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フェアトレードとは?意味や必要性、現状、気になる課題を一から解説

フェアトレードとは?意味や必要性、現状、気になる課題を一から解説
フェアトレードの仕組みと主な認証ラベル(デザイン:増渕舞)
フェアトレードガーデン世田谷/宮原桃子

SDGsの達成年である2030年まで、残すところ9年。世界一丸となって取り組みを加速させるため、国連は「行動の10年」を呼びかけています。カギの一つは、私たち消費者一人ひとりの行動です。エシカル消費が広がりを見せる中、注目される「フェアトレード」の現状や背景、課題、今後の展望について解説します。

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宮原桃子 (みやはら・ももこ)
有限会社エコネットワークスにて企業のサステイナビリティー推進を支援する傍ら、親子向けフェアトレード学習ワークショップを展開する「フェアトレードガーデン世田谷」の運営に関わる。日本貿易振興機構(JETRO)、フェアトレードブランド「ピープルツリー」を経て現職。子どもにフェアトレードを伝える絵本「ムクリのにじいろTシャツ」著者。

1.フェアトレードとは? 目的や意義から考える

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フェアトレード衣料品を作るネパールの生産者(ピープルツリー提供)

最近、身近なスーパーでも「フェアトレード」認証ラベルが付いたコーヒーを目にします。2月のバレンタインシーズンには、フェアトレードのチョコレートを見かけた方も多いのではないでしょうか。

フェアトレード(Fair Trade)とは、直訳すると「公正な貿易」です。

● 開発途上国の生産地で人びとや環境に配慮した方法で作られた原料や製品を、適正な価格で継続的に購入する
● それによって、立場の弱い開発途上国の生産者・労働者の生活改善と自立を目指す

こうした貿易の仕組みを指します。

フェアトレードが目指しているのは、消費者や生産者をはじめ、貿易に関わるすべての人や地球に対して公正であること、その中でも特に立場の弱い開発途上国の生産者に対して公正であること、それらを通して貧困のない公正な社会を実現することです。

まさに、SDGsがスローガンに掲げる「誰一人取り残さない」ことを目指す貿易の形と言えます。

2.フェアトレードの背景:アンフェアな貿易構造や生産環境

フェアトレードの始まりは、第2次世界大戦後にアメリカの国際協力NGOが、プエルトリコの女性たちの生活支援として、手工芸品を購入・販売したことがきっかけでした。その後、開発途上国の人びとの経済的自立を支援する仕組みとして、世界に広がりました。

一方、1970年代ごろからグローバリゼーションと価格競争が加速する中で、植民地時代から続く先進国と開発途上国の不公平な関係性は強まりました。

開発途上国の生産者は、優位な立場にある先進国の買い手企業によって不当に買いたたかれ、労働やコストに見合わない価格や条件を強いられる状況がさらに広がっていったのです。

不均衡な貿易構造の中で、開発途上国では、劣悪な労働環境や環境破壊の問題も引き起こされてきました。

象徴的な例は、2013年にバングラデシュで起きた「ラナ・プラザ崩壊事故」です。複数の縫製工場が入った8階建てのビル「ラナ・プラザ」が崩壊し、1130人以上が死亡、2500人以上が負傷しました。

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2013年にバングラデシュで起きた「ラナ・プラザ崩壊事故」の現場(撮影・朝日新聞)

死者の多くは、縫製工場の労働者でした。労働者たちが壁のひび割れなどを指摘していたにもかかわらず、工場が操業を続けた経緯から、工場に衣料品を発注していた先進国のアパレルブランド約30社の責任と対応も厳しく追及されたのです(参考:Rana Plaza│Clean Clothes Campaign)。

