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食品ロス削減推進法の見直しを 海外に学ぶ三つの提案

食品ロス削減推進法の見直しを 海外に学ぶ三つの提案
食品ロス問題ジャーナリスト/井出留美

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井出留美(いで・るみ)
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学)、修士(農学)。ライオン、青年海外協力隊、日本ケロッグ広報室長などを経る。東日本大震災で支援食料の廃棄に衝撃を受け、自身の誕生日でもある日付を冠した(株)office3.11設立。第2回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門、Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018、令和2年度 食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。近著に『食料危機』『捨てられる食べものたち』など多数。

メタンガス削減へ新法 米カリフォルニア州

2019年に「食品ロス削減推進法」が施行されてから2年が経った。さまざまなメディアから「法律ができたことで何か変わったのか?」と聞かれることが多い。海外の法律と比較しながら改めて説明しておきたい。

2022年1月、米国のカリフォルニア州で食品廃棄物(生ごみ)のリサイクルを義務化する新しい法律が施行される。同州の住民は家庭ごみと生ごみを分別して出し、各自治体は回収した生ごみを堆肥(たいひ)やバイオガスにリサイクルする。また、同州の小売業者は1月から、ホテル・飲食店・病院・学校・大規模イベント会場などでは2024年から、余剰食品を廃棄せずにフードバンクなどへ寄付することが義務となる。

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これは、生ごみの埋め立て地から発生する、二酸化炭素の25倍の温室効果を持つメタンガスを削減するための措置だ。気候変動の影響で山火事が頻発している同州にとって、食品ロスと温室効果ガスの削減は急務となっている。これまでより手間はかかるが、日々の暮らしを持続可能なものにしていくためには、やむをえない選択なのだろう。

民主国家では、法律は何かを制限するかもしれないが、根本的には民意を反映したもののはずだ。しかし、そのことを実感している日本人はどのくらいいるのだろう。

弁当ロス30万食の東京オリ・パラ

筆者は、2016年に参議院議員の竹谷とし子さんに声をかけていただいたことが縁となり、2019年10月に施行された「食品ロス削減推進法」の成立にかかわることができた。自分の提言したことのすべてが反映された法律とはいかなかったが、何かを成し遂げた感じはした。その法律が施行されてもう2年以上経つ。この間、何が変わっただろうか。

たとえば恵方巻き。恵方巻きの廃棄量は施行の前後で明らかに変わった。施行前の2019年の節分、ある百貨店の地下食品売り場には、閉店5分前だというのに大量の恵方巻きが売れ残っていた。それが、施行後の2020年には売れ残りの量がぐんと減り、2021年にはコロナ下での時短営業ということもあるが、ほとんどの店舗で夕方早い時間帯に完売していた。メディアの注目を集めたことや予約注文が普及したこともあるだろうが、法律の影響の大きさを実感させられた。

しかし、その一方で何も変わっていないと思うこともある。たとえば2021年7~8月に開催された、東京オリンピック中に大量の弁当が処分された件。全42会場のうち20会場で、13万食(1億1600万円相当)の弁当が食べられることなく、こっそり処分されていたのだ。

「食品ロス削減」や「持続可能性に配慮した食材の調達」を達成するため、2018年の女子バレーボール世界選手権と2019年のラグビーW杯で実証実験を行うなど、周到な準備をしてのぞんだ持続可能なオリンピックのはずだったのに、である。

五輪・パラリンピック大会組織委員会は12月22日の理事会で、大会を通じての弁当のロスは30万食で提供数の19%だったことを公表したが、選手村のビュッフェはどうだったのかなど、全体像はいまだに明らかになっていない。

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弁当大量廃棄の問題を報じるテレビニュース(YouTube TBS NEWSから)

組織委は廃棄した弁当のうち75%は飼料やバイオガスに使ったとしているが、環境配慮の原則「3R(スリーアール)」を理解していなかったのではないか。まず優先すべきは「Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)」。つまり、弁当の数を人数に合わせること。それでも余ったら「Reuse(リユース:再利用)」で、必要とする人に食べていただく。最後が「Recycle(リサイクル:再資源化)」である。

