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若者の声を政策と企業経営に生かせ ビジネスパーソンのためのSDGs講座【15】

若者の声を政策と企業経営に生かせ ビジネスパーソンのためのSDGs講座【15】
横田アソシエイツ代表取締役/横田浩一

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横田浩一(よこた・こういち)
慶応義塾大大学院特任教授。一般社団法人アンカー代表理事。企業のブランディング、マーケティング、SDGsなどのコンサルタントを務め、地方創生や高校のSDGs教育にも携わる。岩手県釜石市地方創生アドバイザー、セブン銀行SDGsアドバイザー。共著に「SDGsの本質」「ソーシャルインパクト」など多数。

学校でSDGsの教育を受けた「SDGsネイティブ世代」が社会に出る日も近い。彼らの意見や価値観を、政策や企業経営に生かそうという動きも始まっている。新学習指導要領が2022年度から高校で導入されるのに先駆け、すでにSDGs教育を受けている高校生を対象にアンケート調査を実施し、社会課題に対してどのような意識を持ち、どう行動しているのかを探った。

SDGsの認知率は99%

「持続可能な社会の創り手の育成」が明記された新学習指導要領は、2020年度に小学校、21年度に中学で導入された。来年度は高校で導入される。

導入に先行して、総合的な学習の時間などでSDGsを学び始めている高校がある。筆者が代表理事を務める一般社団法人アンカーがSDGs教育に関わっている、駒場学園(東京)や姫路女学院(兵庫)などだ。

アンカーでは、21年10月、両校を中心に高校生を対象にしたアンケートを実施(回答数863)。SDGs教育を受けた世代がどのような意識を持っているかを探った。

アンケート結果を見ると、SDGsを「良く理解し行動している」が15%、「理解している」78%。「名前だけは知っている」6%を合わせ、認知率は99%だった。

「SDGsや社会課題に関して関心がある」かどうか聞いたところ、「大いにある」(19%)、「少しある」(58%)を合わせて77%の生徒が関心を持っていた。

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関心を持つきっかけは学校の授業

SDGsに興味を持つきっかけを聞いたところ、ほとんどが学校の授業で、総合的な学習や探究学習の時間と答える生徒が多かった。また少数ではあるが、親の影響や、小学校の時に参加した環境イベント、ガールスカウト活動、ボランティア活動を通じてといった答えもあった。

関心のあるテーマは、「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「住み続けられるまちづくりを」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」「働きがいも経済成長も」など幅広い。

日ごろ行っているSDGsに関連する活動についても聞いた。自分自身や家族で、脱プラスチックを心がけ、ゴミを出さない、食べ残しをしない、フェアトレードのものを購入する、などを意識しているという回答があった。また、保育ボランティア、有志によるSDGs活動への参加も挙がった。

大人や企業に憤る高校生たち

調査結果で目を引いたのは、「企業や社会人はもっと積極的に社会や環境の課題に取り組むべきだ」という問いに対し、「そう思う」「ややそう思う」を合わせて90%の高校生がそう思っていることだ。

筆者も教育現場において「なぜ大人は動かないのか」「なぜ企業はもっと真剣に取り組まないのか」と強い憤りを持って発言する高校生にしばしば遭遇する。見て見ぬふりをする大人や行動しない企業、社会に対して怒りを感じる生徒がいる。グレタ・トゥンベリさんのように、政府や企業の取り組みは遅い、あるいは行動していないと感じているようだ。

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8割が「環境に良い商品を選ぶ」

購買行動への影響はどうか。「同じ値段であれば社会や環境に良い商品、サービスを選ぶ」かどうか聞くと、「いつもそうしている」と「ときどきそうしている」を合わせて81%だった。

「家族に対して社会や環境に良い商品、サービスを選ぶようすすめる」という問いには、「いつもそうしている」「ときどきそうしている」の合計が43%となった。

こうした反応を見ると、若い世代の考え方や行動は、企業のマーケティングにも影響を与えるのは必至だ。

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ユニクロ、トヨタ、スターバックス……


「SDGsに積極的に取り組んでいる企業」で思い浮かぶ会社を自由回答で聞いたところ、ユニクロ、トヨタ自動車、スターバックスコーヒーの名前が比較的多く挙がった。

理由としては、ユニクロは古着の回収の取り組み、トヨタ自動車は水素自動車などの取り組み、スターバックスは紙ストローなど脱プラスチックの取り組みを挙げる生徒が多かった。

