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児童労働とは 現状や原因、世界・日本の取り組み、主な解決策を紹介

児童労働とは 現状や原因、世界・日本の取り組み、主な解決策を紹介
児童労働の現状と私たちにできること(デザイン:増渕舞)
ヒマラヤ青少年育英会・ヒマラヤ小学校/吉岡大祐

世界では1億6000万人の子どもが働いています。私たちが何げなく食べたり、使ったりするモノのなかにも、サプライチェーンをさかのぼった先に「児童労働」が存在するものが少なくありません。この記事では、児童労働の定義や現状、原因、各国の取り組みを整理し、私たちにできる主な解決策もご紹介します。

art_00342_著者_吉岡大祐さん
吉岡大祐(よしおか・だいすけ)
1976年生まれ。1998年に鍼灸(しんきゅう)師免許取得後、22歳でネパールへ渡り、大学で学びながらヒマラヤ青少年育英会を立ち上げ、支援活動をはじめる。2004年、日本の高校生の協力のもと“誰もが無償で学べる”「ヒマラヤ小学校」を開校。運営責任者として学校運営を行う傍ら、企業や学校で国際協力に関する講演を行っている。著書に『ヒマラヤに学校をつくる~カネなし、コネなしの僕と、見捨てられた子どもたちの挑戦』(旬報社)

1.児童労働とは

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粉じんにまみれながられんが工場で働く男の子(筆者提供)

児童労働とは、子どもの教育機会や健全な成長を妨げる労働のことを指し、国連の「子どもの権利条約」やILO(国際労働機関)条約など国際条約で禁止されています。

ただ、子どもが働くことがすべて児童労働にあたるわけではありません。ILOは、義務教育を妨げる15歳未満の子どもの労働と、18歳未満の危険で有害な労働のことを、児童労働と定義しています。教育機会を失うことなく、適正な対価が支払われる労働や子どもの成長の助けになるような労働は、児童労働には該当しません。

子どもの教育機会と健全な成長を妨げる主な児童労働は、次のとおりです。

● 劣悪な環境での長時間労働
● 親の借金のかたに無給で働かせる債務労働
● 人身売買による性産業での強制労働
● 子ども兵として軍事行動に参加させること

2.児童労働の現状

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幼い妹の世話をしながら工場で働く女の子(筆者提供)

次に、今の児童労働の実情について見ていくことにしましょう。ユニセフ(国連児童基金)とILOが2021年6月に発表した報告書、『児童労働:2020年の世界推計、傾向と今後の課題(原題:Child Labour: Global estimates 2020, trends and the road forward)』をもとにご紹介します。

(1)児童労働の人数

報告書によると、全世界で働く子ども(5~17歳)の数は、途上国を中心に1億6000万人(男子9700万人、女子6300万人)いると推計されています(参照:同報告書p.12)。

日本の人口よりも多く、実に世界の子どもの10人に1人が児童労働にたずさわっているのが現状です。近年、その数は減少傾向が続いてきたものの、2020年には増加に転じました。特に5歳から11歳の児童労働者数が増えていて、全体の半数を占めています。

児童労働にたずさわる子どものうち、約半数の7900万人が建設や解体現場、砕石場をはじめ、人身売買や子ども兵など、健康や安全が脅かされる危険有害労働(ILOが1999年に制定した182号条約において最悪の形態とされる労働)に従事していると報告されています。

私がネパールで活動する中でも、施錠された薄暗い部屋に閉じ込められ、1日に10時間以上、粉じんに塗れながら石を砕く作業をさせられている子や、親の借金返済のかたに債務奴隷として無給で働かされている子などを目の当たりにしました。

(2)児童労働が多い地域

地域ごとの児童労働者数では、半数以上にあたる8660万人がサハラ砂漠より南のアフリカ地域に存在し、およそ4人に1人の子どもが児童労働にたずさわっています。ついで中央・南アジアの2630万人、東・東南アジアの2430万人、北アフリカ・西アジア1010万人、ラテンアメリカ・カリブ諸国820万人となっています(参照:同報告書P.22)。

