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ホテルニューオータニ、生ごみが巡ってカクテルに ラグジュアリーホテルが取り組む食のサステナビリティ【1】

ホテルニューオータニ、生ごみが巡ってカクテルに ラグジュアリーホテルが取り組む食のサステナビリティ【1】
サステナブルカクテル「Re.Sprout」と、バーカプリのマネージャー吉田宏樹さん=東京都千代田区

東京を代表する高級ホテルが、サステナブル(持続可能)な食の提供に力を入れている。ラグジュアリーな「おもてなし」に、食品ロス削減や海洋資源保護といった新たな価値を加える三つのホテルの取り組みを紹介する。初回は、ホテルニューオータニで提供される「サステナブルカクテル」。どうサステナブルなのか、バーテンダーに尋ねた。(編集部・竹山栄太郎)

ほうれん草を1株使用

ホテルニューオータニは、政治の中心地・永田町にほど近い場所にあり、前回の東京五輪(1964年)の直前に開業。過去3回の東京サミットのメイン会場となったり、平成・令和の即位の礼にともなう晩餐会の会場に選ばれたりと、内外の賓客をもてなしてきた。1967年公開の映画「007は二度死ぬ」のロケ地となったことでも知られる。

メインバー「バーカプリ」では、2021年から期間限定で「サステナブルカクテル」を展開しており、第4弾でほうれん草を使った「Re.Sprout」が2022年2月末まで提供されている。

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サステナブルカクテル「Re.Sprout」(ニュー・オータニ提供)


Re.Sproutは、ジンをベースにリンゴジュースなどを合わせたカクテル。1株分のほうれん草にジンなどを加え、ブレンダーで攪拌(かくはん)し、茶こしでこして、おしゃれな1杯に仕上げる。考案したバーカプリのマネージャー吉田宏樹さんは、「ほうれん草の渋みを生かしつつ、ジンのボタニカルな香りや、フルーティーなテイストがうまく混ざった味わいです」と表現する。

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「Re.Sprout」を創作するバーカプリマネージャーの吉田宏樹さん=東京都千代田区

生ごみ→肥料→野菜や果物に

吉田さんは、2019年にバーテンダーの世界大会「ディアジオワールドクラス2019」で部門優勝した経験を持つ日本のトップバーテンダー。大会出場のために渡欧した際、オランダの有名な蒸留所を訪ね、関係者からSDGsへのこだわりを聞いて刺激を受けた。「日本でも何かやらなければ」と感じたという。

吉田さんが目をつけたのが、ホテルの生ごみから育った野菜や果物だ。ホテルニューオータニでは、生ごみを堆肥(たいひ)に変えるコンポストプラントを1999年から導入し、館内のレストランやバーで1日約5t出る生ごみを、100%リサイクルしている。できた堆肥は契約農家に販売されて野菜や果物を育てるのに使われ、収穫された農作物がホテルに戻ってきて、従業員食堂などで提供される――。「サステナブルカクテル」の材料は、こうしてつくられた野菜や果物だ。

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ホテルニューオータニの館内にあるコンポストプラント=東京都千代田区
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ホテルニューオータニのリサイクルの仕組み(ニュー・オータニ提供)

サステナブルカクテルは2021年春、トマトを使ったカクテルから始まった。梨を使った第3弾の「Re.Pear」は、お客さんから特に好評だったという。吉田さんは「食材の風味を消さずに、カクテルのなかに生かすのが難しいところです。お客さまの期待をいい意味で裏切れるよう、見た目にもこだわっています」と明かす。

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2021年秋に提供された第3弾の「Re.Pear」(ニュー・オータニ提供)

レモンやグレープフルーツを搾ったときに残る皮をシロップにするなど、カクテル以外にも食品ロスを減らす工夫をしている。吉田さんは「SDGsには今後もいろいろと取り組んでいくつもりです」と話す。

バー業界、廃棄減に動く

バーカプリのマネージャー吉田宏樹さんに、サステナブルカクテルに込めた思いを尋ねた。

――サステナブルカクテルに取り組もうと思ったきっかけを教えてください。

バー業界では、果物を絞った後の皮など廃棄される食材が意外と多く、サステナビリティへの注目が高まっています。バーテンダーや蒸留所の間では、以前から廃棄をなくそうという活動が生まれているのです。

オランダの蒸留所を訪ねた際、SDGsにこだわっている話を聞き、日本でもやらなきゃいけないと思いました。帰国後しばらくして、ホテルのコンポストプラントでできた堆肥で育った野菜やフルーツをカクテルにしてみようというアイデアが生まれました。

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吉田宏樹さん(ニュー・オータニ提供)

――どんな点が特徴ですか。

バーテンダーがつくるものですから、ミックスジュースやスムージーとは違う、カクテルらしさにこだわっています。食材の風味を消さずに、カクテルのなかに生かすのが難しいところです。例えば、トマトを使った第1弾のカクテルでは、透明にしたトマトのエキスだけを取り出して、果肉を残さないようにしました。

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サステナブルカクテル第1弾の「Re Clear」(左)と第2弾の「Loss ZERO」(ニュー・オータニ提供)

――お客さんの反応はどうですか。

「おもしろい」「どんな味がするんだろう?」と興味がわいて飲んでみる、という方が多いです。実際に飲んでみると、意外と納得がいくようで、「あぁ、おいしいね」と言ってくださいます。

――生ごみが巡ってカクテルになると聞くと、少しびっくりしますが、サステナビリティと高級ホテルのブランドの関係についてどう考えますか。

ホテルは食品ロスが避けられない業態で、リサイクルをはじめとするサステナビリティには積極的に取り組まなければいけないと思っています。そのためにはスタッフ一人ひとりが小さなことに気づくのが大事で、ホテルのなかでもその姿勢を浸透させていきたいです。リサイクルすれば、コストが浮き、いい商材を安く仕入れてお客さまに提供することにもつながります。今後もおもしろい食材が出てくれば、新たなカクテルにも挑戦したいと思っています。

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ホテルニューオータニ。1万坪の日本庭園が特徴の一つだ(ニュー・オータニ提供)
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