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COPへの若者参加で深まる「気候リテラシー」の重要性

COPへの若者参加で深まる「気候リテラシー」の重要性
英グラスゴーでのCOP26にあわせたデモ行進。プラカードを掲げる子どもの姿も(撮影・朝日新聞)
日本総合研究所シニアスペシャリスト/村上 芽

11月に開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、過去にない危機感のもとで合意形成がはかられました。主催国の英国は、さまざまなテーマでイベントを設定、意欲のある国や企業連合による宣言や発表が全体の流れを作った点でも、注目されました。「教育」もその一つです。本サイトで連載「データで見るSDGs」を執筆する日本総合研究所の村上芽さんが解説します。

art_00099_著者_村上芽
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト。金融機関勤務を経て2003年、日本総研に入社。専門・研究分野はSDGs、企業のESG評価、環境と金融など。サステイナビリティー人材の育成や子どもの参加に力を入れている。『少子化する世界』、『SDGs入門』(共著)、『図解SDGs入門』など著書多数。

政府以外の発表や宣言活発に

COP26では、「グラスゴー気候合意」(Glasgow Climate Pact)が採択されました。
今回の協定のポイントは、

① 産業革命以前からの平均気温上昇幅を2℃ではなく1.5℃に抑える努力の追求を強調して求めた

② 削減対策のない石炭火力発電の段階的な削減や、非効率な化石燃料向け補助金の段階的な廃止について言及した

③ 先進国から途上国への年間1000億ドルの拠出が2020年までに実現していないことを指摘したうえで今後の着実な実行を求めた

といった点に集約されます。

②は、温室効果ガスの早期削減を重視する立場からは「表現が弱すぎる」と批判されました。石炭火力を条件なしに「廃止すべし」と言い切ることができなかったからです。石炭火力を活用して経済成長を遂げたい国(インドなど)の意見がまだ強いということでもあり、「廃止すべし」と説得できるほどの支援策(支援額)を打ち出せなかったということでもあります。

COP26の成果をまとめるのは各国の代表ですが、同時にさまざまな団体が新たな取り組みを発表しました。温室効果ガス排出のネットゼロを目指す金融業の連合GFANZが、参加する銀行や資産運用機関の資産が130兆ドル(約1兆4800億円)に達したと公表したのをはじめ、業種や地域ごとに多くの宣言がなされました。「石炭火力廃止に関する共同声明」に46カ国が署名したものの日本は加わらなかったことも話題になりました。

art_00229_本文1(日本に抗議するNGO)
日本の消極姿勢に、ピカチュウの着ぐるみを着て抗議するNGO(撮影・朝日新聞)

グレタさんだけじゃない

若い世代や、教育に関するCOP26前後の状況についてはどうでしょう。

脱炭素に向けた強いメッセージを出す若い世代と聞いて、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、彼女だけがリーダーなのではありません。

COP26の準備段階に入った9月には、イタリアでYouth4Climateサミットが開かれ、186カ国から15~29歳の約400人が参加しました。グラスゴーでもCOPの前週に第16回国連ユース会議が開かれました。国連では2011年ごろから正式に若い世代(ユース)の参加を促しており、彼らが意見を発表する機会を作っています。

会期中の11月5日には、YOUNGOイベントも共催しました。YOUNGOは、気候変動枠組み条約の正式な構成員で、子ども・ユース世代のNGOや活動家からなる団体です。グラスゴーでは、スイスとインド出身の代表が約4万人の活動家らのメッセージを出しました。COP27に向けて「私たちの惑星のために学び、気候のために行動しよう」という新たなステートメントを発表しています。

art_00229_本文2(youngo共催イベント)

各国の教育大臣がメッセージ

こうした動きに応えるように、教育大臣らの宣言や新たな教育・学習面での政策が発表されました。開催国の英国は、自然や生物の種について学び、小さいころから保全スキルをつけるための小学生向けの理科のカリキュラムを開発しているほか、学習自然公園構想などについて多くの動画を提供しました。

art_00229_本文3(英国提供動画)

韓国、アルバニア、シエラレオネの教育大臣らも、カリキュラムの中心に気候変動を置くことを約束しました。各国の教育大臣らが気候教育の充実を約束し、教育資源の開発などについて力強いメッセージを発する様子は、ユーチューブで公開されています。下記はその一部ですが、「気候教育(climate education)」や「気候リテラシー(climate literacy)」という言葉が、あちこちに出てきます。

art_00229_本文4(カメルーン教育大臣)

「国のカーボンニュートラル戦略ではワークショップやSNSを通じ若者の声を取り入れ、また、気候教育に力を入れる」(フィンランド)

「初等から高等教育まで、教員の気候リテラシーを向上させる支援を2024年までに全土で展開する」(スリランカ)

「森と水、生態系に関する知識を深め、情報を整備する」(ニカラグア)

「中等教育では、グリーンな仕事への関心を深める」(北マケドニア)

「気候について学ぶことは質の高い教育を受ける権利の一部。教員の支援が不可欠」(ジブラルタル)

全体を通じ、温室効果ガスを減らしながら豊かになるにはどうしたらよいか、という意味での知識やスキルを身につけること、その基盤として生態系との関係を重視しようという主張がなされています。

熱量に欠ける?日本の教育

こうなってくると、日本の状況が気になります。

日本では、学習指導要領に「持続可能な社会の創り手となることができるように」と書かれており、最近では多くの学校がSDGsを題材にした学習を進めています。ただ、学習指導要領の本文を読むと、言葉として「気候変動」が出てくるのは「気候変動や外来生物にも触れること」の1回きりです(小学校、中学校それぞれ)。他に学ぶべきものがたくさんあることはわかりますが、付属品のような印象は否めません。

文部科学省の「令和3年版科学技術・イノベーション白書」では、「台風・集中豪雨など洪水や土砂災害をもたらすような大雨は増加傾向にありますが、これは、人為的な温室効果ガスの排出の増加に伴い地球が温暖化するという気候変動が影響しているとも言われています」と描写されています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年8月に発表した「人間の活動の影響によって大気、海洋、陸地が温暖化していることは疑う余地がない」との表現や、今回のCOP26で教育大臣らから発せられた多くのメッセージに込められた危機感に比べると、日本での気候変動のとらえ方は、ずいぶんとのんびりしているのではないかと心配になってしまいました。

art_00229_本文5(熱海土砂災害)
日本でも毎年のように台風や集中豪雨による甚大な被害が起きている。写真は2021年7月に静岡県熱海市で発生した土砂災害で救助にあたる自衛隊員(撮影・朝日新聞)

国内の教育現場においては、デジタル教育や外国語教育を低年齢から始めたところに、コロナ対策と対人コミュニケーション経験の両立などの課題が山積しており、「さらに気候教育」というと負担感が強いかもしれません。既存の学習課程のなかに気候変動をいかに統合できるか、負担を増やさずに実践的な知識とスキルを共有する工夫が求められています。そのようなコミットメントがトップから出てくることも期待したいところです。

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