SDGs ACTION!

LGBTQとは わかりやすく活動家が解説│課題や支援事例も紹介

LGBTQとは わかりやすく活動家が解説│課題や支援事例も紹介
LGBTQの意味 Qは何を指している?(デザイン:吉田咲雪)
Deaf LGBTQ Center代表/山本芙由美

さまざまな人の性のあり方を示す言葉に、LGBTQがあります。LGBTは知っているけれど、Qが何かはわからない……という声は少なくありません。本記事では、聴覚障害があり、LGBTQでもある「ろうLGBTQ」の人々を支援する団体の代表者が、LGBTQをわかりやすく解説します。

art_00296_著者_山本芙由美さん
山本芙由美(やまもと・ふゆみ)
ろうLGBTQの支援団体 Deaf LGBTQ Center代表。大学院でろう幼児をもつ親の支援について研究、博士前期課程修了。2015年から2年間、米国のギャロデット大学で「ろうLGBTQ学」を専攻。現在、ろう×LGBTQサポートブックや多様な性を表す手話表現の動画制作、ろうLGBTQ全国大会や東南アジアろうLGBTQ会議の運営など幅広く開拓。インクルーシブな社会づくりを目指して活動している。

1.LGBTQとは? Qが示しているのは?

男性と女性が愛し合う「異性愛」以外にも、さまざまな「性」があります。

これは最近になって新しく出てきたわけではなく、人類のどの時代、どの地域にも一定の割合でそうした人々がいました。

しかし、現代ではこの「多様な性」を示すものとして、LGBTQという言葉が使われています。LGBTがよく知られている半面、QがついたLGBTQはまだまだ認知されていない印象です。

LGBTQとはどんな意味か、Qとは何を示しているのかを理解するには、まず人の性が四つの要素で構成されていることを理解する必要があります。

(1)人の性を構成する四つの要素

人の性を構成する四つの要素は、以下のものです。

1. 身体的性
2. 性自認
3. 性的指向
4. 性表現

身体的性とは、生まれた時の身体的な性です。男性器がついているといった身体的特徴を指します。

性自認は、自分自身の性を男性か女性かその両方、あるいはその他かという、自分自身の性について、自分がどう認識しているかです。これは、上記の身体的性と一致しない時もあります。

性的指向は、好きになる相手が同性か異性かあるいはその両方、またはその他かという、自分が好きになる相手の性のことです。

性表現は、服装や髪形、しぐさ、言葉遣いなどを通して、自分がどのような性であると表現したいのかです。例えば、身体的性や性自認が男性であっても、女性の服を着て女性的な表現をしたいという人もいます。

(2)LGBT/LGBTQの意味

人の性を構成するこれらの要素を把握すると、LGBTやLGBTQの意味が見えやすくなります。

LGBTの「L」はレズビアン:Lesbian(女性を愛する女性)、「G」はゲイ:Gay(男性を愛する男性)です。「B」はバイセクシュアル:Bisexualといって、女性または男性、あるいはその他の、二つ以上の性に惹かれる人のことです。「T」はトランスジェンダー:Transgender。身体の性(身体的性)と心の性(性自認)が異なる人です。

このうち、L・G・Bは性的指向(どの性を愛するか)、Tは性自認(自分自身の性)にあたります。

日本ではこのLGBTの四つが比較的、知られています。しかし、実は、もっとさまざまな性があるのです。性的指向も、はっきり同性愛、異性愛とくくれない人もいます(基本的には異性愛でも、ごくまれに同性にも惹かれるなど)。

性自認も、男性にも女性にも当てはまらないという人、流動的な人(昨日は男性、今日は女性と移り変わる人など)、さまざまです。

つまり、いわゆる「セクシュアルマイノリティー(性的少数者)」は、LGBTの四つだけではなく、もっとさまざまな分類があるのです。それを示すのが、LGBTQという、「Q」を加えた表現です。

LGBTQという時の「Q」はクィア(Queer)、またはクエスチョニング(Questioning)を意味します。

クィアは、日本では異性愛者、及びLGBTの四つ以外のさまざまな性的指向・性自認の総称的な意味で使われることが多いようです。クエスチョニングは、自分自身の性的指向や性自認がはっきりしていない人、または意図的に決めていない人のことです。

このQの部分をLGBTQIAやLGBTQ+と表記する人もいます。「I」はインターセックス(Intersex)、「A」はエイセクシュアル(asexual)、「+」はLGBTQ以外の多様な性を表しています。

(3)LGBTQの関連用語

LGBTQをより深く理解する言葉に、SOGI(ソジ)カミングアウトアウティングがあります。

SOGIは、性的指向(Sexual Orientation)を示す「SO」と、性自認(Gender Identity)の「GI」を合わせた言葉です。これはLGBTQのことではなく、異性愛の人も含めて、「すべての人の属性を表す略称」です。

