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GIGAスクール構想とは? 目的やメリット、実現のポイントを解説

GIGAスクール構想とは? 目的やメリット、実現のポイントを解説
GIGAスクール構想の定義と実現のメリット(デザイン:吉田咲雪)
フューチャーインスティテュート代表取締役/為田裕行

GIGAスクール構想とは、1人1台の情報端末を小中学校に配備し、子どもたちの学びの形をアップデートするものです。構想の実現によって、先生の仕事や子どもたちの学びはどのように変わるのか。学びをアップデートするために、学校に関わる人たちは何ができるのかについて考えます。

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為田裕行(ためだ・ひろゆき)
フューチャーインスティテュート株式会社 代表取締役、教育ICTリサーチ 主宰。幼稚園・小学校・中学校・高校・大学の教壇に立つと共に、学校向けの教育コンサルテーション、教材・サービスの監修を行っている。著書『学校のデジタル化は何のため?』(2022年 さくら社)、『一人1台のルール』(2021年 さくら社)、共著『学校アップデート 情報化に対応した整備のための手引き』(2020年 さくら社)

1.GIGAスクール構想とは

GIGAスクール構想とは、1人1台の情報端末を全国の小学校と中学校に配備し、学校において新しい学びの形を実現するための構想です。2019年12月に、文部科学省から発表されました。

文部科学省が発行しているリーフレット「GIGAスクール構想の実現へ」のなかでは、「1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する」「これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す」と、目指すところが示されています。

GIGAスクール構想は、新型コロナウイルス感染症への対策で学校が休校措置をとられたときに前倒しにされたこともあり、「オンライン授業のため」と捉えている学校もありますが、より広範囲にさまざまな学びの場面を変えることを目的としています。

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1人1台の端末で学ぶ小学生(撮影・朝日教之)

2.GIGAスクール構想のメリット

1人1台の情報端末が整備されることで、児童生徒はいつでもどこでも端末を使うことができるようになりました。今までのようにコンピューター教室に行く必要も、他のクラスと使う授業の時間割を調整する必要もなくなりました。

このことは、先生にも、児童生徒にも、メリットがあります。

(1)先生(=教える側)のメリット

①一人ひとりの習熟度にあった授業の実現がしやすい

授業をする先生のメリットとしては、一人ひとりの習熟度にあった形で学びを進められる授業の実現がしやすいことです。

例えば、1人1台の情報端末を使って活用されるデジタルドリルの多くは、一人ひとりの学習履歴に基づいて、問題を自動で出し分けることができます。自動採点や採点に基づく自動出題も可能で、学年をさかのぼって復習をすることもできます。

②授業支援ツールを活用できる

1人1台の情報端末によって、授業支援ツールをどの授業でも活用できるのもメリットです。

教材を全員の端末に瞬時に送り、児童生徒は自分の端末で文章を書いたり、数字を分析したりして、それを先生に簡単に提出できるようになりました。

これは、ただプリント配布と提出が楽になった、ということにとどまらず、授業の様子が大きく変わることにつながります。

例えば、今までならば手を挙げて発言しなければならず、恥ずかしくて意見を言えなかった子の意見は、授業の中で取り上げられていませんでした。しかし、授業支援ツールを使うと、その子が書いた意見をみんなが見られるようになるので、いままでよりもずっと多くの意見や考えを授業中にやりとりできるようになります。

インターネットに接続してさまざまなコンテンツを見ることもできるようになり、板書でわかりにくかったことを動画で説明したり、最新のニュースを教材として使ったりできるようにもなってきています。

(2)児童生徒(=学ぶ側)のメリット

授業を受ける児童生徒の最大のメリットは、表現と思考のアウトプットが増えることと、試行錯誤を恐れずにいろいろな表現に取り組めることです。

例えば、漢字が書けないから作文が嫌いだった子や、字が汚いから作文が嫌いだった子が、キーボードを使ってどんどん文章を書けるようになることもあります。

また、文章を書き直す推敲(すいこう)作業もデジタルの方がずっと簡単なので、授業中にも文章を書き直す作業をどんどんするようにもなります。ある子は文章を書くだけでなく、自分で撮影した写真をつけて表現できるようになりました。

データ活用なども同様です。理科の実験や社会科の統計データなどを表にまとめてグラフ化したり、将来の予測を推計したりするときには表計算ツールを使うことができます。これまで手作業でしていた単純な計算のくりかえしをデジタルで行うことで、浮いた時間で計算の結果を分析し、その成果をディスカッションすることもできます。

GIGAスクール構想によって配備された1人1台の情報端末は、児童生徒の思考や表現の道具として活用され始めています。

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小学校の国語の授業。各自がネットで検索した詩などを文書作成ソフトに貼り付け、「詩集」にしていく(撮影・朝日新聞)

3.GIGAスクール構想実現のポイント

教える先生にも、学ぶ児童生徒にもメリットがある、GIGAスクール構想による1人1台の情報端末の配備ですが、まだまだ活用が進んでいない学校も多くあります。

では、何がGIGAスクール構想実現のポイントになるのでしょうか?