また、チョコレートのフェアトレードの理由から明治、SDGsのキャンペーンを行うことからテレビ局、SDGsトレインを走らせていることから鉄道会社、フードバンクや子ども食堂などに取り組む地域のNPOを挙げる生徒もいた。その他に上挙がった名前は、ユーグレナ、無印良品、味の素などだ。

SDGsを学ぶことが、将来の職業選択に影響するかどうかを見るため、「SDGsに積極的に取り組む企業に就職したい、社会貢献性の高い職業に就きたい」かどうかも聞いた。その結果は、「そう思う」「ややそう思う」を合わせて55%となった。筆者の周囲の大学生でも、社会貢献性の高い仕事に就きたいという意向は女子学生を中心に高い。

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若者の意見を政策や企業経営に生かす

このような若者の意見を政策立案や企業経営に生かそうという動きは、官民ともに広がっている。
「日本ユネスコ国内委員会」(注)事務局では、日本のユネスコ(国際連合教育科学文化機関)加盟70周年を機に、若者の声を今後の活動に反映するため、ユース世代による「次世代ユネスコ国内委員会」を立ち上げた。30歳未満の20人が参加し活動を開始している。

委員会メンバーの小林真緒子さん(津田塾大学総合政策学部2年)は「もともと、SDGsをテーマとした探究学習の実施に取り組んでおり、その経験をユネスコのESD(持続可能な開発のための教育)推進に役立てたいと思ったことが応募のきっかけです。来年3月には、日本ユネスコ国内委員会へ提言を行います。私たちユースが感じている課題や疑問を真っすぐに伝えられるよう、責任を持って取り組んでいきたいと思います」と話している。

(注)「ユネスコ活動に関する法律」に基づき、わが国がユネスコの目的を実現するために行う活動に関して、助言、企画、連絡および調査を実施し、基本方針の策定なども行う。

セブン銀行、社員と大学生でワークショップ

セブン銀行は21年10月、社員の社会貢献に対する意識や意見を引き出すために、社員とSDGs活動を行う大学生のワークショップを実施した。

参加した大学生は、アンカーでインターンをしている慶應義塾大学などの学生。日ごろから、中高生にSDGsをテーマにした探究学習を指導するなど社会課題に詳しい学生だ。

ワークショップで取り上げたテーマは、LGBT、ダイバーシティー&インクルージョン、子どもの貧困、地方創生、外国人との共生など。学生が話題を提供し、社員は思ったことを自由に話し合う。

延べ約50人の社員が参加した。参加者からは、「将来子ども食堂をやれたらなと思い参加した」「ボランティアをしたいがどうすればよいかわからなかった」「大学生と話すことはないので、彼らが何を考えているかが興味深かった」「ほかのセクションの社員と社会貢献をテーマに話ができたことはよかった」などの意見が出た。

自らもワークショップに参加した舟竹泰昭社長は「大学生の社会課題に対する問題意識が高いことが分かった。また、社会貢献に大変関心がある社員が多くいたことを知ることができた。今後弊社のサステイナビリティーへの取り組みや社会貢献活動を進めていく上で大変参考になった」と話した。

また、参加した慶應義塾大学環境情報学部2年の安宅佑亮さんは「人口1万3千人の石川県珠洲市出身者として、地方創生に興味をもってもらってよかった」、同1年の中島幸乃さんは「LGBTについて世代間による価値観の差を肌で感じた。課題を理解してもらったようでうれしかった」と参加した感想を述べた。

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セブン銀行が実施した社員と大学生とのワークショップ。舟竹泰昭社長(左から2人目)も参加(撮影・筆者)

丸井グループは、将来世代ならではの新たな視点や価値観に基づいた提言をしてもらうために、弁護士など有識者のメンバーに加え、渡辺創太さん(26)ら若者2人をアドバイザーに新しく迎えた。未来志向の経営体制を強化し、さらなる企業価値向上につなげることを目指している。

組織外の意見を企業活動に生かす

外部環境を変えることで課題の解決を図ることを「アウトサイド・イン」(アウトは社会、インは企業や組織を意味する)と呼ぶ。組織外からの意見を取り入れていくことは大切で、中でも、SDGsネイティブ世代の意見を聞き、行政や企業の活動に生かしていくことは重要だ。

国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、SDGsの17目標を列挙するにあたって次の言葉で結んでいる。

「人類と地球の未来は我々の手の中にある。そしてまた、それは未来の世代にたいまつを受け渡す今日の若い世代の手の中にもある」(パラグラフ53)

SDGsの目的はひとことで言えば、良い社会や環境を将来世代に引き継いでいくことだ。それを受け取る将来世代の意見を聞き、価値観を共有しながら、行政や企業はSDGsを実行していくべきだ。

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