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脱プラスチックが必要なワケは?国内外の取り組みや今後の課題も紹介

脱プラスチックが必要なワケは?国内外の取り組みや今後の課題も紹介
脱プラスチック 必要な理由とメリット・デメリット(デザイン:増渕舞)
スライバル代表取締役/青木愛

メディアや街中で「脱プラスチック」という言葉をよく見かけるようになりました。世界でもプラスチック製レジ袋の有料化や紙ストローの導入が進められています。なぜ、脱プラの取り組みが必要とされるのでしょうか。本記事では、脱プラが必要な理由やメリット・デメリット、実現の方法を紹介します。

art_00301_著者_青木愛さん
青木愛(あおき・めぐみ)
株式会社スライバル代表取締役。サステナビリティを身近にするオンラインプラットフォーム【sustainable.】と、日用品から使い捨てプラスチックのごみ削減に取り組むオリジナルブランド【S.(エスドット)】運営中。1993年生まれ、東京都出身。15歳からアメリカに単身留学。テンプル大学国際ビジネス学科卒業。韓国・ソウルの延世大学での1年間の留学から帰国後大学4年次に学生起業。

1.なぜ脱プラスチックが必要なのか?

プラスチックは、私たちの暮らしの至るところに存在し、幅広く使われています。

プラスチックとは1種類の素材を指すのではなく、ペットボトルに使われているPETや、ポリエステル、ナイロン、アクリルなど、数多くの多様な合成樹脂で形成された素材の総称です。

プラスチックは、その耐久性や加工のしやすさから軍用品として元々利用されていましたが、第2次世界大戦後の1945年ごろからは一般市民の生活に登場し始めます。軽くて丈夫で低価格という理由から、使い捨て容器や包装資材としてあっという間に人気を博しました。

しかし近年、「脱プラスチック」、すなわち「プラスチック製品を使わないようにしよう」「作るときはリサイクルを視野に入れよう」という考えが広まり始めています。

「脱プラスチック」が必要とされる理由の一つが、適切に処理されなかったプラスチックごみがもたらす環境汚染(海洋汚染・土壌汚染・大気汚染など)の問題です。

そもそもプラスチックは人工的な素材であり、自然界に存在する素材ではないため生分解性が低く、人間が焼却処分しない限りは自然環境中に長期間残存し続けてしまいます。

そのため、例えば海に捨てられた場合、長い間漂い続けます。それどころか海水に含まれる汚染物質を吸収しながら、波や紫外線によってマイクロプラスチック(5mm以下のプラスチック)となるため、より環境に大きなダメージを与えます。

また、私たちの健康に悪影響を与える原因の一つになっていることも、脱プラスチックが必要とされる理由です。

例えば、有害物質が付着したマイクロプラスチックを摂取した魚や動物を食べることによって、アトピーや不妊症などが引き起こされると言われています。私たちは1週間にクレジットカード1枚分のプラスチックを摂取しているというデータもあります。

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Getty Images

2.脱プラスチックの取り組み事例

プラスチックの生産が開始されてから、2015年までに世に送り出されたプラスチックの総量は約83億tと言われており、その生産量は毎年増加し続けています。

現代社会においてこれだけプラスチックが普及しているなかで、全プラスチックを生活からなくすことはほぼ不可能です。

しかし、プラスチックのなかには、使用時間が平均12分程度と言われるレジ袋のように、一度使っただけで捨ててしまう「使い捨て」もあり、脱プラスチックではその削減が大きな鍵となります。

では、実際に諸外国や日本はどのような取り組みをしているのでしょうか。

(1)諸外国の取り組み

①フランス

フランスは2016年、使い捨てのプラスチックカップ、カトラリー、皿、持ち帰り用のフード容器の製造と販売を禁止する法律を制定した世界初の国となりました。

法律で全ての使い捨て食器は家庭で堆肥(たいひ)化できるバイオプラスチックを50%以上含んだ素材で作られている必要があるとされ、2025年までにはその含有量を60%以上にしなければならないと定められています。バイオプラスチックとは、バイオマスプラスチック(再生可能な有機資源を原料とするプラスチック)と、生分解性プラスチック(微生物等の働きで最後は二酸化炭素と水になるプラスチック)の総称です。

また、使い捨て食器が禁止された同年、国内で毎年使用される170億枚のプラスチック製ポリ袋を削減するため、店舗がポリ袋を配布することも禁止しました。

現在、ほとんどの店では紙袋または再利用可能なプラスチックの代替品をそれぞれ数セントで提供しており、顧客にマイバッグの利用や紙袋の再利用を推奨しています。

②アメリカ

アメリカは州によって取り組みはさまざまですが、2007年にサンフランシスコ市でプラスチック製のレジ袋が禁止されました。

それをきっかけに、2014年にはカリフォルニア州で、小売店におけるプラスチック製のレジ袋を禁止する法律が成立。代わりに提供される紙袋にもリサイクル費用を課しています。州内では2019年から使い捨てストローも廃止され、違反者には1日あたり25ドル(約2900円)の罰金が科されます。