劣悪な労働条件を強いられてきた生産現場の悲劇が、世界のサプライチェーン全体の構造的な問題として大きな注目を浴びました。

これは氷山の一角であり、開発途上国の生産現場では、強制労働、児童労働、低賃金や未払い、長時間労働、安全や衛生が不十分な労働環境など、さまざまな課題があります。

例えば、児童労働に従事する子どもの数は、コロナ禍による親の収入減少や休校などの悪条件が重なり、2020年には20年ぶりに増加し、推定1億6000万人に上っています(参考:世界の児童労働者数1億6,000万人に、この20年で初の増加│ILO)。

また、生産地における環境破壊も、長きにわたって放置されてきました。

例えば、「世界第2位の環境汚染産業」とされるファッション産業では、ジーンズ1本作るのに約7500リットルの水を消費するという報告もあります(参考:国連、ファッションの流行を追うことの環境コストを「見える化」する活動を開始│国際連合広報センター)。コットン栽培が引き起こす水資源の枯渇や、農薬や化学肥料による土壌汚染、染色による水質汚染など、さまざまな課題を予防・改善するためのコストは価格に反映されず、誰も責任を取らないまま、環境破壊が進んできました。

こうした従来の貿易にまつわるさまざまな課題を背景に、フェアトレードを求める動きが広がってきたのです。

3.フェアトレードの条件とは? ポイントを深掘り

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カカオを収穫するボリビアのフェアトレード生産者(ピープル・ツリー提供)

フェアトレードは、具体的にどのようなことを推進しているのでしょうか。世界フェアトレード連盟(WFTO)では、フェアトレード組織が守るべき10の原則を掲げています。

1. 生産者に仕事の機会を提供する
2. 事業の透明性を保つ
3. 公正な取引を実践する
4. 生産者に公正な対価を支払う
5. 児童労働および強制労働を排除する
6. 差別をせず、男女平等と結社の自由を守る
7. 安全で健康的な労働条件を守る
8. 生産者のキャパシティ・ビルディングを支援する
9. フェアトレードを推進する
10. 環境に配慮する
(WFTO加盟企業「フェアトレード・カンパニー(ピープルツリー)」による和訳。参考:WFTO「フェアトレードにおける10の原則」

いくつかの原則を例に、「フェアトレードならでは」とも言える特徴を解説します。

1. 生産者に仕事の機会を提供する
貧しさから脱するためには、教育や医療福祉などのインフラも欠かせませんが、自分自身で食べていける仕事があることが重要です。一方的な寄付や援助ではなく、真の自立を目指すアプローチです。

3. 公正な取引を実践する
社会・経済・環境面における配慮は当然のことながら、この原則では「お互いを尊重した、長期的な関係を維持すること」を掲げています。いくらフェアな取引でも、たった一度きりで終わってしまえば、生産者の持続的な経済的自立にはつながらないからです。

また、貧しい生産者は、原料調達の資金もないケースがあるため、買い手企業は必要に応じて一部前払いすることも定められており、生産者との信頼関係や長期的なコミットメントが求められています。

4. 生産者に公正な対価を支払う
「公正な対価」とは、国や地域、労働者の作業内容やスキル、生活水準などによって異なるため、その対価を決めるプロセスが重要です。

例えば賃金について、人間らしい適切な生活水準を維持するために必要な「生活賃金」を保証するには、生産者との間でさまざまな情報や対話が必要になります。生産者への尊重や対等なパートナーシップが欠かせません。

8. 生産者のキャパシティ・ビルディングを支援する
開発途上国の小規模な生産者たちは、資金や技術などが十分でないケースが多くあります。

例えば、高品質を求める日本市場に輸出するとなれば、さまざまな面で改善していかねばなりません。フェアトレードでは、問題があったら取引停止ということではなく、買い手企業が長期的な視点で技術や品質管理、マーケティングなどの指導・サポートを行い、粘り強く支援しています。

また、買い手企業が地域コミュニティー全体に対して、教育や医療、インフラなどの支援活動を行っていることが多いのも特徴です。

4.フェアトレードにはどんな商品がある? 認証は?

