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カーボンニュートラル 自動車部品メーカーも対応前倒し

カーボンニュートラル 自動車部品メーカーも対応前倒し
COP26の会場で開かれた自動車の脱炭素を考えるイベント=2021年11月10日、英グラスゴー(撮影・朝日新聞)

自動車部品メーカーが相次いで、二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の強化に乗り出している。各国政府が「2050年までに実質ゼロ」の目標を掲げたことで、より具体的なビジョンが求められ出した。納入先の自動車メーカー、そして投資家に選ばれるため、各社は対応を急ぐ。(編集部・吉田拓史)

アイシン 3800億円を投資

モーターや減速機などを組み合わせた駆動システムが主力のアイシン(愛知県)は2021年11月、ESG(環境・社会・企業統治)への取り組みについて、投資家向けのオンライン説明会を開いた。2025年度までに電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)向けの部品製造を強化するため、2700億円を投資すると発表。工場の脱炭素化についても、2030年度までに1100億円を投じる。

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WEB説明会でカーボンニュートラルへの取り組みを語るアイシンの吉田守孝社長

吉田守孝社長は、カーボンニュートラルを求める顧客の声が「ここ1、2年で非常に強くなっている」とし、これを「第一の責務」として取り組む決意を示した。

製品面では、これまで主として中型車向けだったEV駆動システム「イーアクスル」を、小型車から大型車までフルラインアップ化し、HV用とともに2025年には年間450万台の生産が可能な体制を整える。同時にシステムの小型化やエネルギー効率化を進め、車両の「電費」を10%以上向上させる。

EVやHVは車の走行時においてCO2の排出量を大きく減らしている。ただ近年は、原材料の調達から生産、廃棄にいたるまで「ライフサイクル」全体でのカーボンニュートラル化が求められている。

そのため生産現場でも今後、作業工程の効率化、再生可能エネルギーや水素の活用、CO2を回収してメタンにする「メタネーション」などを進める。2030年までのCO2排出量の削減目標(2013年比)も今回、35%から50%に引き上げた。カーボンニュートラルの実現は2050年を目標としつつ、できる限り早める方針だ。

CO2回収をビジネスに

自動車部品最大手のデンソー(愛知県)は2020年、カーボンニュートラル実現の目標を2035年とした。2020年7月には、新設した「CO2循環プラント」の実証実験を開始。回収したCO2をメタンにして再び燃料とするだけでなく、カーボンナノチューブといった素材も生み出す。自社の脱炭素化への貢献だけでなく、事業化して2035年には3000億円の売り上げをめざすという。

ベアリング、ステアリング大手のジェイテクト(愛知県)も、これまで2050年に「極小化」という表現にとどめていた脱炭素の取り組みを「実質ゼロ」と具体化し、目標時期も2040年に前倒しした。

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排気ガスからCO2を回収し、新たな燃料を生み出すシステムのイメージ=デンソー提供

各国政府が目標設定、業績、株価に影響も

こうした背景には、カーボンニュートラルへの急速な流れがある。2020年に欧州連合(EU)が、2050年までのカーボンニュートラルに法的拘束力を持たせた「欧州気候法案」に合意。その後、日本の菅義偉首相(当時)や2021年に誕生した米国バイデン政権も追随した。2021年11月のCOP26(国連気候変動枠組み条約締約国会議)のメインテーマにもなり、「ゼロエミッション車」宣言も出された。

この宣言は、2040年までに新車販売はすべてCO2を出さない(走行時)車に変えるというもので、23カ国と世界の大手自動車メーカー6社が署名した。日本政府や日系メーカーは見送ったが、部品メーカーは海外向けの出荷も多く、カーボンニュートラルで先行する欧州向けは日本以上に環境に配慮した製品が求められている。

SMBC日興証券の牧一統アナリストは「各国政府が脱炭素目標を打ち出したことで、自動車業界は車の電動化だけでなく、製造工程全体における脱炭素への要請がより強まっている」と解説する。カーボンニュートラルへの対応が不十分な部品メーカーは、客先である自動車メーカーから「注文を取れなくなる」という。結果的に業績にも影響するため、投資家にとっても重要な選別基準になる。アイシンがESG説明会を開いた翌日、株価は5%近く上昇した。

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