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EXITが語るSDGs みんな違ってみんなヒュイゴー!

EXITが語るSDGs みんな違ってみんなヒュイゴー!

昨年秋に創刊し、全国の中学・高校から20万部の申し込みがあった「中高生のための朝日SDGsジャーナル」。まもなく発行される第2号ではEXITの2人が登場し、“チャラ男”イメージにはそぐわない真摯(しんし)な言葉と、SDGs学習用ふせん「ペタッとSDGs」を使ったワークショップでの自由で多様な視点の面白さを紹介する。

SDGsとのつながりを意識することが増えてきた

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EXITの2人が登場する「中高生のための朝日SDGsジャーナル」第2号のフロント面

2019年、京都国際映画祭の一環として開催された「SDGs-1グランプリ2019」。SDGsが掲げる17ゴールのうち任意のテーマを選んでネタを披露するイベントで、EXITの2人は「4.質の高い教育をみんなに」「2.飢餓をゼロに」を実現するためにできることをユーモラスに伝える漫才で優勝した。

「これでSDGs関連の仕事が増えるんだろうな、と思ってたら全然来なくて。『え、どうした』って俺ずっと言ってましたもん(笑)。どうした、俺たち優勝してるんだけど?って。1年ぐらいそうだったかな」

兼近大樹さんがそう振り返る。日本で企業の取り組みが本格化し、世の中の関心が高まるにはまだ少し早かったこの時期。それでも2人は出演するメディアでSDGsについて語り、男性向けコスメやオーガニックコットンを使ったアパレルをプロデュースするなど、できることを自分たちのペースで続けた。

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りんたろー。さん

「それを思うと最近はテレビで特番が組まれたりして状況はずいぶん変わりましたよね。そのなかで僕らも、SDGsって何かを『かみ砕いて伝える』ことに少しは貢献できていたらいいなと思います」

りんたろー。さんが控えめに語る。初めから「社会貢献だ」と肩ひじを張らず、仕事で出会う人たちから一つひとつ学んだことで、暮らしや社会とSDGsの関連を自然に理解できるようになってきた。2人は今、そう口をそろえる。

「元々ちょっと関心のあったことが『こんなふうにつながってるんだ』『これもそうなんだ』って段々わかってきて、じゃあ続けようみたいな。みんなもそれでいいんじゃないかと思います」(兼近さん)

全部はできなくてもできることから始めたい

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兼近大樹さん

兼近さんの病気休業明けで行われたこの取材 、久しぶりに会ったので話したいことがたくさんあるという仲のいい2人だが、本来それぞれのキャラクターは大きく違い、コンビを結成していなければ接点もなかったかもしれない。

「全然違う環境で育った全然考え方の違う人がいるんだということを、今もまだお互い確認しているところです。だから、できるだけいろんなことについて普段から意見を交換するようにしています。わかるだろう、じゃなくて自分はこう思うというのをちゃんと伝えなきゃと思って」(りんたろー。さん)

兼近さんは経済的に困窮した環境で育ち、幼いころは学校の勉強に何ひとつ意味が見いだせなかったという。それだけに、貧困や飢餓から抜け出す手段としての教育への思いは強く、「SDGs-1」のテーマも彼が選んだ。

「日本にも教育の格差ってすごくあるでしょ。子どものころから英語で会話するのが当たり前の層がいる一方で、学ぶことが大切だという価値観すら教えてもらえない層がいる。俺はそこだったんです。勉強って将来のために大事だよ、努力は自分のためになるんだよ、ということすら誰も言ってくれなくて、考えたこともなかった。それを放っておくとどうなるかといえば分断でしょ。下の人は上の足を引っ張る、上の人は下を切り捨てる。そういうの、本当になくしていかなきゃなと思います」(兼近さん)

りんたろー。さんは興味・関心の幅が広く、SNSでも手づくりのお弁当写真をアップしたり、おすすめのスキンケア製品を紹介したりと日々を楽しんでいる様子がうかがえる。ただしそこには、身長180センチと大柄な自分が、あえて「フェミニン」と思われがちな趣味嗜好を発信することで何かを変えたいという思いも透けて見える。