コロナ下で無観客開催となったためボランティアの人数が減り、無駄になるとわかっていながら、業者に当初の計画通りに弁当を用意させ、十分に食べられる弁当を直接リサイクルにまわしたのは、エネルギーとコストの無駄遣いの最たるものではないか。

海外は罰則・罰金や免責、税制優遇

このようなことが起こるのは、食品ロス削減推進法に罰則がないからかもしれない。現行のままでは、どれほどたくさんの食品を廃棄したとしても、事業者にはその量を公開する義務はない。

海外ではどうなのだろう?

▷フランス

2016年に世界初となる食品ロス削減に関する法律をつくった。400㎡以上のスーパーに対し、売れ残った食品を廃棄せず、フードバンクや慈善団体へ寄付するか、飼料や堆肥にすることを義務づけた。違反すると3750ユーロ(約46万円)の罰金が科せられる。この法の施行後、食品寄付が15%以上増えた。慈善団体による食事の配給数も大幅に増えた。

▷イタリア

フランスにつづき2016年に食品ロスを削減させるための法律を成立させた。フランスは罰則を設けたが、イタリアでは事業者の廃棄量削減に対して税制優遇で応える報酬型の法律にした。この法律により、食品寄付が20%以上増加し、一人当たりの食品廃棄物量も、施行前(95kg)から施行後(65kg)には30kgも削減できた。

▷米国

米国では1996年に食品の寄付を促すため「善きサマリア人(びと)の法」が施行された。これは、故意や重過失のない限り、善意による余剰食品の寄付者が、その食品がもとで発生した食中毒などの被害について、民事や刑事上の法的責任を問われないというものだ。余剰食品の寄付者には税制優遇もある。日本にはこの免責制度がなく、特に食品企業は「もし食品事故が起きて自分の組織が責任を問われたら」とリスクを考え、余剰食品の寄付に二の足を踏む傾向がある。

さらに米国では、2021年11月に「食品寄付改善法案」が議会に提出された。これは飲食店や小売店などが、フードバンクのような非営利団体を通さず、困窮者に直接食品を寄付するときの法的障害を取り除くことを目的としている。すでに他国の見本になるような法律が整備されていても、運用上で問題があるのなら改善しようとするのが米国流だ。他にも2021年には食品ロスを大幅に削減した事業者に助成金を支給しようという「食品ロスゼロ法案」が提出されている。

art_00233_本文3_米国法案

▷中国

中国では2021年4月に「反食品浪費法」が施行された。違反すると飲食店や国民に罰金を科す厳しいものである。たとえば飲食店には、食べ切れないほどの料理を注文して食べ残した客に対し廃棄料金を請求できる権利があり、逆に利用客に食べ切れない量の料理を注文させた飲食店には最高1万元(約15万円)の罰金が科せられる。「大食い動画」を配信した者は、10万元(約155万円)以下の罰金だ。

日本も法改正の検討を

日本の「食品ロス削減推進法」も、そろそろ見直しが必要かもしれない。中国のように罰則でがんじがらめにするのはどうかと思うが、機能していないところがあるのなら改正すればいい。

筆者から「食品ロス削減推進法」改正時に提案したいのは次の3点である。

1. リデュース:排出者責任をより明確にし、事業者に廃棄量の公開を義務づける
2. リユース:フードバンク活動を活性化させるため「善きサマリア人(びと)の法」の免責制度、寄付者への税制優遇を導入
3. リサイクル:食品廃棄物(生ごみ)は水分が80%を占め燃えにくいのに、各自治体が「燃えるごみ」として、巨額の費用をかけて焼却施設で燃やし、気候変動の原因となる二酸化炭素を排出している。実質ゼロのためにも、動物の飼料、堆肥やバイオ燃料などへのリサイクルを義務づける

関連府省庁には、ぜひご検討いただきたい。

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