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サステナビリティとビジネス 日本とスウェーデンがもつ可能性とは

サステナビリティとビジネス 日本とスウェーデンがもつ可能性とは
会議はアストラゼネカ東京オフィス(東京都港区)で行われ、ネット配信された
Sponsored by アストラゼネカ株式会社

国境や業界、産官学の枠組みを超えて、持続可能な社会への課題解決に協力しあおうと、「Sweden-Japan Sustainability Summit 2021」が10月20日、オンライン上で開かれた。日本とスウェーデンのビジネスリーダーや政府関係者、学者らが登壇し、気候変動問題への取り組みや企業におけるサステナビリティ戦略の必要性などを議論した。

官民が手を携えてカーボンニュートラル達成へ

会議はスウェーデン大使館の主催。アストラゼネカやボルボ、エリクソンなどスウェーデン系の企業5社が協賛、サントリーやブリヂストンなど日本企業を中心に6社が協力した。また、日本政府から環境省の中井徳太郎事務次官、経済産業省の木原晋一大臣官房審議官(環境問題担当)が出席した。

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あいさつするヘーグベリ大使

冒頭、駐日スウェーデン大使のペールエリック・ヘーグベリ氏があいさつした。

ヘーグベリ氏(駐日スウェーデン大使) ノーベル物理学賞を受賞された真鍋淑郎博士が予測した通り、気候変動は世界的な問題になっています。海面上昇や異常気象で、何百万人――今世紀の人々だけではなく、将来世代の人々も含めて――の生活が脅かされている。我々の生活を変えなくてはいけません。社会は構造変革の時を迎え、産業革命に匹敵する根本的な変革が必要になっています。容易なことではありません。全員で成し遂げていかなくてはなりません。しかし、同時に興味深い時代とも言えます。新技術の導入で、人類も地球も繁栄することができるチャンスが訪れている。

スウェーデンは2045年までにカーボンニュートラルを達成するとの目標に向けて、順調に前進を続けています。産業界も脱炭素化計画を発表しており、「Lead it」(という国際的なイニシアチブ)で、専門知識や経験を共有しています。日本には150社を超えるスウェーデン企業が進出しており、1万人以上の雇用を生んでいます。一方、スウェーデンにも300社以上の日系企業が進出しています。両国の通商・投資関係は非常に強力であり、将来に向けての成長ポテンシャルも大きい。

企業はあらゆるサプライチェーンの領域において「化石燃料フリー」という目標を掲げていますが、政府としても、企業が目標を達成していくための条件を整えていかなくてはなりません。官民が手を携えていくことが重要です。

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ビデオで参加した日本の高校生たちのメッセージを聞くヘーグベリ大使
二国間協力にポテンシャル

日本からは、経産省の木原官房審議官がスピーチした。

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あいさつする木原官房審議官

木原氏(経済産業省) 日本とスウェーデンはどちらも美しい自然を有しており、国民は長年にわたって、その自然とともに暮らしてきました。両国とも洗練された技術、イノベーションがあります。それが強い機動力、成長の原動力として機能してきました。いま、喫緊の課題として気候変動問題があり、持続可能な成長に対応しなければなりません。日本とスウェーデンは一緒に、このグローバルなアジェンダの解決に協力できると思っています。

昨年10月、日本政府もカーボンニュートラルを2050年までに達成すると宣言しました。さらに今年4月、2030年までに温室効果ガス排出量を(13年度比で)46%削減すると表明しました。テクノロジーをリードする国として、経済と環境の好循環を作っていきます。2兆円のグリーン・イノベーション・ファンドで今後10年間、研究開発段階のものから実装段階のものまで支援していきます。水素のサプライチェーンやカーボンリサイクリング、アンモニア電池といった分野が対象です。

気候変動やサステナビリティは重要な課題です。ソリューションを探し、新しい未来を切り開いていかなければなりません。日本にとって、スウェーデンとの連携には大きなポテンシャルがあります。日本政府としても民間企業をサポートし、パートナーシップを強化していきます。

基調講演1
25%が変われば、全体が変わる

続く基調講演では、スウェーデンの独立系シンクタンク「グローバル・チャレンジ」代表のカタリナ・ロルフスドッター氏が「スウェーデンと一緒に新しい道を探そう、一緒に可能性を切り開こう」と題し、再生可能エネルギーの普及や教育の必要性について言及した。

ロルフスドッター氏は、1000万人の視聴者を持つオンライン放送「We Don’t Have Time」の司会者でもあり、環境活動家のグレタ・トゥンベリさんにカメラを向けて初めてインタビューしたジャーナリストでもある。

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ビデオ出演し、システムチェンジを訴えるロルフスドッター氏