(1)「デジタルは不可欠だ」という価値観をもつ

そもそも、先生方がデジタルをどんなものだと考えているかが大切です。「デジタルは、あれば便利なもの」程度の認識であれば、「なくても授業ができる」と思っても無理はありません。

しかし、いまの子どもたちが社会に出る頃には、デジタルを武器として使いこなせるようになっているほうが、自己実現のための選択肢は明らかに広がるでしょう。

そのためには、まず「小学校・中学校でデジタルを思考と表現の道具として使えるようにならなくてはならない。だから、1人1台の情報端末が配備されているのだ」という価値観を、先生方がもつことが必要です。

(2)デジタルを使いやすい環境を作る

デジタルを道具として使いこなして社会で活躍できる子どもたちを育てるために、デジタルを使いやすい環境・ルールを作ることも重要です。

例えば、授業中、先生が教えてくれた事柄についてもっと知りたくなったときに、わざわざ「先生、それ検索していいですか?」と質問してから情報端末を使う授業と、いつでも気になったことは調べてみていい授業と、どちらのほうが子どもたちが主体的に学んでいる授業と言えるでしょうか。

子どもたちが遊んでしまうから、興味がそれてしまうから、と心配して、いろいろなアプリを禁止したり、ルールでガチガチに縛ってたりしても、いいことはないでしょう。

他者を傷つけてはいけない、学びと関係ないことはしない、など最低限のルールは必要ですが、そのなかで子どもたちに自由に学びの道具としてデジタルを活用してもらうほうが、より深い学びにつながります。

また、使いやすい環境を作るためには、児童生徒が校内でインターネットにストレスなく接続できるように校内LANの整備や、安全にインターネットに接続するための情報セキュリティ対策も必要です。

文部科学省では「校内LAN整備の標準仕様書」や「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を公開していますが、これらはインターネットに詳しい学校の先生が行う、というのではなく、プロフェッショナルの手を借りるのが一般的です。学校でどのような環境を作りたいのかをプロフェッショナルに伝え、整備してもらいましょう。

(3)できないことを練習する時間をしっかりとる

デジタルを自由に使えるようになるためには、きちんとしたスキルがなければいけません。アプリの操作の仕方やキーボード入力などを練習をする時間を、ある程度とることも必要です。

漢字練習、作文の書き方、計算の練習と同じように、授業で情報端末を使う機会が増えれば、簡単に克服できます。「いまはできないけれど、できるようになるべきこと」を教えるのは、学校がこれまでも果たしてきた役割です。

4.GIGAスクール構想の問題点と解決策

GIGAスクール構想実現のポイントをしっかりおさえていくために、学校に関わる自治体・先生・家庭・企業というそれぞれの主体は、どのようなことができるでしょうか。

(1)自治体にできること

何よりもまず、現場の先生方、児童生徒が使いやすい環境を整えるために予算を確保することです。日常の学びで1人1台の情報端末を使いやすい環境を作るのにも、学びに役立つコンテンツやシステムを導入するのにも、予算がかかります。

また、実際の取り組みについては、文部科学省のウェブサイトで自治体の事例が紹介されているので、それを参考にするといいでしょう。

なお、家庭環境や地域文化によって、子どもがどれくらいデジタルに慣れ親しんでいるのかが変わるため、とくに小学校に対しては、すべての学校で一律で同じことをやらせようとしないほうが無難です。

中学校くらいであれば、小学校でデジタルをしっかり使ってきた子が中学校に入学するようになるので、家庭でのデジタル環境や小学校でどのように使ってきたのかを情報共有することで、スムーズに接続できるようになります。

(2)先生にできること

文部科学省や各教育委員会で、すでにいろいろな授業事例が公開されています(例:教育ICT活用実践事例│文部科学省)。

まずはそれらの事例を見てみて、自分たちで使ってみることが大切です。最初から全部がうまくいかなくてもいいので、使ってみて、それが授業をどのように変えるのか、児童生徒たちの学びがどんなふうに変わるのかを体験してみるといいでしょう。

授業中に少し操作方法がわからなくなってしまっても、教室内で子どもたちが助けてくれることもたくさんあります。最初は大変ですが、しっかりスキルが身につけば、その後は日常で使えるようになります。そうしたチャレンジを、学校の管理職の先生方と同僚の先生方はぜひ後押しをしてください。

(3)家庭にできること

デジタルを使って新しい学びを作り出そうとしている学校のチャレンジを応援してください。保護者世代が学んでいた時代とは違う、ということを理解することが大事です。

例えば、授業参観に行って、授業支援ツールを使って意見のやり取りをしている様子を見たら、「キーボードを打つ音だけしかしていなくて冷たい感じがする」というような感想を持ってしまうこともあるかもしれません。でも、見たところ静かな教室でも、いままでは手を挙げて発言ができなかった子が自分の考えを懸命に書いている授業なのかもしれないのです。

ですので、もし授業のあり方に疑問を持ったら、まずはなぜ、こうした授業が行われているのか、先生に直接質問してみることをおすすめします。

また、子どもたちからも様子を聴いてみてください。もしかしたら、「デジタルを使った授業のほうが楽しい!」という感想が聞けるかもしれません。

いずれにしても、まずは理解を示す行動をすることが、新しい学びを作り出そうとしている学校の支援につながり、ひいては子どもたちの将来に必要なスキルの向上につながります。

(4)企業にできること

授業支援ツールや教材コンテンツの提供などで、多くの企業が学校に関わっています。

企業の方にできることの最初の一歩は、「主役は学校であり、学習者である子どもたちであること」を理解することです。企業が作ったサービスやコンテンツのために学校があるのではなく、学校のためにサービスもコンテンツもあります。

いちばん子どもたちのことをわかっているのは先生です。まずは、先生たちの「授業でこういうことやりたいんですよね……」という悩みを丁寧に聞くことが大切でしょう。

5.1人1台はゴールではなくスタート

GIGAスクール構想による1人1台の情報端末の配備は、急速に進みました。

しかし、ここはゴールではなくスタートです。児童生徒がデジタルを思考の道具、表現の道具として使いこなせるようになってから社会に出られるように、それぞれの立場でできることをしていくことが求められます。

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