アメリカでは、現在サンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴ、ニューヨーク、ワシントン D.C、ボストンなどの主要都市が、国内の環境保全への取り組みを先導しています。

③ルワンダ

ルワンダは、10年以上前からプラスチック製の袋と包装の使用禁止を法律で定めており、脱プラスチックの先進国とみられています。

同国では、プラスチック製のアイテムを所持しているだけで、最長6カ月の懲役に処せられる可能性があります。また、国境の検査所では車両内のプラスチック製のポリ袋やパッケージが捜索され、プラスチック類があった場合は入国前に全て没収するほど脱プラスチックを徹底しています。 

(2)日本の取り組み

国内でも、2019年6月のG20大阪サミットにおいて、海洋プラスチックごみによる環境汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されたこともあって、環境問題に対する意識は高まっています。

特に大きなトピックは、「プラスチック資源循環戦略」の策定と「プラスチック資源循環促進法」の施行です。

①プラスチック資源循環戦略の策定

2019年5月に、地球規模の課題として大きく取り上げられている海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化問題などの解決策の一つとして、「プラスチック資源循環戦略」が策定されました。

「プラスチック資源循環戦略」の基本原則は、「3R+Renewable」(3R:リデュース=ごみの発生を減らす、リユース=繰り返し使う、リサイクル=資源として再び利用する)+リニューアブル=再生可能資源に替えることです。

2030年までに使い捨てのプラスチックの排出を累積で25%抑制し、容器包装の60%をリユース・リサイクルする▼2035年までに使用済みプラスチックの100%をリユース・リサイクルなどで有効活用することを目指す――といった内容が掲げられています。

この「プラスチック資源循環戦略」の具体的取り組みの第1ステップとして、みなさんの記憶にも新しい2020年7月のレジ袋有料化がスタートしました。

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レジ袋が有料となり、コンビニのレジ近くには告知のパネルが設けられた=2020年7月1日午前、東京都港区(撮影・朝日新聞)

②プラスチック資源循環促進法の施行

「プラスチック資源循環促進法」は、2022年4月から施行予定の法律です。

プラスチック資源循環促進法の目的は、プラスチック製品の設計・製造から廃棄物の処理に至るまでのライフサイクル全体を通じたプラスチック資源循環(3R+Renewable)の促進を図ることです。

プラスチック資源循環促進法が施行されると、これまで無料提供が当たり前だったホテルのプラスチック製の使い捨て歯ブラシやクシ、カミソリなどのアメニティも、有料化されます。

3.脱プラスチックのメリット・デメリット

ここまで見てきたように、世界の国々では脱プラスチックに向けて大きく動き出しています。

日本もまだスタートしたばかりですが、国民や民間企業の協力のもと、国の政策は少しずつ前進している状況です。

このように取り組みが着々と進められているのは、実は脱プラスチックが企業や個人にさまざまなメリットをもたらすからでもあります。

(1)脱プラスチックのメリット

①企業の場合

企業が脱プラスチックを進めることの一つ目のメリットは、新規顧客やリピーターの獲得です。

現代の消費者は、社会貢献に取り組んでいる会社を選ぶ傾向にあるとされています。

企業内で脱プラスチックを推進し始めると、最初は代替素材の導入により金銭的コストが増えることもあるでしょう。

しかし、コストをかけ、脱プラスチックにしっかりと取り組んでいくことで、それに対して共感する消費者が増えていきます。社会貢献をしている良い会社というブランディング効果によって、新規顧客の獲得、既存顧客のファン化が実現しやすくなるのです。

二つ目は、企業経営の持続的発展です。

脱プラスチックは環境への配慮やSDGsの達成につながるものですが、それらに目をそらし続ければ、新たな顧客獲得のチャンスを逃すばかりでなく、今順調な経営でさえいずれ立ち行かなくなるでしょう。

例えば、現在たくさんの雇用を支えている自動車産業をめぐっては、2050年までに市場の90%が電気自動車になるとの予測もあります。

もし環境への配慮を後回しにして、石油・ガソリンを主軸としたビジネスをし続ければ、企業として生き残ることは難しいでしょう。

脱プラスチックの推進は、企業経営の持続的発展への重要な第一歩なのです。

②個人の場合

個人が脱プラスチックに取り組む最大のメリットは、自分たちの健康被害を減らせるという点です。

使い捨てプラスチック問題は環境汚染にスポットライトが当てられがちですが、実は私たちの健康にも大きな影響を与えています。「海洋マイクロプラスチックによる生物濃縮」の問題です。

マイクロプラスチックとは、5mm以下の微小なプラスチック破片の総称で、海中の有害物質を表面に吸着させる特徴があります。

その有害物質が付着したマイクロプラスチックを小魚が餌やプランクトンと勘違いして食べる、その小魚を大きな魚や動物が食べる、その大きな魚や動物を私たち人間が食べる。

この食物連鎖により、プラスチック自体に含まれる有害物質と海中の有害物質を無意識に体内に摂取してしまい、アトピーやADHD、不妊症などさまざまな病気を引き起こす可能性があるのです。