ロルフスドッター氏は「壊滅的なスピードで、資源採掘を進めた結果、この星の限界を超えてしまっている。恐ろしいことばかりが起きていますが、一方で希望もあります」と話し、温室効果ガス排出量実質ゼロへの行動を促すキャンペーン「Race To Zero」などの実例をいくつか紹介。スウェーデンでは50%以上の若者が、自分たちの未来に不安を抱えているとの統計に言及したうえで、「行動科学によると、25%の人が賛成すれば、グループ全体が変わるそうです。グループは、企業だったり国だったり、あるいは地球そのものかもしれません。勇気を持ち協力して、可能性を切り開いていきましょう」と呼びかけた。

基調講演2
持続可能性への考慮は企業価値を高める

日本側の基調講演は、東京大学未来ビジョン研究センター教授の高村ゆかり氏が「持続可能な開発のための企業行動を促進するためのグローバルフレームワーク」について解説した。

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企業間連携の重要性を説く高村氏(右上)

高村氏は、ここにきて加速しているカーボンニュートラルへの動きの特徴として「自治体や企業といった非国家主体がリードしている」ことをあげた。例えば、パリ協定と整合的な目標を設定した企業を認定するイニシアチブ「Science Based Targets(SBT)」には、現在1970社を超える企業が参加し、970社が目標を設けている。また、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す「RE100」にも、日本企業がすでに62社参加しているという。

企業がカーボンニュートラルに向けて動く理由としては、①現実化する気候変動の悪影響と将来のリスクへの懸念と、②気候変動への対応・考慮が企業評価や競争力を左右する問題になっている点をあげた。こうした企業行動の変革を促進するためのポイントについては①持続可能性に関する明確な長期目標の設定・提示と、②気候変動が企業に与えるリスクと機会の分析・評価、開示を指摘。「持続可能性の考慮をすることは、本来、企業価値を高め、企業の経営を強化するもの。サプライチェーン・バリューチェーンの管理という観点からも、企業間の連携は必須であり、今回のサミットがきっかけとなることを期待しています」と締めくくった。

基調講演3
ビジネスへの統合が不可欠

続いて、「ビジネスとしてのサステナビリティ」をテーマに、スウェーデン大使館通商代表のカーステン・グローンブラッド氏と、大型商用車メーカー・スカニアジャパンCEOのミケル・リンネル氏が登壇した。サステナビリティは企業にとってなぜ重要かとの質問に対し、グローンブラッド氏は「正しいインパクトやバリューに重点的に取り組むことは、その他の企業の手引きとなるから」などと回答。リンネル氏もスカニアのサステナビリティ戦略を解説したうえで「我々はエコシステムの一部分にすぎません。単独ではなしえない。もっとも重要なことは、ステークホルダーと有益なパートナーシップを組むことです」などと話した。

スウェーデン大使館のグローンブラッド氏(左)とスカニアジャパンのリンネル氏
スウェーデン大使館のグローンブラッド氏(左)とスカニアジャパンのリンネル氏
事例紹介とディスカッション1
サステナビリティとビジネスの一体化

その後「アストラゼネカやブリヂストン、エリクソン・ジャパン、ボルボ・カー・ジャパンがそれぞれ自社の先進的な取り組みについてプレゼンテーション。続くパネルディスカッションでは、アストラゼネカのジェイソン・スネイプ氏、ブリヂストンの稲継明宏氏、エリクソン・ジャパンの野崎哲氏、日立エナジーのパー・ミラム氏、ボルボ・カー・ジャパンのマーティン・パーソン氏が語り合った。

左からモデレーターを務めたSB Japan Labの山吹 善彦上席研究員、ブリヂストンの稲継氏、エリクソン・ジャパンの野崎氏、日立エナジーのミラム氏、ボルボ・カー・ジャパンのパーソン氏
左からモデレーターを務めたSB Japan Labの山吹 善彦上席研究員、ブリヂストンの稲継氏、エリクソン・ジャパンの野崎氏、日立エナジーのミラム氏、ボルボ・カー・ジャパンのパーソン氏

――積極的にサステナビリティとビジネスを一体化しようとしているのは、なぜですか。

パーソン氏(ボルボ・カー・ジャパン) モビリティ業界のサステナビリティについてボルボ・カーとしては、電気自動車(EV)へのシフトが最も本質的なソリューションだと考えています。日本は非常に特異な市場ですが、私の経験では、ヨーロッパで起こっていることが、2年ぐらい経つと日本でも起こる。つまり、日本でも生活者のEVに対する意識変容や充電インフラの充実に対応していかなければならないと思っています。

スネイプ氏(アストラゼネカ) 地球の健康と人の健康はリンクしていると考えています。ですから、サステナブルな環境活動が投資家からも社員やビジネスパートナーからも期待されているのです。医薬品業界で見ると、グローバルでのCO₂排出量の4%がヘルスケア分野から出ています。ですから、我々としても最善の努力をしていかなければなりません。病気を予防することで人の健康が保たれ、環境負荷も下げることができます。また、原材料のリサイクルや、エネルギー・水の節減についても努力しています。そうすることで、最終的には財政コストを減らすことにもつながると考えています。

