SDGs ACTION!

ごみ焼却施設が断トツに多い日本の不名誉 分別で家庭の生ごみ資源化を

ごみ焼却施設が断トツに多い日本の不名誉 分別で家庭の生ごみ資源化を
家庭ごみが増えている大阪府吹田市で、収集作業にあたる作業員(吹田市提供)
食品ロス問題ジャーナリスト/井出留美

art_00166_著者画像_井出留美
井出留美(いで・るみ)
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学)、修士(農学)。ライオン、青年海外協力隊、日本ケロッグ広報室長などを経る。東日本大震災で支援食料の廃棄に衝撃を受け、自身の誕生日でもある日付を冠した(株)office3.11設立。第2回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門、Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018、令和2年度 食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。近著に『食料危機』『捨てられる食べものたち』など多数。

水分80%の「燃やせるごみ」?

英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の期間中に、日本はまた「化石賞」に選ばれた。気候変動対策に消極的な国に贈られる不名誉な賞である。

登壇した岸田文雄首相が、途上国向けの気候変動対策として最大100億ドルの追加支援をおこなうと表明したにもかかわらず、今回焦点とされていた石炭火力発電からの撤退については言及せず、逆に既存の火力発電をアンモニアや水素を利用して二酸化炭素の排出を抑えて活用すると表明したことが、後ろ向きと評価された。

同じように日本が後ろ向きととらえられていることに、「生ごみ政策」がある。

日本では1960年代から70年代にかけて、全国の自治体でごみ焼却施設の建設が進められた。ごみを焼却する理由は、「国土面積がせまい」ことと「衛生面を考慮して」とされている。2021年3月に環境省が発表したデータによると、日本のごみ焼却施設の数(19年度末現在)は1067。他国に比べ、けた違いに多く、08年のOECDのデータによれば、世界の焼却炉の半分以上は日本にあるという。また、日本の一般ごみ処理事業経費は2兆885億円(19年度)と膨大である。

一般的に「燃やせるごみ」の40%は生ごみだ。その生ごみは、重量の80%が水分である。「燃やしにくいごみ」というほうが適切だ。そのため自治体によっては、せっかく分別回収したプラスチックごみを燃焼剤代わりに加えて炉の温度を上げているところもある。日本は生ごみを燃やすことで気候変動に加担しているのだ。

ごみは各自治体の条例に沿って細かく分別回収されているので、私たちは日本のリサイクル率を高いと思いがちだが、生ごみを燃やしているぶん、他のOECD諸国にリサイクル率で差をつけられている。

なぜ高い? 韓国の生ごみリサイクル

おとなりの国、韓国はどうしているのだろう。

韓国は国土面積が日本の約4分の1と、さらにせまい国である。ところが、ごみ焼却率をみると日本の77%に対して3分の1以下(25%)だ。さらに日本のごみのリサイクル(+コンポスト)率が20%未満なのに対し、韓国は約60%と3倍も高い。これはOECD加盟国の中でもドイツに次いで2番目に高いリサイクル率である。

韓国は1990年代からごみ問題に取り組んできた。92年に資源の節約とリサイクル促進に関する法律が制定され、97年には生ごみの分別が義務化された。また、2005年にはごみの埋め立てが禁止された。さらに、11年からは重量計と自動認識技術RFIDを装備した「スマート生ごみ回収箱」の設置がはじまり、13年に一部自治体で導入され、全国に普及した。その結果、韓国の家庭ごみのリサイクル率は86%にまで上昇した。

「従量課金制」とは、量に応じて利用者に課金される料金体系のこと。韓国では捨てる生ごみの重量が重ければ重いほど料金が高くなり、少ないほど安くなる。その結果、少しでも料金を安くしようと、生ごみの水分をしぼる、生ごみを出さないように気をつけるなどの行動変容が起こった。

art_00226_本文1
ソウル市にあるスマート生ごみ回収箱。専用のキーをかざすとふたが開き、投入したゴミの量が表示される(朝日新聞撮影)

