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土屋鞄製造所がリユース事業に参入 自社バッグ、職人の修理を経て再販

土屋鞄製造所がリユース事業に参入 自社バッグ、職人の修理を経て再販
土屋鞄製造所の店舗に並んだリユース品=2021年11月19日、東京・中目黒

ランドセルをはじめとする革製のバッグや小物を製造販売する老舗メーカー、土屋鞄(かばん)製造所(東京)が、リユース事業に初めて乗り出した。使われなくなった自社バッグを顧客から引き取って職人が修理し、再び販売する。12月19日まで試験販売しており、2022年3月から本格的にスタートする予定だ。今後はリユース・リメイク・リペアに力を入れていく方針で、26年までに年間売上高5億円のプロジェクトに育てたいという。(編集部・竹山栄太郎)

「つくる責任」果たす

バッグの引き取りは10月の1カ月間、国内の17店舗や配送で受け付け、提供者には大人用バッグの20%引きクーポンを贈った。目標としていた100点を大きく上回る550点が集まり、1点1点、クリーニングや補色、破損したパーツの交換といった修理をほどこした。

生まれ変わったトートバッグやショルダーバッグなどは、11月19日から東京・中目黒のランドセル専門店内で販売している(12月19日までの予定だが、売り切れ次第終了)。価格は新品として販売されたときの50~75%ほどに抑え、新品と同様の修理サービスにも対応する。当初は約150点の販売を計画していたが、売れ行き好調のため商品数をさらに増やすという。

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リユース品のバッグが並ぶ店内=東京・中目黒
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メーカー自らがリユース事業に乗り出すのには二つの理由があると、土屋鞄製造所の三木芳夫執行役員は説明する。「我々はいままで、つくることに関してはものすごいこだわりを持ってきたが、捨てられるものや、たんすで眠っているものに対してはうまく取り組めていなかった。お客さまに対してきちんと責任を果たすべきだと考えた」のが一つ。そして、「グローバルに打って出るには、環境負荷が少ないブランドであることが求められる。その準備という意味もある」という。

職人の採用・育成も

土屋鞄製造所には専門の修理職人がおり、バッグのファスナーや持ち手の交換などの修理をしている。「縫い合わせている糸を一度ほどき、また縫うときに、もとの通し穴に糸を通していくなど、ほかではあまりやらないような丁寧で難しい仕事をしている。職人の高い修理技術が付加価値になる」(三木さん)という。

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バッグを修理する職人(土屋鞄製造所提供)
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修理前(左二つ)と修理後(右二つ)の金具(土屋鞄製造所提供)

これまでも、自社製のランドセルを加工してミニチュアランドセルやパスケースなどに作り替える「リメイク」や、店舗で革製品のブラッシングやオイルケアを無料でおこなうサービスを手がけてきた。今後は、修理技術を活用したサステイナビリティー(持続可能性)の取り組みにさらに力を入れていく方針だ。リユースの対象を財布などバッグ以外にも広げたり、引き取った製品を新たなバッグや小物にリメイクしたりすることや、店頭でのリペアサービスも検討している。職人の採用や育成も進めていきたいという。

三木さんは「動物性の皮革は耐久性が高く、メンテナンスの仕方にもよるが5年、10年使えるのは当たり前。10年ものの製品でも、ちゃんと手入れをして使われていれば、修理によってきれいにお使いいただける。時間の経過で生まれてくる風合いも楽しんでほしい」と話す。

SDGsでは、目標12で「つくる責任つかう責任」(持続可能な消費と生産)が掲げられており、そのなかのターゲット12.5には「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用および再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」ことが書かれている。

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リユース品のバッグが並ぶ店内

自社の付加価値見つめ直して

土屋鞄製造所の三木芳夫執行役員に、リユース事業への思いやSDGsとの関係を尋ねた。

――リユース事業に対する顧客の反応はどうですか。

お客さまから引き取った製品には、「自分が大切にしてきたものを次の人につないでいただきたい」といった手紙がついているものもありました。リユース品を求めて来店するお客さまのなかには、「小学校に入るときに親に土屋鞄のランドセルを買ってもらった。通常の商品は高くて手が出ないけれど、リユース品ならと思って買いに来ました」という学生の方もいましたし、「自分が提供したバッグが、どれだけきれいになったか見に来た」という方もいました。私たちのブランドに愛着を持つお客さまがいることを感じられ、次の活動につなげるモチベーションにもなりました。

もともとの使い手のお客さまが思いを持って使ってくださっていたものを、私たちもきちんと思いを持って修理して店頭に並べています。そういう思いをつないでいただけたらうれしいです。これをきっかけに私たちの製品のおもしろさを感じてもらえたらと思います。

――リユースはビジネスとして成り立つのでしょうか。

ちゃんと利益が出なければ事業として続けられないので、そこは大丈夫です。今回、リユースとリメイク、リペアをあわせて「アップサイクル」(新しい付加価値を与え、別の製品に生まれ変わらせること)の取り組みをスタートさせたわけですが、これは私たちがミッションとして掲げる「時を超えて愛される価値をつくる」にもつながると考えています。自分たちがつくるものに責任をとる取り組みはパタゴニアやリーバイスといった海外ブランドがすでに始めていますし、お客さまからちゃんと評価してもらえると思っています。

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土屋鞄製造所の三木芳夫執行役員=東京都中央区
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リユース品のバッグが並ぶ店内

――SDGsに対する考えを教えてください。

事業活動のなかでも重要なテーマの一つだと思っています。SDGsを本格的に意識し始めたのは今年(2021年)ですが、当社が長年積み重ねてきたものを客観的にとらえ直したときに「それ、もうやっているよね」というものもありました。たとえば、私どものランドセルは以前から「男の子用」「女の子用」と言わず、「お子さんが背負いたいものを背負ったらいいですよ」とお話ししています。最近では「男の子が背負ってもかっこいい赤」「女の子が背負ってもかわいい黒」といったジェンダーレスのシリーズ「RECO(レコ)」も始めました。社内でSDGsに関するワークショップもおこない、徐々に事業活動に浸透させています。

――自社の事業をSDGsとどう結びつけられるか、悩む企業担当者もいます。

「自分たちの手元に何かSDGsっぽいことがないか」と考えても、なかなかうまくいかないと思います。それよりは「自分たちの事業の最もコアな付加価値って何だろう」というところから始めたらどうでしょうか。どこの企業も社会の課題に対して取り組んでいるはず。それを再認識することが最初のアクションとしてはいいのではと思います。老舗であればあるほど、いままで会社が続いてきている理由があるはずで、そこにたくさんの答えがあるでしょう。新しく立ち上げたばかりの会社なら、自分たちが社会のどんな課題に向き合わなければいけないのかという目的をきちんと持つことが重要になるのではないでしょうか。

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