2012年まで児童労働者数はアジア・太平洋地域に集中していました。しかし2016年以降、人口増加や貧困、内戦や紛争など複数の危機が重なり社会状況が悪化したことで、現在はサハラ以南のアフリカ地域が最多となっています。

(3)児童労働の産業別の割合

児童労働にはさまざまな形態があります。全体の約70%(1億1210万人)の子どもはカカオ工場やコーヒー農園など農林水産業にたずさわっています。残りの約20%(3140万人)は家事使用人やゴミ収集などのサービス業で、約10%(1650万人)は縫製工場などの製造業で働いています(参照:同報告書p.38)。

3.児童労働の原因

では、なぜ児童労働が行われているのでしょうか。直接的な原因は貧困です。生きるため、家族を養うため、子どもたちは働かなければならない状況にあります。

一方、雇用主にとって子どもは、安い賃金で働かせることができるだけでなく、こき使いやすく、捨てやすい手軽な労働力として都合がよいという面もあります。

また貧困以外にも「教育を受けてもおなかを満たすことはできない」「親を助けるために働くべきだ」「女子が教育を受けると神さまのたたりがある」といった社会慣習や、教育に対する関心の低さも児童労働の原因となっています。

4.児童労働に対する世界・日本の取り組み

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ゴミ捨て場でプラスチックを集める少女(筆者提供)

児童労働によって子どもが教育機会を失うと、知識や技術を身につけることができず、低賃金で不安定な職にしか就くことができません。結果、貧困から抜け出すことが困難となり、さらなる貧困を生み出す「負の連鎖」を引き起こしてしまいます。

こうした児童労働に対して、世界の国々や日本では実際にどういった取り組みをしているのか、見ていきましょう。

(1)世界の取り組み

①国際条約による禁止

児童労働の禁止や子どもの保護に関する国際条約は三つあり、多くの国が批准(条約を認めて、実行することを約束)しています。

就業最低年齢に関する条約(ILO 第138号 1973年)
● 最低就業年齢は義務教育終了後の15歳
● 軽労働については、一定の条件の下に13歳から15歳も可能。18歳未満の有害危険業務の禁止
最悪の形態の児童労働に関する条約(ILO 第182号 1999年)
● 人身売買、徴兵を含む強制労働、債務労働などの奴隷労働
● 売春、ポルノ製造、わいせつな演技に使用、あっせん、提供
● 薬物の生産、取引など不正な活動に使用、あっせん、提供
● 児童の健康、安全、道徳を害する恐れのある労働
子どもの権利条約(以下の項目をもとに子どもの権利を認める条約/国連 1989年)
● 生きる権利
● 育つ権利
● 守られる権利
● 参加する権利

②SDGs(持続可能な開発目標)による目標設定

SDGsは国連に加盟する193の国が2016年から2030年までの15年間で達成するために掲げた目標で、17の目標と169のターゲットから構成されています。2015年9月の国連総会で、全会一致で採択されました。目標8では、2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくすことが設定されています。

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ターゲット8.7
むりやり働かせること、奴隷のように働かせること、人を売り買いすることを終わらせるために、効果的な取り組みを緊急に行い、子どもを兵士にすることを含めた最悪の形の児童労働を確実に禁止し、なくす。また2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくす。

③世界各国の取り組み

ガーナでは学校の出席状況や労働現場での危険労働の監視システム、また子どもを保護する条例の制定など、児童労働をなくす仕組みを構築した地域を「児童労働のフリーゾーン」として認定する取り組みを進めています。

ラオスでは児童労働の実態把握のため国際機関と連携した調査が始まるなど、世界各国で児童労働をなくすための活動が活発に行われています。これらの取り組みには日本のJICA(国際協力機構)が関わっています。

企業では、スイスの食品大手ネスレが2009年、カカオの持続可能な調達を実現するために農業従事者を支援する「ネスレカカオプラン」を立ち上げ、ガーナやインドネシアなどのカカオ生産者コミュニティーへの支援を開始。2012年からは児童労働をモニタリングし、改善要請する仕組みをつくりました。サプライチェーンにおける児童労働者数を大幅に減らし、農園で働いている子どもたちに教育を提供しています。