短期的には影響が見えないかもしれませんが、一人一人が脱プラスチックを意識することは、長期的に自分たちの健康を大切にすることにつながっています。

(2)脱プラスチックのデメリット

ただ、脱プラスチックは良いことばかりがあるわけではありません。デメリットもあるため、推進する上では注意が必要です。

①企業の場合

プラスチック製品は紙や木、その他の素材より安価に手に入るため、脱プラスチックを進めると、原材料のコストが上がってしまうことが企業の大きな課題になり得るでしょう。

また、多くの企業が環境保全のためにプラスチック製の包装を減らし、他の素材のものに移行していますが、代替素材が本当にプラスチックよりも環境負荷が低いのか見極める必要があります。

例えば、ガラス瓶はプラスチックよりも重量があり、製造時と輸送時のCO2排出量はプラスチックよりも増える可能性があります。紙製の製品も不法森林伐採により作られた物があるほか、製造過程で児童労働が関わっているなど別の問題を生むことがありえます。

プラスチックごみによる海洋汚染への解決策として、個包装をやめるなど脱プラスチックに取り組むことには間違いなく意味がありますが、全ての環境課題を一気に解決してくれるソリューションはまだありません。脱プラスチックだけを考えるだけでは全ての環境問題を解決できないのが現状です。

②個人の場合

個人がプラスチックをできる限り使わない脱プラ生活を始めるとき、思った以上にプラスチックに囲まれていることに衝撃をうけるでしょう。今までの使い捨て生活から脱却するには、習慣を少し変える必要があるため不便さを感じることがあるかもしれません。

また、プラスチックを使っていない日用品やライフスタイルになじむブランドはまだまだ少ないのが実情です。ブランドチェンジをしたいときに選択肢が限られているのが、人によってはデメリットとなるでしょう。

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Getty Images

4.脱プラスチックを実現するためには

では、これから脱プラスチックを進めるためには、具体的に何をすればいいのでしょうか。ここでも企業と個人に分けて、ご紹介します。

(1)企業が取り組みたいこと

事業活動の過程で廃棄しているプラスチックごみを見直し、削減する方法を考えてみましょう。例えばボールペンやファイルなどの文房具、オフィス家具・収納小物など、社内で使うさまざまな素材について見直すことも有効です。

また、今使っている物を捨てて新しい物を購入するときには、代替品やより環境負荷の低い物がないか、社内で検討するステップをマニュアルに導入するのも良いことです。

以下、プラスチックの代替素材をご紹介します。

①FSC認証の紙類

FSC認証は、責任ある森林管理を審査・認証するとともに、その森林で生産された木材および木材製品を査定することを通じて、世界の森林を健全にすることを目的としています。

FSC認証のある紙を使うことで、企業は意図せずに違法伐採や生態系破壊に加担するリスクを削減できます。企業の名刺や製品カタログ、パンフレットにFSC認証紙を取り入れる企業が年々増えています。

②コーンスターチを原材料にしたバイオプラスチック

海外では、多くの企業がコーンスターチ(トウモロコシのでんぷん)を主原料にしたバイオプラスチックを梱包(こんぽう)材に使用しています。

トウモロコシは成長スピードが早く約1年で実がなるため、資源の循環率が高いとされています。また、コーンスターチは自然に分解される素材なので、土に埋めても分解されます。

(2)個人が取り組みたいこと

マイクロビーズを含むスクラブ入りの洗顔料や歯磨き粉を使ったり、アクリル、ポリエステル、ナイロンなどプラスチック製の衣類を洗濯したりする度に、マイクロプラスチックは海や川に流出しています。

個人がきょうから取り組める脱プラスチックは、毎日の生活で使う物の素材に着目し、廃棄のタイミングでプラスチック以外の代替素材に切り替えていくことです。その上で、できる限り使い捨てプラスチックごみを出さないライフスタイルを取り入れることです。

例えば、

・竹でできたキッチン用品を使う(竹は一般的な木材よりも成長速度が早く、一度植林をすると基本的に植え替える必要がないのと、CO2の吸収が早いため)
・繰り返し使える丈夫なステンレス素材で作られた日用品を選ぶ(使い捨てプラスチックごみを減らすため)
・オーガニックコットンや自然素材で出来た衣類を選ぶ(洗濯時のマイクロプラスチックの流出を防ぐため)
・フェアトレード認証やFSC認証、GOTS認証(オーガニックテキスタイル世界基準)を取っている商品やブランドを選んで買う

などがあげられます。

5.環境問題には個人の活動も不可欠

脱プラスチックと聞くと環境問題だけをイメージしがちですが、実は私たち一人一人の健康に直接的に関係のある話であり、決して「私には関係ない」と無視し続けることのできない課題です。

企業・組織、ひいては国が先導していく必要があることはもちろんですが、消費者が脱プラスチックに取り組んでいる企業を応援すること、そして個人が生活の中でできることをすることも地球規模の変化につながります。

脱プラスチックをはじめとする環境問題に対して、自分には何ができるか、自分の所属している組織・団体では何ができるか?を考えるきっかけにしてみてください。

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