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【ジェンダー平等】いまさら聞けないその意味と、私たちにできること

【ジェンダー平等】いまさら聞けないその意味と、私たちにできること
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは(デザイン:吉田咲雪)
Kanatta代表取締役社長/井口恵

流行語大賞に選出されるなど、近年何かと話題の「ジェンダー平等」。なぜSDGsの目標として掲げられているのか、そしてなぜ日本がジェンダー後進国として海外から批判されているのか。いまさら聞けないジェンダーの基礎知識や具体的な取り組みについて、解説します。

art_00298_著者_井口恵さん
井口恵(いぐち・めぐみ)
株式会社Kanatta代表取締役社長。ジェンダー平等の実現に貢献することを理念に、男性主体のドローン業界で活躍する女性のドローンパイロットのコミュニティー「ドローンジョプラス」を発足。ドローン業界での女性の雇用創出に貢献している。現在はドローンジョプラスに加え、女性チームでの人工衛星の打ち上げに挑戦する「コスモ女子」を運営し、さらに多くの女性をサポートするためにクラウドファンディング事業を展開している。

1.SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは

(1)目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の内容

2021年の流行語大賞のトップ10に選出された「ジェンダー平等」。日本ではここ数年でやっと認知されはじめた言葉ですが、世界的には2015年からSDGsの目標の一つとして掲げられています。

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SDGs5番目の目標「ジェンダー平等を実現しよう」には、以下のターゲットが設定されています。

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SDGs目標にある各ターゲットには、グローバル指標(進捗《しんちょく》状況を評価する基準)があり、「ジェンダー平等を実現しよう」も例外なく設けられています。

詳しく知りたい方は、外務省の「JAPAN SDGs Action Platform │SDGグローバル指標(SDG Indicators)│5: ジェンダー平等を実現しよう」をご覧ください。

(2)なぜ目標5が掲げられたのか

数ある社会課題の中から、なぜ「ジェンダー平等を実現しよう」という項目が世界共通の目標として掲げられたのでしょうか。それは、発展途上国に限らず日本のような先進国でも、まだまだ女性に対する差別や暴力が問題になっており、それらを是正する必要があるためです。

ここで、まず「ジェンダー」という言葉を正しく理解することが重要になります。

「ジェンダー(gender)」は、生物学的な性差を指す「セックス(sex)」とは異なり、社会的・文化的な性差を指します。つまり、「男性はこうあるべきだ」「女性はこうあるべきだ」というように、私たちに刷り込まれている社会的なイメージや役割分担により発生するものです。

ジェンダーにおける問題はたくさん存在しています。

その一つが女の子の未就学率です。初等教育を一切受けられない女の子は世界で900万人に上り、それは男の子の人数の3倍にあたります(参照:ユネスコ統計研究所調査レポート|Fact Sheet no.56 P11)。

また、18歳未満の結婚を指す児童婚の世界的な割合は、なんと21%に達しており、約5人に1人の女の子が幼い時に強制的に結婚させられるという被害に遭っているのです(参照:児童婚 子どもの花嫁、年間約1,200万人 世界の女性の5人に1人が児童婚を経験 ユニセフ、教育への投資、地域社会の意識改革訴える │ユニセフ)。

日本では、上記のような格差こそないものの、例えば2021年にニュースになった東京五輪・パラリンピック組織委員会の前会長・森喜朗氏のように、女性に対して差別的な発言をしてしまうことも、ジェンダーという観点で問題になります。

このように、ジェンダーに関わる社会課題は挙げはじめればきりがなく、世界中で取り組むべき問題として認識されているのです。

2.ジェンダー平等に対する世界・日本の取り組み

(1)世界の取り組み

ジェンダー平等における課題を解決するために、世界ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。

ジェンダー先進国といえば、北欧。世界経済フォーラムが毎年発表する「ジェンダー・ギャップ指数」の最新のランキングにおいても、1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェーと、北欧諸国が上位を独占しています。

これらの国々でどのような取り組みがなされているのか、具体的にみていきましょう。

取り組み1.クオータ制

とりわけ政治や経済分野での女性の活躍を促進するための取り組みとして有名なのが、ノルウェー発祥の「クオータ制」です。クオータ制とは、政治の分野では議員、企業では役員などにおいて、一定の割合を女性にする制度のことをいいます。

1974年にノルウェーではじまったクオータ制ですが、今ではフランス、フィンランドなどのヨーロッパ諸国はもちろん、お隣の韓国でも導入されています。中でもアフリカでいち早く導入した小国のルワンダでは、女性議員の割合が60%を超え、世界を驚かせました。

取り組み2.パパ・クオータ制

クオータ制とは反対に、男性の育児参画を促すというアプローチで女性の活躍を促進する取り組みもあります。1993年に、こちらもノルウェーが世界に先駆けて導入した「パパ・クオータ制」です。

パパ・クオータ制は、父親に一定の育児休暇を取得するように割り当てる制度です。その期間は2022年現在15週間と定められており、導入の結果、従来4%だったノルウェーの男性の育児休暇取得率は、約75%に急増しました。

クオータ制と同様、近年ではスウェーデンなど他のヨーロッパ諸国でも導入が進んでいます。

取り組み3.ジェンダーフリー教育

幼いころからジェンダー平等の価値観を浸透させるため、ジェンダー先進国で行われているのが「ジェンダーフリー教育」です。ジェンダーフリー教育とは、「男性だから」とか「女性だから」といった固定観念を生まない教育を指します。