またイギリスのコスメブランド・LUSH(ラッシュ)は、ラメやグリッターの原料として使われる天然マイカの採掘の過程で、児童労働が起きていることが判明したことを機に天然マイカの使用を中止。合成マイカを使うことを宣言しました。

(2)日本の取り組み

日本では児童労働が法律で禁止されています。労働基準法をはじめ児童福祉法、児童買春・児童ポルノ禁止法、青少年保護育成条例などを元に取り締まりが行われているほか、教育基本法では義務教育が9年間と定められています。

2014年には「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が施行され、「教育の支援」「生活の支援」「保護者の就労の支援」「経済的な支援」の四つを柱に、政府による貧困対策も進んでいます。また、民間やNPO団体による学習支援や居場所の提供、食品や生活必需品の配布といった支援活動も行われています。

5.児童労働の解決策 私たちにできることは?

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親を助けるため建設現場で働くきょうだい(筆者提供)

最後に、私たち個人が児童労働の解決に向けてできることをご紹介します。

(1)現実を知り、伝えていくこと

児童労働に関する情報を集めるなど、小さなことからでもいいので働く子どもたちの現実を知ることが、まず何といっても重要です。また、それらの情報を周囲の人々に伝えていくことも、社会全体で児童労働に対する関心を高めるために欠かせません。

例えば、児童労働ネットワークgooddoでは、児童労働の現状を随時発信しています。そこで発信された内容をSNSを使ってシェアしたり、自分であらためてまとめてブログに投稿したりするのも有効な方法です。

(2)フェアトレード商品の購入

フェアトレードは世界中でNGOが主体となって進めている「公平な貿易」形態です。企業と生産者が合意にもとづき、生産地の環境にふさわしい生産活動と、労働に見合った賃金を前提とした価格で取引を行うものです。フェアトレードの商品を積極的に購入することが、児童労働から子どもを守る力になります。

代表的なフェアトレード商品は、コーヒーや紅茶、スパイス、果物・加工果物、コットン製品などです。国際フェアトレード認証ラベルやフェアトレード団体のマークがついているもの、認証ラベルがなくても企業や団体が独自に基準を設定しているものがあります。

フェアトレード商品は、身近なコンビニやスーパー、オンラインショップで購入することが可能です。

コンビニのナチュラルローソンでは、フェアトレードのチョコレートなどが販売されています。スーパーではイオンのプライベートブランド・トップバリュからフェアトレードのコーヒー豆や紅茶、ジャムなどが販売されているほか、輸入食品を扱っているKALDI(カルディ)でも多くのフェアトレード商品が並んでいます。

また、オンラインショップには、楽天グループが運営しているEARTH MALL with Rakutenや一般社団法人わかちあいプロジェクトが運営するfair selectなどがあります。

(3)NGO活動に参加する

児童労働問題に取り組んでいるNGOの活動に参加することは、理解を深める上で大いに役立ちます。NGOが実施している手紙の交換などの交流事業を通して、お互いをよく知り合うことが理解を生み、心を動かし、さらに周囲を動かす力になるはずです。

ACE[エース]シャプラニール=市民による海外協力の会といった団体がありますので、ウェブサイトを一度見てみることをおすすめします。

6.未来を収奪された子どもたちのために

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私たちの行動が子どもたちの未来を変えます(筆者提供)

口減らしのため工場へ売られた子、幼い妹をおぶったままれんが工場で働く子……。つま先立つ場所すら奪われた貧しい子どもの姿は、私たちの胸を深くえぐります。貧困は常に弱い立場の子どもたちに襲い掛かるのです。

児童労働によって未来を収奪された子どもたちのために私たちができること。それは一人ひとりが当事者意識をもって、関わり続けることではないでしょうか。私たちの小さな行動が、いつか1億6000万人の子どもたちの未来を変える力になると強く信じています。

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