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SDGsと「死」の関係 データで見るSDGs【12】

SDGsと「死」の関係 データで見るSDGs【12】
日本総合研究所シニアスペシャリスト/村上 芽

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村上 芽(むらかみ・めぐむ)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト。金融機関勤務を経て2003年、日本総研に入社。専門・研究分野はSDGs、企業のESG評価、環境と金融など。サステイナビリティー人材の育成や子どもの参加に力を入れている。『少子化する世界』、『SDGs入門』(共著)、『図解SDGs入門』など著書多数。

ターゲットや指標にある「死」

2022年も新型コロナウイルス感染症への不安から明けきれないまま始まりました。新年最初のテーマが「死」とはなにごとか、と思われるかもしれませんが、生死の営みの繰り返しこそがサステイナビリティー(持続可能性)の根っこです。SDGsのなかで、どのように「死」が登場しているかを見てみましょう。

17の目標の中に「死」という文字は出てきません。しかし、その下に設けられている169のターゲットや、ターゲットに紐(ひも)づけられている指標から拾い上げてみると、下表のようにいくつもの「死」が登場します。

表:SDGsにおける死
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出所:筆者作成

こうして並べてみるとわかるように、SDGsが重視する死は、(何らかの「不幸な」事情による死であり、)いずれの比率も「小さくなることが望ましい」タイプの死です。

感染症については、ターゲット3.3が「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに、肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」とあり、死亡率を云々(うんぬん)する以前に、まずはそれぞれの「感染者数」を指標とするよう示しています。

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ブルキナファソの病院でマラリアに感染し、ベッドに横たわる女児(撮影・朝日新聞)

本コラムでもたびたび引用している持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)では、感染症について「人口10万人当たりの結核患者数」「非感染者1000人当たりの新規HIV(エイズの原因となるウイルス)感染者数」に絞って収集しています。

2021年版の報告書を見ると、新規HIV感染者が世界で最も多かったのはレソトで6.43。次いでエスワティニ、ボツワナ、モザンビーク、赤道ギニアと、いずれもアフリカ大陸にある諸国が4を超していました。エイズを根絶するためには、これらの数字も「0」にすることが望ましいことになります。

新型コロナの患者数、死者数は

新型コロナウイルス感染症に関する国際的な最新情報については、WHO(世界保健機関)やジョンズ・ホプキンス大学のデータを参照することが多いです。ここでは、直近の情報ではなく、一定の期間でまとめた報告書として、OECD(経済協力開発機構)が2年おきに発表する「Health at a Glance」の2021年版を取り上げます。

2020年1月から2021年10月初旬まで約22か月間、人口10万人当たりでの患者発生状況を44カ国で比較すると、上位5カ国はチェコ、イスラエル、スロバキア、スロベニア、アメリカとなっています。日本は、少ないほうから5番目でした。

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また、同じ期間の100万人当たり死亡者数(疑いを含む)では、ハンガリー、チェコ、ブラジル、コロンビア、スロベニアの順となりました。

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平均寿命については、対象国が減りますが、2010年、2019年、2020年を比較しています。2019年(▲印)と2020年(棒グラフ)を比較してみると、▲が棒の上に飛び出している、つまり、1年前と比較して平均寿命が下がってしまった国が目立ちます。

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2025年の大阪・関西万博に向けて

ではSDGsで指標として扱われている死に関するデータはどうなっているでしょう。

表:SDGsにおける死に関するデータ
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出所:SDSNのSDR Database2021をもとに筆者作成

そもそもSDSNが収集していないものもありますし、収集していても途上国を含めた最新データとなると2017年や2018年までしかないものが目立ちます。こうした指標に新型コロナウイルス感染症の影響がどのように及んでいるかは、残念ながら当分わからないと思われます。

ところで、2025年に開催予定の大阪・関西万博では、「いのち輝く」がテーマとなっています。そのころには、期限とされる2030年にSDGsが達成できそうかどうかを視野に入れつつ、2031年以降の持続可能な開発についての議論が高まっていると想像できます。

その際に、日本から発信してみては、と思うことがあります。現在のSDGsが想定するような死だけではなく、いかに豊かに死を迎えられるのか、という観点です。世界的に人口の高齢化が進むなか、いのちを輝かせ、結果的に平らかに死を迎えられた人たちの存在をどう持続可能な社会と関連づけるのか。そんな指標のあり方も、議論の俎上(そじょう)にのせてよいのではないでしょうか。

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