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代表的なフェアトレード商品には、コーヒー、チョコレート、バナナ、衣服などの綿製品があります。その他にも、紅茶、砂糖、ワイン、アイスクリームなどの食品、アクセサリー、バッグなどのファッション製品、バラ、サッカーボールなど、幅広い分野にわたります。

しかし、私たち消費者は、どのようにしてフェアトレード商品を見分ければいいのでしょうか。一つの参考基準として、商品に付いている認証ラベルがあります。

(1)WFTO認証ラベル

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WFTOのロゴ(WFTO提供)

世界フェアトレード連盟(WFTO)に加盟し、生産者の労働条件、賃金、児童労働、環境などに関して基準を満たしていると認められた組織が、原料調達から製造などすべての生産工程においてWFTOが定める10原則を順守していることを保証するラベルです。

商品ごとではなく、組織全体でフェアトレード基準を順守している場合のみ取得できることが特徴。

世界79カ国429組織が加盟(2020年時点)しており、日本の加盟組織には、フェアトレードカンパニー(ピープルツリー)シサム工房ワンプラネット・カフェNPO法人東アジア共生文化センターがあります。

(2)国際フェアトレード認証ラベル

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原料生産から輸出入、加工、製造工程を経て「フェアトレード認証製品」として完成品となるまでの各工程で、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベルです。

フェアトレード最低価格や、生産地域の社会発展のための資金「フェアトレード・プレミアム(奨励金)」の支払いを生産者に保証しているのが特徴の一つ。対象品目が定められており、コーヒーやカカオ、バナナをはじめとする食品、コットン、花、スポーツボールなどが対象です。

商品ごとの認証であるため、一般企業などが導入しやすいのも特徴。参加組織は世界101カ国に広がり、1880以上の生産者組織が認証を受けています(2020年時点)。

(3)その他

その他にも、日本で流通している認証ラベルとしては、アウトドアウェアブランドのパタゴニアが取得している「フェアトレード・サーティファイド」(Fair Trade USAによる認証)などがあります。

また、独自の基準を持つフェアトレード団体や、認証取得のコストや手間を負えない小規模な団体など、認証はなくとも、しっかりとした情報開示をしながらフェアトレードに取り組む団体もあります。

5.世界や日本のフェアトレード市場と取り組み

フェアトレード市場や関連する取り組みは、年々広がりを見せています。

(1)拡大する市場規模、高まる知名度

フェアトレード・ラベル・ジャパンによると、世界でも有数のフェアトレード市場であるドイツの市場規模は、2020年に2374億円に達しました。日本でも、2020年は131億円規模の市場となり、コロナ禍においても前年比106%となりました(参考:【国内海外フェアトレード市場動向】国内市場規模131.3億円とコロナ禍にも関わらず伸張│PR TIMES)。

日本におけるフェアトレードの知名度も約5割に達し、2人に1人がフェアトレードを知っていることになります(参考:東京経済大学の渡辺龍也教授による調査)。

フェアトレードに取り組む組織も増えています。日本で長年フェアトレードに取り組んでいる企業・団体は、ピープルツリー、第3世界ショップ、シャプラニール、ネパリ・バザーロ、シサム工房、オルター・トレード・ジャパン、わかちあいプロジェクトなどがあります。

また、一般企業でも、スターバックスコーヒーやゼンショーグループなどの外食チェーン、イオングループなどの小売りチェーン、パタゴニアなどの衣料品企業、ナチュラルローソンやセブンイレブンなどのコンビニ、日本生活協同組合連合会(コープ)など、フェアトレード商品を取り扱う企業が増えています。 

(2)地域に広がる「フェアトレードタウン」の動き

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東京都世田谷区で活動する「フェアトレードタウン世田谷推進委員会」の勉強会(フェアトレードタウン世田谷推進委員会提供)