「スマート生ごみ回収箱」は24時間いつでも使え、カードをかざして生ごみを投入すると計量され、月決めでカード決済される仕組みだ。ソウル市では導入後6年間で、市内の生ごみを4万7000tも削減できたという。回収された生ごみは、主に堆肥(たいひ、30%)、動物飼料(60%)、バイオ燃料(10%)の三つにリサイクルされている。

韓国は、生ごみの分別回収に20年以上も前から取り組み、現在では食品廃棄物のリサイクル率に限ると95%を達成している。この95%という実績は、取り組み開始前のリサイクル率が2%だったことを考えると驚異的である。世界の注目を集めているのもうなずける。

ともに国土のせまい日本と韓国だが、日本ではごみを焼却し、韓国では資源化させるというように異なった政策を推し進めてきたことになる。

日本の先進自治体は

発酵学の第一人者である小泉武夫先生(東京農業大学名誉教授)は、「生ごみは宝」「生ごみは資源」と呼びかけ、生ごみを燃やすのではなく、発酵させて堆肥にする方法を提唱している。日本の自治体には、生ごみを分別回収し、資源として活用しているところがある。

福井県池田町はそんな自治体のひとつである。この人口2400人ほどの四方を森にかこまれた町では、家庭から出る生ごみは、週に3回、ボランティアによって回収されている。

art_00226_本文2
福井県池田町(筆者撮影)

集められた生ごみは、牛ふんともみ殻を混ぜて発酵させ、堆肥にする。できた完熟堆肥は「土魂壌(どこんじょう)」という商品名で販売され、無農薬・無化学肥料の野菜づくりや有機米の栽培に使われている。この堆肥で育てられた野菜や有機米は、町内だけでなく、福井市内などでも販売されている。

art_00226_本文3
軽トラックで生ごみを回収している様子(写真提供:池田町・溝口淳副町長)
art_00226_本文4
集めた生ごみに牛ふん、もみ殻を混ぜる(筆者撮影)
art_00226_本文5
福井県池田町は資源循環型の農村を目指している(筆者撮影)

ゼロウェイスト(ごみゼロ)で知られる福岡県大木町では、分別回収した生ごみを発酵させて液体肥料にし、それを農地に還元して野菜などを育て、地元の学校給食に使っている。給食で出る生ごみは再び集められ……と「リサイクルループ」をまわしている。

宮崎県新富町では、2021年9月22日からパナソニックと南九州大学が協力し、産官学共同による食と農の循環システムの実証実験が始まっている。新富町の家庭から出る生ごみを、パナソニック製の生ごみ処理機で乾燥させ、町が回収してコンポストで堆肥にする。堆肥は、利用者が共同で管理し交流しあうコミュニティー農園で利用され、育った野菜を町民が食べるという循環を目指している。

焼却場建設の前に考えてほしいこと

環境先進国スウェーデンのマルメ市では、市営の病院、学校、交通機関などで使うエネルギーをすでに100%再生可能エネルギーに転換済みで、バナナの皮やコーヒーかすなど、食品の非可食部からつくられたバイオ燃料で市バスが走っている。

art_00226_本文6
スウェーデン第3の都市・マルメ市をバイオガスで走るバス(筆者撮影)

廃棄物業界には「分ければ資源、混ぜればごみ」という標語がある。環境先進国で普及しつつある「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」とは、捨てるものがない自然界にならい、これまで捨てていたものを資源として循環させていく経済モデルである。日本でも、これまで燃やしてきた生ごみを資源として活用することで、廃棄物の処理コストや二酸化炭素の排出量を大幅に削減できるはずだ。

戦争、原発、東京五輪・パラリンピックの例を挙げるまでもなく、日本では一度動き出したものを止めるのは容易なことではない。ごみ焼却施設についても、各自治体がすでにかなりの資金を投入しており、見直すのは簡単ではない。しかし、老朽化したごみ焼却施設をどうするか話し合うときには、生ごみの分別回収と資源化についても、ぜひご検討いただきたい。

この記事をシェア
関連記事