稲継氏(ブリヂストン) 「nice to do」だったサステナビリティが、どんどん「must to do」になっているなかで、いかに速く動いてビジネスにつなげていくのかが、非常に重要だと考えています。自動車産業がEVにシフトしていくと、バッテリーの重量で車体が重たくなるため、それを支えるタイヤが必要になってきます。また、走行距離をいかに伸ばしていくのかも重要になります。自動車業界におけるサステナブルなものづくりを、サプライチェーンの一員としてどう実現するか。ビジネス機会にもなるし、競争にもつながります。ですので、サステナビリティをビジネス戦略と統合する必要があるととらえています。

――とはいえ1社では限界があります。どのようにパートナーシップを組んでいこうと考えていますか。

野崎氏(エリクソン・ジャパン) 政府機関の方々に要望したいことが三つあります。一つは、コネクティビティ(機器同士の相互接続性)を世界で広くあまねく実現して、デジタルテクノロジーをもっと活用できるような政策の枠組みを作ってほしいということ。二つめは、枠組みができても人材が足りないと困るので、デジタルリテラシーを向上させる教育プログラムを実行してほしい。三つめが、まさに今日のこういった場のように、より多くの企業や産業界と対話して協力していくということ。それらが非常に重要だと思っています。

ミラム氏(日立エナジー) 日本は海外に比べると、何かの判断に時間がかかりがちです。ぜひ勇気を持って、前に進んでほしい、判断をしてほしい。そうしないと日本が(世界の潮流に)乗り遅れてしまうのではないかと心配しています。そのためには啓発が大事ですし、オープンに話をしていくことだと思います。

事例紹介とディスカッション2
循環型社会への転換を

パートⅡのテーマは、「循環型経済と持続可能な新しいビジネスモデルのための提携」。サントリーホールディングスの福本ともみ氏、日本環境設計の岩元美智彦氏、日本テトラパックの大森悠子氏がそれぞれのビジネスモデルを解説した後、岩元氏、大森氏に環境省の中井徳太郎事務次官を交えての議論となった。

環境省の中井徳太郎事務次官
環境省の中井徳太郎事務次官

――中井事務次官からまず全体的なお話をいただきたい。

中井氏(環境省) 2030年までの10年間、特にこれからの5年間は、人類の生存ができるかどうかの運命的な期間だと思います。産業革命以降、化石燃料・地下資源を、地球という一つの生命体に負荷をかける形で地上化し、運び、燃やし、大量生産・大量消費・大量廃棄してきました。便利さを求めて石油からプラスチックをつくり、捨てる。都市化という形で、人間でいうと肺にあたる機能を持つ熱帯雨林を棄損し、生態系の機能を損ねる。そのしっぺ返しとして、異常気象が起こり、海洋プラスチック問題が起こり、今回のパンデミックでも都市部への人口集中というリスクが顕在化しています。全て根っこは一つだと思っています。

人類が向かう健康体としての地球、地域、経済、社会のあり方――このイメージを環境省では「地域循環共生圏」と呼んでいます。脱炭素社会であり、サーキュラーエコノミーであり、分散型の自然共生社会です。

では、現状をどうするか。従来は家電、容器・包装、建設廃材など、個別のものに着目して、循環させる法体系をつくってきました。ですが今回、プラスチックについては横断的に網をかける「プラスチック資源循環促進法」を国会で成立させましたので、来年から動かしていきます。設計段階から「ごみを出さない」、あるいは「部品として交換しやすい」といった上流からの発想転換をはかり、経済の仕組みを変えていきます。これは本当に大きな一歩だと思っています。

左からモデレーターの山吹氏、日本環境設計の岩元氏、日本テトラパックの大森氏、環境省の中井事務次官
左からモデレーターの山吹氏、日本環境設計の岩元氏、日本テトラパックの大森氏、環境省の中井事務次官

――循環型社会についての展望を伺いたい。

岩元氏(日本環境設計) リサイクルのキーワードは、我々が取り組んでいるケミカル技術(物質を半永久的にリサイクルできる技術)と、消費者の行動です。業界の枠を越えて連携し、バラバラにリサイクルするのではなく、一つのリサイクルボックスで回収していくことが大切です。効率がよくなりますから。技術革新と消費者の行動変容ができると、すごく素敵な社会、地球環境ができるのではないかなと思います。

大森氏(日本テトラパック) テトラパックの紙容器は、プラスチック容器から変えるということで、いろいろな業界から引き合いが来ています。使った後は必ず回収拠点に持って行っていただき、確実にリサイクルされるよう流れを強化していきたいと思っています。

※当日の採録から編集・再構成しています。

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