。

一方で、各国が不満や懸念を示しつつも、「前進するために、今回の議長提案を受け入れる」という前向きな見解が多く見られた。パリ協定の実施に向けて、完璧な合意文書ではないにしろ、気候変動対策を一歩でも前に進める必要があるという各国の思いも垣間見えた最終日であった。

今後のCOPでは、各国で最低限合意できる部分を確認しつつ、合意が難しい点は、新たなアライアンス(協力同盟)や協力を通じて支持国を増やしていくことで、例えば、脱石炭・脱化石燃料に向けたグローバル連合を構築して、パリ協定の目標に近づけていく手法がトレンドになるのかもしれない。

相次ぐアライアンスの発表

COP26の期間中には、これまでになく多くのアライアンスや声明の発表が行われた。イギリス政府がCOP26公式ウェブサイトで発表しているだけでも、28の新たなアライアンスや声明を確認することができる。そのアライアンスの内容は、石炭の段階的廃止や森林減少対策、航空や海運部門における温室効果ガス削減、自動車、省エネ分野における取り組みの推進など、非常に多岐にわたるものである。また、米国と中国が11月10日に発表した米中グラスゴー共同宣言のように、二国間の協力や声明の発表もあった。COP26は今後の決定的な10年で温室効果ガスの排出削減を大幅に実施していくための決意の場となった。

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米ケリー気候変動担当大統領特使(中央)と中国の解振華・事務特使(右端)=2021年11月13日(撮影・朝日新聞)

特に印象的であったのは、11月11日に記者会見が行われたBeyond Oil and Gas Alliance(BOGA)の発表である。BOGAは、コスタリカとデンマークが設立し、その他10の国と地域(フランス、グリーンランド、アイルランド、スウェーデン、ニュージーランド、ポルトガル、イタリア、米カリフォルニア州、カナダ・ケベック州、ウェールズ)が参加メンバーとなった。

このアライアンスは、石油とガスの段階的廃止を促進することを目的としている。COP26決定では、石炭以外にも、「非効率な化石燃料補助金の段階的廃止」について、各国に政策を加速させることが要請されている。BOGAに参加している国の数は現時点では少ないが、今後、賛同する国が増えれば、石炭に加えて石油・ガス生産に対する規制も強まることになるであろう。

このようなアライアンスに賛同する国が増えていくことは、化石燃料の使用を継続する企業や国に強いプレッシャーを与えることになる。今後、気候変動対策強化によるリスクへの備えをしっかりと行うことは必須だ。

今後の決定的な10年とその先に向けて~若い世代への期待~

COP26会場では、若い世代による活動が行われていた。筆者がグラスゴーに到着した翌日の10月30日に、宿泊先のあるウエストジョージストリート周辺で、気候変動対策の強化を呼びかける小規模なデモが1時間ほど行われた。11月5日には約1万人規模、6日には約5万人という大規模なデモもあった。気候デモにはスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ氏をはじめとして、世界各国で気候・環境活動を行っている若者たちが積極的に参加していた。

今回のCOPでは、パリ協定第6条(炭素クレジットの取引)のルールづくりも焦点となった。会場内でも、二酸化炭素の排出削減量に価格をつけて取引する「炭素クレジット」の活性化に伴う人権や先住民族への影響に対する懸念、また、排出削減量を二重に主張しないように求める声、そして、過去のCDMクレジット(京都議定書で創設されたクリーン開発メカニズムによるクレジット)を「ゾンビクレジット」と称し、パリ協定へ移管しないように求めるための活動もみられ、若い世代がパリ協定第6条をよく理解していると感じられた。

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COP26の会場で行われた若い世代によるデモ(IGES提供)

国内でも、COP26の期間中、鹿児島で積極的な活動をしている中村涼夏さんをはじめ、多くの学生が世界同時アクションを行った。若い世代の勇気あふれる行動は、気候変動問題を一般社会により認知してもらうにとどまらず、国際会議にもインパクトを与えるようになった。

では、気候デモは具体的にどう評価されたのだろうか。第44代米国大統領を務めたオバマ氏が11月8日、COP26会場でのイベントで行ったスピーチが大変印象的であった。オバマ氏は「あなたたちが不満を抱くのは当然。変えるべきものを変えるために、世界中の若者たちが実践している。若いリーダーたちは既に行動を起こしている。本当の意味での変化を起こすために、若い人たちにできることはたくさんある」と鼓舞した。

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COP26の会場で行われた若い世代によるデモ(IGES提供)

また、今回の交渉の場で、パナマ代表が「パナマの交渉担当者の平均年齢は29歳であり、交渉団の65%が若い世代である」と述べたのも、強い印象を残した。数十年先を見据え、気候変動に取り組んでいくために、今、若い世代にしっかりと経験を積んでもらい、将来に備えるという大変素晴らしい方針である。

国内外の多くの若者が、気候変動のように自身に関係することに対し、真剣に向き合う必要があると感じている。現在10~20代の若い世代は、2050年には40~50代で社会を担う世代となる。オバマ氏がスピーチの後半で述べていたように、若い世代が今後、国や企業が正しい行動をとるようアクションを起こし、そして一消費者、一従業員としてさらなるキャンペーン活動を実施していくことであろう。

日本においても、将来の日本を担う若い世代の意見を傾聴し、ともに社会を変えていく時期なのではないだろうか。

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