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コロナ禍で勢いづく入浴剤 130年続くクナイプのSDGs経営

コロナ禍で勢いづく入浴剤 130年続くクナイプのSDGs経営
クナイプジャパン社長/大脇明憲

バスソルトやボディケア商品を手がけるドイツのクナイプ(Kneipp)。コロナ禍で「おうち時間」が増えるなか、入浴剤の売り上げが好調だ。経営の根幹には、1891年の創業から続く、自然のレジリエンス(回復力)を大切にする方針が根づいているという。日本法人の大脇明憲社長に聞いた。(編集部・吉田拓史)

大脇明憲(おおわき・あきのり)
1962年生まれ。1984年サッポロビールに入社し、米国法人副社長や本社ジェネラルマネージャーを歴任。2007年チェックポイントジャパン社長、2011年ユニバーサルペーパー社長を経て2019年からクナイプジャパン社長。

入浴剤の売り上げ、3年で1.5倍に

――クナイプと言えばバスソルトのイメージが強いです。入浴剤の会社ですか?

1985年日本に上陸した当初は、バスソルトから始まりました。日本ではお風呂文化が強いので、入浴剤が売り上げの75%を占めています。ただ、グローバルで見ると入浴剤の売り上げシェアは40%程度です。ボディケアやフェイスケア、ルームフレグランスやサプリメントなども扱っているブランドです。

クナイプはドイツ・ヴュルツブルクで始まり、2021年に130周年を迎えました。本国では「老舗の自然派ブランド」として認知度は95%以上です。

日本人ほど風呂好きではありませんが、ドイツにもクアハウス(温泉利用型健康増進施設)文化があり、健康や治癒目的での利用が根づいています。ここ1~2年は新型コロナの影響もあり、健康やリラクゼーション、ちょっとした贅沢のために「バスタブでお湯に浸かる」ことが増える傾向にあり、入浴剤の需要は世界的に伸びています。

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クナイプの商品について説明する大脇社長

――どれくらい伸びているのでしょう?

弊社の国内売り上げは過去3年間で1.5倍になりました。2021年も24%伸びており、入浴剤市場全体の7%を大きく上回ります。国内の他のブランドの数倍というプレミアムプライスにもかかわらず、です。不況の中でも価値の感じられるものにはお金を払っていただける。商品として差別化できないものを宣伝で売るというやり方はもう通用しなくなっていると感じます。

創始者が重視した自然治癒の哲学

――利用者はクナイプの何を支持していると考えていますか。

創始者のセバスチャン・クナイプは、神父であり医者でした。フィロソフィー(哲学)として自然治癒をうたい、水、ハーブ(植物)、運動、栄養、心と体のバランスが大切だと説いたのです。130年間、「ナチュラル」を標榜し、人々に幸せで健康的な生活を提供する、という存在意義を守り続けている点ではないでしょうか。

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創始者のセバスチャン・クナイプ神父

――製品づくりにおいて、自然環境にはどう配慮されていますか。

クナイプのバスソルトは、ドイツの地下460mからくみ上げた2億5千万年前の海水を昔ながらの釜炊きで精製した天然岩塩を使用しています。色に関しても欧州基準で食品に使用できる色素しか使っていません。

発泡時間を長くするための凝固剤として入浴剤の多くに配合されているポリエチレングリコール(PEG)も使用していません。クナイプの定義では海洋汚染で問題になっているマイクロプラスチックにあたるからです。日本では、マイクロプラスチックと言えば、洗顔料のスクラブのようなものを言うケースが一般的ですが、クナイプでは一定以上の分子量を超えたポリマー(高分子)も該当します。PEGはその一つで、水溶性ですが、生分解性の悪い物質であり、長期的な観点では環境に影響を及ぼすリスクがあると考えています。入浴剤に限らず、クナイプの製品はすべてマイクロプラスチックフリーです。

――化学物質は一切使わないのですか。

SDGs宣言が出されるずっと前から掲げている「クナイプのお約束」で、植物由来成分を使うことを明記しています。パラベン(防腐剤)やパラフィン、シリコン、鉱物油(ミネラルオイル)は使わない。そして、製品の動物実験もやりません。

また、炭酸入浴剤は錠剤の強度や発泡時間を保つため、PEGのほかにタルクという鉱物を配合するのが一般的ですが、2021年日本で開発した「スパークリングタブレット」はこれを使っていません。一部で発がん性が取りざたされたためです。これも、環境や人体への影響を重視し、「怪しきは使わない」というクナイプの方針に沿った判断です。最初の試作品は1分ほどで発泡が終わってしまいました。ドイツ本社に「タルクを配合するわけにはいかないだろうか?」と打診してみましたが、「絶対ダメだ」との返事が戻ってきました。

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Kneippの商品

エコ電力、ビーガン対応、モンキーフリーも

――ほかにも環境への配慮やSDGsに沿った施策はありますか。

ドイツの本社工場は2010年から使用電力の電源を100%水力発電に切りかえています。容器に関しても、リサイクル素材または生分解可能な素材へと徐々に移行しています。2030年にはすべての容器をリサイクル可能または生分解可能なものにし、最終的にはプラスチック不使用に持っていきたいと考えています。

また、多様性という点からもほとんどの商品がビーガン(動物からの搾取を避ける主義)に対応しています。動物性の成分は蜂蜜と蜜蝋(みつろう)、スキムミルクのみです。動物虐待を伴う原料も不使用としています。例えばココナッツ油。子ザルにココナッツの実を収穫させて生産することが多いのですが、クナイプでは「モンキーフリー」、つまりサルを利用していないものを使っています。親ザルから子ザルを引き離して働かせるのは動物虐待と考えているからです。

――今後、SDGsやESGを意識して新たに取り組もうとしているものがあれば教えてください。

例えば洋服を買う時、どういう労働環境で作られているのか、不要になった後のリサイクルはどうなっているのかなど、モノやサービスの生産から消費までの持続可能性を意識される人たちが増えています。食べ物でも化粧品でも同様です。社会的に意義があるものを選ぶ人たちに自社製品が選ばれるよう、すべての商品をSDGs基準に見合うものにしていきたいと思います。

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