その人の性的指向や性自認などをからかったり、いじめの種にしたりすることをSOGI(ソジ)ハラといいます。

カミングアウトは、自分の性自認や性的指向などを他の人に伝えることです。差別や偏見が多い中で、これはなかなか容易なことではありません。

アウティングは、本人の同意なしに、他の人が勝手にその人の性自認や性的指向のことを伝えてしまうことです。アウティングされた人がショックで自殺した例もあり、アウティングは決してあってはならない行為です。

art_00296_本文_01
Getty Images

2.LGBTQにまつわる二つの課題

LGBTQは「多様な性」を示す言葉のひとつであり、LGBTQを定義することは現代社会が「多様な性」を受け入れようとする姿勢の現れでしょう。

LGBTQはSDGsのなかに直接規定されてはいませんが、LGBTQの方たちが生きやすい社会をつくることは、「誰一人取り残されない」というSDGsの精神に沿ったものとも言えます。

ですが、実際は多くの課題があります。とくに法・制度上の課題と「多様な性」の認知度の低さによる課題は大きな壁です。

(1)法・制度上の課題

日本ではいくつかの地方自治体が「同性パートナー制度」を作っていますが、国全体ではまだ整備されていません。

現在の日本国憲法の24条の中で、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」という文言があります。これは一方の側からの強制、押しつけであってはならないという意味で書かれているはずで、同性婚を禁ずる意味合いのものではないはずです。が、「両性」とあるからには同性婚は含まれないという意見もあります。

3組の同性カップルが、同性婚が認められていないのは憲法違反だと訴えた裁判で、2021年3月、札幌地裁は「憲法14条違反」という判決を下しました(参考:同性婚の不受理、初の違憲判断 札幌地裁「差別的扱い」│朝日新聞デジタル)。14条はすべての国民は平等で、性別などで差別されないとした「平等原則」です。

でも、今の日本では同性婚はまだ認められていません。そのために公営住宅に一緒に応募できない、保険金の受取人になれない、病院で「家族」としての扱いを受けられず面会もできない時もあるなど、いろいろな問題があります。

また、ラブホテル、プール、スポーツジム、温泉などの施設などで、同性カップルやトランスジェンダーの人などが利用を断られることも多くあります。

art_00296_本文_02
札幌地裁の判決後、「違憲判決」と書かれた紙を掲げる弁護士ら=2021年3月17日、札幌市中央区(撮影・朝日新聞)

こうした面も含めて、LGBTQの人々がそれだけの理由で行動を制限されるようなことがなく、また、同性であれ、誰であれ、愛し合う2人が自由に、社会的に、共に暮らしていける法・制度を整備していくことが求められています。

具体的には、LGBTQの人々に対する差別を禁止する法制度を作ることや、同性婚を法的に認めることなどが求められています。

(2)「多様な性」の認知度の低さによる課題

LGBTQの人々や子どもたちに対して、学校でのいじめや職場でのSOGIハラなどがたくさんあります。

心無いいじめや差別の中で、生きていく展望を奪われて自殺に追い込まれる人々・子どもたちもたくさんいます。LGBTQの人々の自殺率の高さは日本だけではなく、欧米でも指摘されています。

「多様な性」は、元々自然界の中に当たり前に存在しています。

例えばニホンザルやボノボなど、あらゆる大型の類人猿について「同性愛」は見られます。キリンの場合、交尾するつがいのうちの9割はオス同士です。哺乳類だけではなく、モリイシガメ、ガラガラヘビ、トノサマガエルなど、ほとんどの動物に見られます。

また、人類の歴史の中でも、紀元前から同性婚などの記録があちこちに残っています。日本でも江戸時代までは、「男色」(ゲイ)は武家の間でも町人の間でも当たり前に認められていました。

「多様な性」は特殊なものでも、おかしいものでもないのです。

社会の中から、LGBTQを理由にした心無いいじめや差別はなくさねばなりません。

そのために大切なことの一つは、教育の中でLGBTQについての正しい理解と知識を教えていくことです。

日本では、高校の家庭総合・家庭基礎(2017年度)、中学校の道徳(2019年度)、小学校の保健体育(2020年度)など、少しずつ教科書にLGBTのことが掲載されるようになっていますが、まだ十分ではありません。

また、教師の多くがLGBTQについて誤った知識や偏見を持っている現状もあります。これまでそうした知識と接する機会がなく、どのように教えたらいいのかわからずに、戸惑っている教師も少なくありません。

教師に対する研修なども含めて、政府や行政がきちんと指導していく必要があるでしょう。

art_00296_本文_03
LGBTなど性的少数者に関する記述がある高校の世界史、政治・経済、倫理、英語の教科書(撮影・朝日新聞)