フェアトレードを普及しようという動きは、地域にも生まれています。

「フェアトレードタウン運動」では、市民、行政、企業・商店などが一体となって、地域全体でフェアトレードの普及に取り組み、サステイナブル(持続可能)な街づくりを目指しています。フェアトレードタウン認定基準に基づいて、各地域の第三者機関によって認定されています(日本の認定機関は「日本フェアトレード・フォーラム」)。

2000年にイギリスで誕生した「フェアトレードタウン」は、今では世界30カ国以上、2100都市以上に達し、ロンドンやパリ、ローマ、台北、ソウルなどの大都市も含まれています。

日本では、熊本市、札幌市、神奈川県逗子市、浜松市、名古屋市、三重県いなべ市の6都市が認定を取得しています。現在、金沢市や新潟市、千葉市、東京では武蔵野市や世田谷区など、約30の市や町が認定に向けて動いています。

その他にも、大学単位でフェアトレードを推進する「フェアトレード大学」や、高校以下の「フェアトレードスクール」の認定もあります。

日本では、静岡文化芸術大学、札幌学院大学、北星学園大学、青山学院大学がフェアトレード大学の認定を取得しています。これらの大学では、学食などでフェアトレードコーヒーが購入できたり、学生たちが大学オリジナルのフェアトレード商品の企画・販売を行ったりといった取り組みを進めています。

(3)世界で進むサステイナビリティーの動き、フェアトレードのこれから

広がりを見せるフェアトレードですが、今後どのような展望があるのでしょうか。

世界や日本でのサステイナビリティーへの関心は、特にSDGsが採択された2015年ごろを境に急激に高まっています。

環境・社会・ガバナンスを重視するESG投資は、日本でも約514兆円規模、国内総運用資産残高の6割超を占めており、多くの企業でサステイナビリティーが最優先課題の一つとなっています(参考:サステナブル投資残高アンケート 2021 調査結果 │NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム)。

気候変動対策はさることながら、今、産業界で重視されているのが「ビジネスと人権」です。サプライチェーン全体における人権尊重、サプライヤーからの倫理的な調達が重要なテーマとされる中、フェアトレードはさまざまな面でより深いコミットメントを示すものとして、最先端にあると言えます。

6.フェアトレードが直面する問題点は? 二つの課題

一方、今後に向けていくつかの課題もあります。

(1)認知と行動の間にあるギャップ

一つ目は「知っている」と「実際に買う」の間にあるギャップです。

前出の認知度調査によると、フェアトレードを認知している人のうち、実際に購入したことがあるのは約3割です。安さを優先せざるを得ないお財布事情などもあるでしょう。しかし、ゼロか100かではなく、一人ひとりが「できる時に、できることから」を意識して、自身の選択について考えることが大切です。

日本においても、フェアトレードをはじめとするサステイナブルなブランドや商品が増え、こうした商品を選べる店舗やサイトなどの選択肢が増えているので、今後はより消費につながっていくことが期待されます。

(2)グリーンウォッシュやSDGsウォッシュの増加

二つ目は、社会全体で、実態が伴っていないのにサステイナブルであるかのように見せかける「グリーンウォッシュ」「SDGsウォッシュ」と呼ばれるケースが増えていることです。

欧米では、こうした事例に対する規制の動きも広がり始め、投資家や消費者からの厳しい視線もあります。

フェアトレードについても、企業・団体は透明性の高い情報開示が求められ、また消費者もその企業や団体が適切に取り組んでいるのか、きちんと情報を開示しているかなど、しっかりチェックしていく必要があるでしょう。

7.モノを選ぶ=未来を選ぶ 消費者と企業でタッグを

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消費者がどの商品を購入するかは、企業への「1票」になり、社会を変える力になります。私たち一人ひとりは、誰もが消費を通じて「社会そして未来を変える力」を持っているのです。

モノを選ぶことは、未来を選ぶこと。サステイナブルな未来への選択の一つに、フェアトレードがあります。サステイナブルな社会の実現に向けて、社会のあらゆる活動に関わる「消費者と企業」がタッグを組んで、ともに行動することが重要なカギを握っています。

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