SDGs ACTION!

気候危機、一人ひとりにできることは【中高生のための朝日SDGsジャーナル】

気候危機、一人ひとりにできることは【中高生のための朝日SDGsジャーナル】
ホワイトハウス前で気候変動対策を求める若者たち=2019年、アメリカ・ワシントン(撮影・朝日新聞)
SDGs ACTION!編集部/竹山栄太郎

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竹山栄太郎(たけやま・えいたろう)
2009年に朝日新聞社に入社し、経済記者として通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年10月から現職。娘(現4歳)の誕生を機に、SDGsに関心を持つ。

天気をテーマにした大ヒット映画「天気の子」に、雨が降り続いて東京が水没するショッキングな場面があります。人気マンガ「呪術廻戦」(じゅじゅつかいせん)でも、敵役の化け物が語っていました。「森も海も空も もう我慢ならぬと 泣いています」

地球の危機。それは物語だけでなく、現実となっています。

相次ぐ巨大災害

気象庁によると、2021年の日本の年間平均気温は、1898年の統計開始以来3番目に高かったそうです。1位は2020年、2位は2019年、4位は2016年。ここ数年の暑さが異常だと分かります。

大雨や土砂災害も深刻です。2021年には静岡県熱海(あたみ)市で土石流が起き、20人以上が亡くなりました。2020年の「令和2年7月豪雨」では、球磨(くま)川水系で大規模な氾濫(はんらん)が起きた熊本県で65人が亡くなったのをはじめ、全国で大きな被害が出ました。

気候変動の影響は高温や大雨に限らず、南極の氷がとけることによる海面上昇、サンゴの白化など生態系の変化、農作物の品質低下と、さまざまな形で表れます。最近では「気候危機」「気候崩壊」という言葉も使われるようになりました。

その大きな原因が、石炭や石油といった化石燃料を燃やすときに出る二酸化炭素などの温室効果ガスです。発生源として発電所や工場が思い浮かびますが、例えば牛のげっぷなどに含まれるメタンガスも温室効果ガスの一つです。

国際機関のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、世界の科学者を集めて気候変動の報告書をつくり、2021年夏に公表しました。報告書は、地球温暖化が人間活動の影響であることは「疑う余地がない」と断言しています。

世界の平均気温は、産業革命の前から既に1.1度上がっています。このままだと気温の上昇幅は2030年に1.5度、今世紀末には2度を超える。報告書はそう警告しました。

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干ばつで干上がった田畑=2019年、インドネシア・ジャワ島(撮影・朝日新聞)

温室効果ガス排出「ゼロ」へ

世界の国々は、この上昇幅を1.5度に抑えることを目指しています。これは、2021年秋にイギリスで開かれた国際会議の「COP26」(気候変動枠組み条約締約国会議)で新たな目標となりました。

実現のためには、温室効果ガスの排出量を2030年までにこれまでの半分に減らし、今世紀半ばには「実質ゼロ」にする必要があります。実質ゼロとは、排出量から森林などによる二酸化炭素吸収量を差し引いた合計をゼロにすること。「カーボンニュートラル」とも言われ、日本を含む140カ国以上が2050年までの達成を宣言しています。

企業も動いています。トヨタ自動車は、走行中に二酸化炭素を出さない電気自動車の販売に力を入れると発表。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング社も、店の省エネルギー化を進めます。

SDGsと気候変動

SDGsでも、17個ある目標の13番に、「気候変動に具体的な対策を」があります。他の目標とも深く関わり、「いちばん大事な目標」と言う人もいます。

一例としては、インド洋の島国マダガスカルでは干ばつが続いたことで、多くの人が食料不足にあえいでいます。国連は「世界で唯一、紛争ではなく気候によって飢饉(ききん)のような状況が引き起こされている」としており、目標2「飢餓をゼロに」の達成も危ぶまれます。

また、温室効果ガスを出さない「脱炭素社会」に移行すれば、産業のあり方が大きく変わります。石油や自動車といった産業で働く人たちは職を失いかねず、この点の目配りも欠かせません。

世代や国による不公平

気候変動を考えるうえで大切な言葉に、「気候正義」があります。温室効果ガス排出にそれほど責任がない人たちほど、異常気象や災害に苦しめられるという不公平を是正していくべきだという考え方です。

南太平洋の島国ツバルは、海面上昇で国土が水没すると訴えています。先ほどのマダガスカルも含め、農業に頼る中東やアフリカ、東南アジアなどの開発途上国には、干ばつや洪水で暮らしを脅かされる人が大勢います。

日本のなかでも、世代による不公平が存在します。温暖化が進むと、1960年生まれの世代が一度も経験しないほど暑い日を、その孫世代は一生に400回も経験する。そんな国内の研究があります。

先進国の大人たちが温室効果ガスを大量に出して豊かに暮らしてきた代償を、途上国や将来世代が負わされるのです。

それに気づいた若者は立ち上がっています。例えば、気候変動対策を求める「Fridays For Future(未来のための金曜日)」。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが2018年に始めた運動をきっかけに、世界に広がりました。

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秋田県内の風力発電設備。二酸化炭素を出さない風力や太陽光といった再生可能エネルギーに注目が集まっている=2021年、秋田市(撮影・朝日新聞)

「システムチェンジ」へアクションを

具体的にどんな対策が有効なのでしょう? 2021年のベストセラー書籍『ドローダウン—地球温暖化を逆転させる100の方法』(山と渓谷社)は、研究者らの協力で、効果の高い対策をランキングにしています。陸上風力発電(2位)や電気自動車(26位)などうなずけるものから、食料廃棄の削減(3位)、女児の教育機会(6位)といった意外な項目もあります。

筆者が、気候変動問題に取り組む企業や個人への取材で「私たちにできることは何ですか?」と尋ねると、「まずは知ることが大切です」という答えがよく返ってきます。

じゃあその次は? 電気をこまめに消す、車になるべく乗らないといった個人の変化も大事ですが、それだけでは残念ながら不十分です。脱炭素型の社会に変えていく「システムチェンジ」を起こすことが、より重要になります。

米マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏は、著書『地球の未来のため僕が決断したこと』(早川書房)で、「気候大災害を避けるのを手助けするために、すべての立場の人にできる何より重要なことは、政治プロセスに参加することだ」と説きます。

選挙権がない人も、政治について考え、意見を言うことはできます。環境に配慮した商品を買うことは企業へのメッセージになるでしょう。多くの人が一人ひとりの力を信じてアクションする。それが気候危機を止めるカギを握っています。

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