「そうですね、誰が何を好きでもいいんだということが伝わったら、という気持ちは確かにあります。僕らがプロデュースしているファッションやコスメのブランドでも、ジェンダー平等というのは意識しているテーマです。ただ一方で、そういう製品って、じゃあ環境にとってはどうなんだ、余計なものはつくらないほうがいいんじゃないか、というのもありますよね。でも全部ができないならやらない、というのではSDGsってなかなか進まないと僕は思ってて。全部はできなくてもできることから始める、矛盾があってもやらないよりはずっといいんじゃないかな」(りんたろー。さん)

同じものを見ていても視点はまったく異なる

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SDGs学習ふせんと新聞紙面を使ったワークショップでも、彼らの興味深い違いが見られた。アドバイザーを務めた朝日新聞社の担当者がテーマに選んだのは、「ごはんラボ」というレシピや食材の情報を紹介するページ。おそらく気候変動や少子化といった社会課題の記事を予想していたであろう2人は、最初のうち戸惑った表情を見せる。

「書いてあることだけじゃなく、写真やイラストからでもいい、言葉の裏側にあるものでもいい、自由にイメージを広げて考えてください」

その言葉に、ようやく2人の手が動き始める。紙面のなかからSDGsとのつながりを見つけ、該当するゴールのふせんを貼り付けていく。一旦作業を始めると黙々と没頭するりんたろー。さんと、「えーっ、なんだろ」「こっちもつながるよね」と、手と同じぐらい口も動く兼近さん。そんな姿も対照的だ。

やがて2人にそれぞれの気付きを発表してもらった。りんたろー。さんは、調理写真のうち食材を切っている手が男性、炒めているのが女性に見えることからジェンダー平等というテーマにつなげた。また、料理を盛り付けてある器に着目し、これと同じものを買い求める人が増えれば産業と技術革新に貢献する、という発想も美的感覚の高い彼らしい。兼近さんは、食べ終えて排泄(はいせつ)する際に、きれいな水とトイレが使えない国々のことを思うだろうという。また、旬の食材が体にいいことをこの記事から理解できるのは、教育があるおかげだとも語った。

2人の意見が一致したのは、ここで紹介された料理がとてもおいしそうだということ。しかしそれについてりんたろー。さんは「家でおいしいものが食べられたら、生きる活力が湧いて働きがいが生まれる」と言い、兼近さんは「家でおいしいものが食べられたら、誰も外食をしなくなって産業の成長を止める」と言う。互いの視点は正反対だ。「ポジティブ、ネガティブどちらの意見もあっていいんです。同じものでも人によって見方が全然違うということも、このワークで伝えたいことのひとつです」。朝日新聞社の担当者がそうまとめた。

意見の違う人さえも「取り残されない」ために

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たとえば気候変動対策としてクリーンエネルギーへの転換は急務である一方、あまりに急激な産業構造の変化は失業を増やし、一時的に社会を不安定にするかもしれない。これほど複雑な世界の課題解決をめざすSDGsには、細部が食い違って見える部分も確かにある。しかしそうした手法の違いにとらわれて、本来誰にとっても有益であるはずの目的が見失われたのでは意味がない。

「大切なのは、自分と立場や考え方の違う人を否定しないってことですよね。たとえばSDGsなんて意味ないよ、という人がいたとして、SDGs推進側の人たちがそれを敵視するのは違うと思うんです。そういう人たちさえも『取り残されない』のがSDGsでしょ。だったらやるべきことは対立じゃなくて対話ですよね」(兼近さん)

「お笑いの世界でいえば、僕らの上の世代では『ブスいじり』『ハゲいじり』なんていうのが普通のことでした。もちろんそういう価値観はアップデートされて欲しいけど、それが許されていた時代を生きた人たちを全否定すればいいというものでもないと思います」(りんたろー。さん)

兼近さんは、「そこから何かを学ばなきゃね。違いを否定するんじゃなくて、違いから学ぶ」と言う。まったく異なる人生を歩み、多くの差異を持ちながら、互いを認め強い絆で結ばれるEXITの2人。 “チャラい”その存在が発するメッセージから、私たちが受け取るべきものは少なくない。

EXIT
“チャラ男”キャラクターの漫談を持ちネタにしていたりんたろー。(1986年静岡県出身)に兼近大樹(1991年北海道出身)が声をかけ、2017年コンビ結成。2018年4月、結成後最速での単独ライブを実施。「第20回 決戦! お笑い有楽城」優勝、「SDGs-1グランプリ2019」優勝。お笑いだけにとどまらず、音楽活動やファッションブランド、コスメブランドのプロデュースなど幅広く活躍中。
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