その取り組みは多岐にわたり、服装を男女で分けないことはもちろん、一部の国では言語にまで影響が及んでいます。

中でも注目を浴びているのが、2012年にスウェーデンの絵本で使用され、現在では一般社会に浸透している、「Hen(ヘン)」という、男性でも女性でもない中立の代名詞です。このようなジェンダー・ニュートラルな言葉が国家レベルで認められたのは世界初の事例でした。

(2)日本の取り組み

続いて、日本でのジェンダー平等に向けた取り組みをみていきましょう。

まず日本のジェンダー平等の達成度合いですが、前述の 「ジェンダー・ギャップ指数」のランキングでは156カ国中120位と、主要7カ国(G7)で最下位です。その内訳を見ると、経済・教育・医療・政治の4分野の中で経済と政治のスコアが著しく低くなっています。

具体的には、例えば経済部門においては「管理職の男女比」が139位とかなり低く、世界平均34.9%に対して日本は17.3%にとどまっています。また、政治部門では「国会議員(衆議院議員)の比率」が平均31.2%に対して日本は11.0%です(参照:世界経済フォーラム|The Global Gender Gap Report 2021 P233)。

このように、ジェンダーにおいてはかなりの後進国である日本では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

取り組み1.日本政府の取り組み

まず、政府では「2030年までの可能な限り早期に指導的地位に女性が占める割合を30%にする」という目標を掲げています。ここでの指導的地位とは、国会議員や民間企業における管理職のことをいいます。

ただし、こちらの数値目標はもともと2020年に達成する予定だったところを、目標の半分にも及ばなかったため、達成年限を10年先送りにしたという経緯があります。

取り組み2.東証の取り組み

そんな中、動き出したのが東京証券取引所です。

東証は、2021年6月に上場企業の経営指針にあたるコーポレートガバナンス・コードを改訂し、「企業の中核人材における多様性の確保」という項目を追加しました。女性・外国人・中途採用者の登用を積極的に行いましょう、という指針です。

この改訂を受け、例えばソフトバンクでは2035年度までに管理職の女性比率を2021年度の3倍の20%にする、という目標を発表しました。

取り組み3.個々の企業の取り組み

女性が活躍しやすい職場環境を整えるため、さまざまな制度を用意している企業もあります。

事務機器などのメーカーであるリコーは、女性が育児に時間を使えるような時短制度や、子供が病気になってしまった際の看護休暇の制度を用意しています。さらに女性だけでなく、育児をしている男性にもセミナーを行うことで、男女両方の意識改革を実施しています。

3.ジェンダー平等を実現するために私たちにできること

ここまで主に政府や企業による取り組みを見てきましたが、ジェンダー平等の実現のため、私たち個人にできることはなんでしょうか。

(1)家庭内の無意識のバイアスを見直す

まず、家事などの身近なことに関して私たちが抱いてしまっている、ジェンダーに関する無意識のバイアスについて考えることも、ジェンダー平等への第一歩です。

例えば、共働きの夫婦の間で、知らず知らずのうちに女性の家事の分担が重くなっていることはないでしょうか。

また、お子さんの送り迎えをお父さんがしている際に、「男性が送り迎えをするなんて素敵」「今日はお母さんはどうしたのかな?」などと思ってしまうことはありませんか。それは私たちが無意識のうちに「子供の送り迎えはお母さんがやること」と思い込んでいるからかもしれません。

(2)職場における無意識のバイアスを見直す

職場においてできることとしては、まず仕事をお願いする際にジェンダーで区別しないことが挙げられます。

これはマネジメント・ポジションにいる方からよく聞くことですが、チャレンジングな仕事や大きなプロジェクトが発生した際に、無意識のうちに男性部下に頼む人が多い傾向があるようです。

体力面を考慮している場合や、大きな仕事は男性がトップに立って指導するもの、という固定観念がそうさせている場合があるのですが、その結果、仮に能力の高い女性が部下にいたとしても、ステップアップに必要な経験を十分積めず、男性の同僚との経験値の差がどんどん開いていってしまうといった弊害が起こるのです。

ジェンダーに関する私たちの先入観をいったんなくして、フラットに本人のやる気重視で仕事を依頼することを意識することが大切です。

(3)ジェンダー平等を目指す活動団体を支援する

身近な人とのやり取りの中で意識を変えることに加えて、ジェンダーに関する課題を解決するために活動している団体を支援する、という形でジェンダー平等に貢献することもできます。

例えば、前述の児童婚や未就学という問題を抱える海外の女の子を支援するために、NGO(国際NGOプラン・インターナショナル国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)など)を通じて彼女たちのスポンサーになる、といった方法が挙げられます。

また、近年では、日本においてもジェンダー関連の団体が多数立ち上がっています。

2021年には、メルカリの創業者である山田進太郎氏が理系女子高校生向けの奨学金制度をはじめました。

そのような団体について知り、積極的に発信することも、ジェンダー平等達成の後押しになるでしょう。

4.ジェンダーにとらわれない個性の尊重を

これまで、ジェンダーにおける課題やそれを解決するためにできることについてお話ししてきましたが、一番大切なことは私たちがジェンダーという枠にとらわれることなく、一人一人の「個」を尊重することです。

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ドローンジョプラスメンバーで開催した空撮ツアーの様子(Kanatta提供)

「女性だから」「男性だから」という先入観を払拭(ふっしょく)し、ジェンダーに関係なくそれぞれの個性を大事にすること、そして何かしらの課題に気づいた時には勇気を出して声をあげることがジェンダー平等の実現への第一歩だと思います。

私もビジネスという分野で、ジェンダー平等に貢献するために自分自身ができることを、今後も模索しながら実践していきます。

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