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「気候変動」「生物多様性」新たな視点で【全国高校生探究SDGsサミット】

「気候変動」「生物多様性」新たな視点で【全国高校生探究SDGsサミット】
成蹊大学の小森理准教授(左)と財城真寿美教授
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大学での学びは社会の課題解決にどうつながるのか。11月21日に朝日新聞社(総合プロデュース本部)がオンラインで開催した「全国高校生探究SDGsサミット――地域課題からキャリアを考えよう――」(朝日新聞総合プロデュース本部主催)の中から、成蹊大学のプログラムを紹介します。経済学部の財城真寿美(ざいき・ますみ)教授は「気候変動で読み解く日本史」、理工学部の小森理(こもり・おさむ)准教授は「ビッグデータを用いた生物多様性の可視化」と題して、参加した約70人の高校生に授業をしました。

全国高校生探究SDGsサミットとは

高校生が日ごろの探究学習を通じて抱いた興味や関心をさらに深め、将来の進路選びなどに生かしてもらおうと開催した。5大学の研究者らが参加し、エネルギー問題や生物多様性などSDGsに関わるテーマで計5コマの授業を展開したほか、現役大学生や大学院生による座談会など3コマの授業外講義を実施した。

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●財城真寿美・経済学部教授

ざいき・ますみ
2004年東京都立大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は気候学、自然地理学。古文書や古い気象観測記録を世界各地で収集し、「小氷期」と呼ばれる江戸時代の寒冷な気候の特徴や要因を研究している。

「気候変動で読み解く日本史」

温度計や気圧計が発明されたのは今から約400年前のヨーロッパです。日本では1768年に平賀源内が「寒熱昇降器」と呼ばれる温度計を作ったという史料がありますが、19世紀以前の日本の気象に関する情報はとても限られていました。気象測器がなかった当時の気候を、私たちはどうすれば知ることができるでしょうか。

そんなとき役に立つのが、当時の気候の特徴が間接的に記されている書物などの代替指標です。古文書もそのひとつ。特に古日記には日々の天気の様子が記されています。これを読み取り、天気のデータとして蓄積し処理します。たとえばA年の6~8月は雨の日が多く、B年は少なければ、A年は冷夏傾向、B年は暑かったと想像できます。

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財城教授の資料から

実際、気象庁のデータで7月の東京の降雨日数と月平均気温の関係をみると、降水日数が増えると月平均気温が下がるという相関関係があり、降雨の日数から月平均気温が推定できます。1720年代から残る東京・八王子の日記から読み取った降雨日数を式に当てはめて、江戸時代における東京の7月平均気温を推定してみました。その結果、最新の平年値25.7℃に対し、19世紀はやや涼しい24.7℃、18世紀はさらに低い23.7℃でした。

低温期と重なる「大飢饉」

18~19世紀には、何度か顕著な低温期と高温期があったこともわかってきました。これらの低温期は日本史に登場する大飢饉(ききん)の発生と重なります。1730~40年代の低温期には享保の大飢饉、1780年代には天明の大飢饉、1830年代には天保の大飢饉が起きています。飢饉は必ずしも寒冷な気候によって起きるわけではありませんが、不順な気候で農作物の収穫が減ることは想像しやすいのではないでしょうか。

14世紀半ばから19世紀半ばごろまでは、世界的にも寒冷な気候が頻繁にみられる小氷期と呼ばれる時期であったことがわかっています。火山噴火が頻発したり、太陽活動が弱かったことなどが要因であると言われています。

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財城教授の資料から

東京の日平均気温はこの100年で2.47℃上昇し、地球全体の上昇率0.74℃よりかなり急激です。主因は、都市化によるヒートアイランド現象です。緑地面積の減少、車やエアコンなど人工排熱の増大などが影響していると考えられています。

現在、気候変動は単なる気候の揺らぎではなく、我々にさまざまな危機をもたらすようになってきました。過去や現在起きていることを調べ、そこから得られた知見を生かし、地球や私たちが住む地域のこれからについて新たな知識や意見を膨らませてほしいと思います。

●小森理・理工学部准教授

こもり・おさむ
慶応義塾大学大学院基礎理工学専攻数理科学専修修了。統計数理研究所特任研究員・助教、福井大学電気電子工学科講師を経て現職。主に生物統計、医療統計の分野で、データサイエンスを応用して社会貢献できるような研究を続けている。

ビッグデータを用いた生物多様性の可視化

生物多様性条約は、生物多様性を種内、種間、生態系の三つから定義しています。種というのは生物の一番細かい区分けと思ってください。種数の多さだけでなく、それらが均等に分布しているほど、そして遺伝的距離が遠い生物が交じっているほど、生物多様性が高いと言えます。

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小森准教授の資料から

そうした種の個体数群をもとに世界自然保護基金(WWF)が算出した「生きている地球指数」をみると、1970年代以降、生物多様性は減少傾向をたどっています。森林伐採、外来種による在来種の減少や絶滅、生活スタイルが変わったことによる里山の変化、地球温暖化に伴う砂漠化や海水面上昇などが原因と考えられます。生物多様性を維持するために大切なのは、自然や生きものにふれる、そのすばらしさを感じて写真や絵、文章で伝えるなど、身近なところから活動を始めることだと思います。

データサイエンスは「調理」

生物多様性の現状について、今まで見えていなかったものを見えるよう可視化するのに便利なのが多種多様なビッグデータです。そのときにデータサイエンスという新たな学問分野の手法を使います。データは食材、と思ってください。そのままではまだ食べられませんが、切って煮たりするとおいしくなる。データを調理し価値あるものに加工するのがデータサイエンスという学問なのです。

調理には道具が必要ですが、その一つに「R」と呼ばれる統計解析ソフトがあります。今日はこれを動かして、簡単なデモンストレーションをしてみましょう。地図データをダウンロードして所定のコマンドを実行すると、市区町村ごとに人口で色分けした東京の地図が現れ、山手線沿線に人口が集中しドーナツ型になっていることがわかります。

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小森准教授の資料から

生物多様性についても、地点ごとの生息確率を、気温や湿度、降水量などのデータから推定して可視化する取り組みが始まっています。私も参加して進行中の「日本の生物多様性地図化プロジェクト」では、絶滅危惧種の分布や保全すべき地域などの可視化を目指しています。日本のデータだけでも膨大ですが、地球規模で考えれば、ビッグデータの管理維持、それを解析するデータサイエンスの重要性がわかるでしょう。データの観点から生物多様性に興味を持ち、SDGsに取り組むのも一つの方法であると思います。

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