【Jリーグ シャレン!アウォーズ2021】「ちょい乗り」自転車、オレンジで協力 清水エスパルス

地域と協力して課題解決にチャレンジするJリーグの社会連携活動「シャレン!」。識者とサポーターの投票で表彰チームを選ぶ「シャレン!アウォーズ」は、今年も5月に発表予定です。2021年にパブリック賞を受賞した清水エスパルスが挑戦したのは、「シェアサイクル普及活動」。静岡市ならではの取り組みでした。(朝日新聞スポーツ事業部・伊東武彦)
自転車の街に「横移動」の需要あり

Jリーグクラブの旗がはためく商店街の光景なら日本全国にあるが、この地域でのぼりが立つのは自転車置き場だ。静岡市内の160カ所あまりに清水エスパルスのマスコットキャラクター「パルちゃん」が描かれた自転車が並ぶ。
2020年にはじまったシェアサイクル事業「パルクル」だ。
利用者はスマホのアプリで会員登録して電動アシスト自転車を借りる。市内の置き場ならどこでも乗り捨てられ、料金は15分で70円。スタートして1年半、置き場も台数も4倍近くに増えた。当初は観光目的の利用も想定されたが、コロナ禍もあり、数kmのエリア内で買い物や通勤のために乗り捨てる「ちょい乗り」が軸だ。
「それこそ、私たちが考えていた姿です」とTOKAIケーブルネットワーク営業企画部長の山内崇資さん。山内さんは静岡市がシェアサイクルの運営業者を募っていると聞き、ひざを打った。大手情報会社が手をあげていたが、「新しい交通インフラは地元の企業が作るべき」と上層部を説得して事業の立ち上げに奔走した。清水のホームスタジアムでの定位置はゴール裏という熱心なサポーターでもある。
気候が温暖な静岡市はもともと自転車の街だ。
古くは江戸を逃れた徳川慶喜公が輸入物の自転車を持ち込み、昭和に入るとお茶の搬送を担う「才取り」に使われたことで普及した。自転車の利用率は政令指定都市で4位。シェアサイクル事業が発案されると「需要はないのでは」との声も上がったが、地元で生まれ育った山内さんには目算があった。自転車熱と交通網事情だ。
「静岡駅を中心にバスの路線網が放射線状に広がり、横の移動手段がない。網の目を埋める需要があるのではないか」
事業の顔は「やはりエスパルス」
官民連携をうたうが、市からの補助金はゼロ。市は公用地を無償で提供する。民では、将来に向けて投資をするTOKAIを、地元の企業が置き場用地の無償提供や車体広告などで支える。いわば「オール静岡」の取り組みだが、それを広めるのが、市民ならば誰でも親しみを持てる存在のエスパルスだ。
事業の顔として当初はお茶などの特産品が上がるなか、「やはりエスパルスでは」という声が上がった。その動きが創設30年を機に地域密着を見直し、街のオレンジ化に取り組もうとするエスパルスの意向に重なった。クラブはマスコットやクラブカラーの提供で協力。試合会場でのPRもおこなった。

自転車1台ごとのGPSで利用者の走行データを分析できるため、ファンサービスの向上にも役立つ。サポーターの間では試合会場への移動などさまざまな活用が広がっているという。
立ち上げに関わった広報部の高木純平さんは「最初は自転車とサッカーという取り合わせに違和感がありましたが、Jクラブってこんな使い方ができるんだという可能性を多くの人に示せました」と話す。
山内さんは、パルクルの未来像についてこう言う。「電気自動車や自転車のチャージ機能、Wi-Fiや5Gを備えたステーションが、街じゅうにある。目指すのはパルクルのコンビニ化です」
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