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パークハイアット東京、持続可能な海につながるひと皿 ラグジュアリーホテルが取り組む食のサステナビリティ【2】

パークハイアット東京、持続可能な海につながるひと皿 ラグジュアリーホテルが取り組む食のサステナビリティ【2】
パークハイアット東京の「ニューヨークグリル」で提供された「サステナブル中トロのグリル トマトと山葵チャツネ ライム」(2020年秋のメニュー、パークハイアット東京提供)

東京の高級ホテルの「食」に関するサステナブル(持続可能)な取り組みを紹介するシリーズの第2弾は、持続可能な漁法でとられたことを示す国際認証を得た「サステナブルシーフード」を積極的に使うパークハイアット東京の取り組みを紹介する。(編集部・竹山栄太郎)

魚介類の約35%が「サステナブル」

パークハイアット東京は、東京都庁に近い新宿パークタワーの高層階にある。ホテルのレストランでは、持続可能な漁法でとられたことを示す国際認証を得た魚介類を積極的に使用している。

最上階の52階にあるレストラン「ニューヨークグリル」をランチタイムに訪ねると、ビュッフェに並んだ「サーモンのディルクラスト」の皿の近くに、魚をあしらったロゴマークが掲げられていた。ASC(水産養殖管理協議会)の認証マークだ。

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ビュッフェのメニュー表示に掲げられたASCの認証マーク=2022年1月、東京都新宿区
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パークハイアット東京のニューヨークグリル(提供)

ホテルで取り扱う認証品は、ASC認証のアトランティックサーモンやマダイ、バナメイエビなど6種と、「海のエコラベル」として知られるMSC(海洋管理協議会)認証のカツオやマグロ、計10種(2022年1月時点)。館内で使う魚介類の約35%をこれらの「サステナブルシーフード」が占める。

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「ジランドール」で過去に提供していた「サステナブルサーモンと季節野菜のテリーヌ」(パークハイアット東京提供)
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「ジランドール」で提供された「サステナブルアトランティックサーモンのマリネと文旦 サバイヨンソース」=2022年1月、東京都新宿区

ホテルで世界初の認証クロマグロ提供

ホテルを運営するハイアットホテルズコーポレーションは米国シカゴに本拠を置き、世界各国で施設を展開している。2014年8月にグループ全体でサステナブルシーフードの使用を進める方針を発表した。これを受けてパークハイアット東京でも体制を整え、2015年5月に国内ホテルとしては初めて、MSC・ASC認証を得た魚を扱うことのできる「CoC認証」(Chain of Custodyの略)を取得した。

「今でこそ、サステナビリティという言葉は当たり前になりましたが、当時はほとんど知られていませんでした」(資材部マネージャーの田口朋浩さん)。認証には厳しい基準があり、細かな情報を入力できるよう発注システムを見直すなど、トレーサビリティー(追跡可能性)を確保する仕組みづくりが欠かせなかった。

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「ジランドール」のメニュー=2022年1月、東京都新宿区

これまでの取り組みのなかで特に注目されるのが、2020年10月に世界のホテルで初めて、MSC認証を得たタイセイヨウクロマグロの提供を始めたことだ。供給したのは、宮城県気仙沼市に拠点を置く水産会社・臼福本店で、タイセイヨウクロマグロ漁がMSC認証を取得したのも世界初。海洋資源保護に力を入れるパークハイアット東京の姿勢に共感した臼福本店が、貴重な魚の供給を決めた。

四方を海に囲まれ、魚の種類も調理方法も多様な日本で認証品の割合を高めていくのは、簡単ではないという。田口さんは「単に数字を上げることは目指していませんが、認証品を使うことはお客さまにとっての安心感にもつながります。ひと皿を召し上がっていただくことで地球の海が保たれる取り組みを、いろいろな方に知っていただきたいです」。

従業員の誇りにも

パークハイアット東京の資材部マネージャー田口朋浩さんと広報担当の浜辺敬子さんに、ねらいや顧客の反応などを聞いた。

――サステナブルシーフードの取り組みの経緯やねらいを教えてください。

浜辺さん ハイアットグループの方針を受け、2015年に日本のホテルで初めてCoC認証を取得し、それから館内のレストランで少しずつ使い始めました。「サステナブル」という言葉がいまほど浸透していない頃でしたので、ゲストに親しんでもらおうと、2016年夏には館内レストラン「ジランドール」でサステナブルシーフードのアトランティックサーモンや北海道産ホタテなどを用いたスペシャルメニューを提供するプロモーションもおこないました。

田口さん グループの指針もありますが、安心安全な魚介類の提供をめざしていくというのは当然のことだと思います。地球の保全に一役買っていると感じられることは、私たちが継続していくモチベーションにもなります。

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パークハイアット東京の田口朋浩さん

――どんな苦労がありましたか。

田口さん 私自身も、最初は「魚介類でトレーサビリティー? どうやって証明していくんだろう?」と、まったくピンと来なかったんです。認証機関からの要請に沿ってマニュアルをつくり、管理システムに、食材を提供した日にちや重さを一つひとつ記録できるように改めました。そこまでしないと認められないというのは、刺激的でした。認証を得た後も定期的な審査があり、維持していくのも大変です。

浜辺さん シェフやサービススタッフだけでなくバックオフィスも含む全従業員が、海洋環境やサステナブルシーフードの取り組みについて研修を受けました。その後も毎年、新入社員向けに研修をしています。従業員一人ひとりが利益のためだけでなく社会的責任の一端を担うことも認識しながら、誇りを持って働くことに結びついています。

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「ジランドール」で提供された「ニース風サラダ サステナブルツナのコンフィとボイルドエッグ オリーブ ポテト アンチョビ トマト」=2022年1月、東京都新宿区

――ゲストの反応はいかがでしょうか。

浜辺さん コロナ禍前は宿泊客の8割ほどが海外のお客さまで、特に欧米からの方が中心でした。海外からのお客さまには当初から好評で、日本国内からお越しのお客さまもご説明すると興味を持ってオーダーしてくださいました。サーモンを使った前菜やお料理は特に人気です。

田口さん SDGsの目標14に「海の豊かさを守ろう」が掲げられたこともあって、日本のお客さまの関心も高まっていると感じます。

――サステナブルシーフードの提供で、顧客にどんな価値を提供したいと考えますか。

田口さん ゲストも、誰が、いつどこでとった食材かということがわかれば安心して召し上がれます。その安心感に加えて、環境を守る一端を担うことにも価値を感じていただけるのではないでしょうか。パークハイアット東京での食体験を通して、地球の海が保たれる取り組みを、多くの方に知っていただきたいです。

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パークハイアット東京(提供)
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