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足立区の小学生限定「うんこSDGsドリル」 《魔法の言葉》で楽しく学ぶSDGs

足立区の小学生限定「うんこSDGsドリル」 《魔法の言葉》で楽しく学ぶSDGs

東京・足立区の小学生しか持っていない「うんこSDGsドリル」があるらしい――。そんなうわさを聞きつけ、学習教材「うんこドリル」シリーズを手がける文響社(東京)を訪ねた。2020年度から始まった小学校の新学習指導要領では、「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられ、学校現場でSDGsをとりいれる動きが広がっている。とっつきにくいSDGsを子どもたちが楽しく学び、自分ごととしてとらえるための工夫を、文響社の「うんこアンバサダー」に解説してもらった。(編集部・竹山栄太郎)

「うんこウミガメ」の涙

「うんこドリル」はうんこをモチーフにした学習教材。《先生がうんこのお手【ほん】を見せてくれた》など、すべての例文に「うんこ」を用いた「うんこ漢字ドリル」が2017年に発売され、爆発的なヒットとなった。その後、算数、英語、さらにはプログラミングと教科を広げ、フィンランド語やイタリア語、韓国語、フランス語のものも出版されている。シリーズは150種類以上、累計部数は約950万部にのぼり、自治体や企業とコラボレーションした非売品も累計130万部発行されている。

うんこSDGsドリルの冊子は2万7000部制作され、2021年9月から足立区の全69小学校に配られた。足立区によると、1万6000部が1~3年生の手に渡り、来年以降の新1年生にも配る予定だという。小学校では総合学習の授業でSDGsを学ぶのに使ったり、家庭での教材にしたりしているという。足立区のウェブサイトでも公開されている。

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気になる中身を見てみよう。今回は「環境編」で、表紙も入れて20ページ。おなじみのキャラクター「うんこ先生」と「うんこねこ」が空から地球をながめていて、「なんだかみんなの様子がおかしい」と気づく場面から始まる。


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うんこドリルでおなじみの「うんこ先生」と「うんこねこ」

続いて、環境に関連した五つの問題が出される。「もんだい」は2択のクイズ形式で、一方の選択肢に「うんこ」が出てくる。たとえばこんな内容だ。

【もんだい1】
見て! あそこにうんこウミガメがいるよ! でも具合がわるくてごはんも食べられないみたい… どうしたんだろう?
A ごみを食べてしまった
B うんこが止まらなくなった
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涙を流す「うんこウミガメ」が、海洋プラスチックごみの問題を訴える
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「教え」のページでは、クイズの答えと環境問題の現状が解説される。そしてSDGsの目標のアイコンとともに、「今日からできること」として子どもたちが取り組める身近なアクションも紹介されている。

たとえばうんこウミガメの問題なら、「ウミガメの2頭に1頭、海鳥の10羽に9羽がまちがえて海のプラスチックごみを食べてしまっているのじゃ」と説明。目標14の「海の豊かさを守ろう」のアイコンを掲げ、「ペットボトルをへらすために、すいとうを持ち歩こう」「おちているごみをひろってみよう」と呼びかけている。

また、ドリルのなかでは足立区が21年3月に発表した「二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」や、SDGsの意味、17ある目標それぞれについて「みんなができること」も紹介されている。

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SDGsの意味を説明するページ

難しいテーマ、「魔法の言葉」で身近に

足立区は、環境やLGBT支援などSDGsに関連する取り組みに力を入れている。文響社との「コラボ」は今回が第2弾。21年3月に区内の商業施設でSDGsの問題を解く「うんこSDGsクイズラリー」を開いたところ好評だったため、ドリルの制作につながったという。足立区の担当者は「SDGsは難しい印象があるが、小学生に圧倒的な認知度があるうんこ先生とコラボすることで、楽しみながら学べると考えました」と話す。ドリルの内容や表現は両者で詰め、最終的には区長のチェックも受けて発行した。

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「うんこたぬき」たちの前に置かれた茶色い水が入ったコップは、きれいな水を飲めない人たちがいることを示している
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文響社うんこ事業部のうんこアンバサダー、石川文枝さんは「SDGsや環境問題はお子さんにとって遠いものに感じられがちだと思い、ドリルではできるだけ身近なテーマで、『かわいそうなことになっているな』と共感してもらえるように心がけました」と解説する。

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文響社の石川文枝さん=東京都港区

自治体や企業とのコラボには、農機具メーカーのヤンマーと制作した「うんこ 食とエネルギードリル」のほか、交通安全ドリルや防災ドリルの例もあるが、石川さんは「SDGsは題材としてこれまででいちばん難しかったかもしれない」と明かす。「どこを切り取って、どんな順序で伝えていけばお子さんにSDGsの概念がちゃんと伝わり、行動変容につなげられるかが難しいポイントだった」(石川さん)。

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自治体や企業とコラボしたうんこドリル

制作の過程では、ウミガメが苦しんでいる様子がより伝わるようにイラストの涙のサイズを大きくするなど細かい工夫をこらしたほか、「今日からできること」の項目は本当に子どもが実行できるものかを議論したという。

石川さんは「うんこは、子どもたちにとっては『魔法の言葉』。最後まで楽しく読み、生きていくうえで役立つ知識を身に付けてほしい」と話す。文響社では今後、全国の自治体向けのうんこSDGsドリルを制作することも検討していくという。「SDGsには人権、教育、ジェンダーといろいろな分野があり、どこまでうんこで表現できるかが悩みどころですけど……」(石川さん)

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