3.LGBTQに関する国・諸団体の取り組み

では、こうした課題に対して、国や諸団体はどのような取り組みがなされているのでしょうか。ここで主なものをご紹介します。

(1)世界各国の取り組み

イランやサウジアラビアなど、12カ国では、「同性愛者」というだけで死刑になる制度があります。死刑とまでいかなくても、同性愛は犯罪であると定めている国もあります。

その一方で、「同性婚」を認めている国は、2001年のオランダを皮切りに、2020年のコスタリカまでで29カ国になっています。同性パートナー制度がある国は23カ国。合わせて52カ国です(2020年現在 参照:NPO法人 EMA日本)。これは少しずつ増えています。

アジアで見ると、例えばネパールの憲法は、「性的少数者」を差別してはならないと明記しています。2018年にはインドで同性間の性行為を違法とする法律が「違憲である」として無効化されました。台湾では2019年から同性婚が認められるようになりました。

(2)企業の取り組み

2020年6月に改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が施行され、SOGIハラや、アウティングの防止が企業に義務付けられました。

ですが、企業の取り組みは、LGBTQについて全く何もやっていない企業、少し言及するだけの企業、社内研修などで取り上げている企業など、大変バラつきがあります。

各企業の取り組みを見ると、「差別禁止の明文化」や「経営層の支援宣言」などが多いようです。これらに後押しされて具体的な施策を始めていく企業も少なくありません。

その一方で、「優先順位が高くない」「何をすればいいかわからない」などで、まだ具体的な取り組みを始めていない企業も多いのです。

事例を見ますと、スターバックスコーヒージャパンは、社員からの要望を受けて、2017年から独自の同性パートナーシップ制度を導入しています。

資生堂では、社内で同性パートナーを一般の婚姻と同じ扱いにするほか、LGBTQ当事者への接客(性別適合手術をした人へのメーキャップ)などを進めてきています。

ダイヤモンド社は、LGBTへの理解を進めるための「Oriijin(オリイジン)」という雑誌を発行しています。

他にも、戸籍上の名前とは違う通称名を認めたり、誰でも使えるトイレを設置したりするなどの取り組みも増えてきています。

(3)当事者団体、支援団体の取り組み

LGBTQの当事者団体や支援団体は多くあります。

例えば、関東圏なら「プライドハウス東京」「S-PEC」「にじーず」「ing‼」、関西圏なら「虹色ダイバーシティ」「dista」「QWRC」「G-FRONT関西」などです。

そのため、取り組みもさまざまなものがあります。

● 当事者が気楽に集まってゆったり過ごせる安全なスペースを作る取り組み
● 当事者、あるいは当事者の家族のさまざまな悩みや問題の相談を受ける取り組み
● LGBTQの恋人同士が保険に入ったり、住居を借りたりする契約の時に同席して、支援する取り組み
● LGBTQ関連書籍の貸し出しや、LGBTQ関連映画の上映会の開催などの取り組み

これ以外にも、「公益社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」による、同性婚を求める各訴訟の支援などもあります。

LGBTQ障害者に対する取り組みも

障害者の中にもLGBTQの人々は多くいます。でも、障害者の中でもLGBTQはなかなか理解されず、LGBTQの集まりに行っても障害者ということですっきり中に入れない、そうした狭間(はざま)にいます。

例えばろう者の場合、手話の中にはこれまでLGBTQをきちんと表現できるものがありませんでした。ろう者の集団の中でも差別的な表現でからかわれることがありました。

LGBTQの集まりに行っても手話通訳がない、LGBTQを取り上げた映画にも字幕がないなどで、ろう者だと参加しづらい・学びづらいことが多々あります。

病院に行く時、役所に行く時、LGBTQのことを十分理解している手話通訳者がまだまだ少なく、安心して行くことができません。

こうした問題を解決するために、ろうLGBTQなどの当事者たちが集まって、LGBTQの新しい手話を作ったり、LGBTQの集まりに理解ある手話通訳者を同席させたりといった活動を進めています。

art_00296_本文_04
Getty Images

4.多様性のある社会の実現へ

人間は一人一人違います。顔も身長も体重も十人十色ですし、心もそれぞれ違います。それが当たり前なのです。

なぜ、性に関してだけ「異性愛じゃないとダメ」と一つだけの形に決めつけてしまうのでしょう? LGBTQを認めたからと言って、誰かが迷惑するのでしょうか?

一部に「LGBTQを認めると、子どもが生まれなくなる。日本は滅びる」といった発言をしている人々がいます。

誰が「全ての人がLGBTQになるべきだ」などと言ったのでしょう? 誰も言っていません。異性愛の人はそのまま異性愛のままです。

異性愛の人もいる、同性愛の人もいる、その他いろいろな性の人々がいる……それをお互いに認め合い、尊重し合うこと、それが「多様性」です。

みんなが同じ「型」に押し込められて、ギスギスと生きるよりも、一人一人が違う、それぞれの個性を伸び伸びと生かしていける方がずっと楽しいと思いませんか?

この記事をシェア
関連記事