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ZEB(ゼブ)とは? 定義や種類、メリット、実現の手順を解説

ZEB(ゼブ)とは? 定義や種類、メリット、実現の手順を解説
ZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギービル)とは?(デザイン:吉田咲雪)
エコビジネスライター/名古屋悟

SDGsへの関心が高まるなか、「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)」は、これからの時代のビルのあり方を先取りするものです。しかし、その言葉だけで実像をつかむのは難しいかもしれません。本記事では、「ZEB」の定義やメリット、実現のための手順などをご紹介します。

art_00346_著者_名古屋悟さん
名古屋悟(なごや・さとる)
2000年から2015年まで環境新聞社編集部に在籍。2016年に独立し、ECO SEED(屋号)を個人開業。オリジナルの電子版環境専門紙を配信しているほか、エコビジネスライターを肩書に各種媒体への執筆も行っている。

1.ZEBとは

「ZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギービル)」とは、「電気や熱などのエネルギー使用量を多く減らすために、高い断熱性能の壁や窓、電力消費の少ないLED照明などの省エネ機器を駆使し、それでも減らせない分を太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用して賄おうという考えで設計・建設されたビル」です。

「実際にゼロエネルギーのビル」ではなく、「計算上ゼロエネルギーのビル」だということがポイントになります。

また、「ZEB」が使われている言葉に、「ZEB Ready」「Nearly ZEB」「ZEB Oriented」といったものがあります。

「ZEB Ready(ゼブ レディー)」とは、「Ready(準備)」とついているとおり、「ZEB」の入り口に立った建物です。具体的には、国が定めた基準となるエネルギー消費量から、50%以上のエネルギー消費量を削減したビルを指します。太陽光発電などの再生可能エネルギーによって作り出すエネルギーは考慮しないため、超省エネビルというイメージです。

「Nearly ZEB(ニアリー ゼブ)」とは、「Nearly(ほぼ)」とついているとおり、完全な「ZEB」へあと一歩の建物です。「ZEB Ready」の条件を満たした上で、再生可能エネルギーでエネルギーを自ら作り出し、基準となるエネルギー消費量から75%以上100%未満のエネルギー消費量を減らしているビルを指します。

「ZEB」は、「ZEB Ready」の条件を満たした上で、再生可能エネルギーでエネルギーを自ら作り出し、基準となるエネルギー消費量から100%以上減らしたビルです。

「ZEB Oriented(ゼブ オリエンテッド)」とは、「ZEB」化が難しい大規模な建築物を対象としたもので、「Oriented(指向の)」とついているように、「ZEB」を指向しているビルのことです。

具体的には、延べ面積1万㎡以上の建物が対象で、「基準となるエネルギー消費量から、建物の用途ごとに設定されたエネルギー消費量を削減(例えば、事務所や学校、工場などで40%以上、ホテルや病院などで30%以上など)すること」「非住宅建築物の省エネルギー基準(建築物省エネルギー法で規定)への適合性を判定するために、国が定めたエネルギー消費性能計算プログラムで未評価の技術を導入したもの」を指します。

2.ZEB化のメリット

建物を「ZEB」にするメリットは、次の四つがあげられます。

(1)光熱費が削減できる

一番の魅力は、エネルギー消費量がとても少なく、光熱費を大きく抑えることができる点です。原油や天然ガスの価格が高騰している状況でも、そもそもエネルギー消費量を可能な限り抑えている「ZEB」なら、その影響を小さくすることができます。

(2)建物の不動産価値が向上する

「ZEB」実現は、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの大幅な削減にもつながります。そのため、一般的な建築物に比べて不動産価値の向上が期待できます。今は、地球温暖化問題への対応(例:脱炭素)が喫緊の課題となっているからです。

(3)過ごしやすさを維持しながらエコに貢献できる

「温室効果ガスの排出を抑制するために、冷房設定温度をなるべく高めに設定しよう」というように環境に配慮する取り組みは、とかく「我慢する」イメージも強いですが、「ZEB」は、省エネルギー性能を高め、自然エネルギーを上手に活用して空調設備などの制御を行う取り組みのため、過ごしやすさが損なわれることがありません。

(4)事業の継続性の助けになる

「ZEB」にすることで、導入した再生可能エネルギー設備で、一時的にエネルギー自立できるようになります。そのため、地震や電力不足による停電が起きても、業務が停滞しないようにできます。

3.ZEB化するための手順

では、実際に「ZEB」化するためには何をしたらいいのでしょうか。「ZEB」化する際には、新しく「ZEB」の要件を満たしたビルを建てるか、既存のビルを「ZEB」にするかの二つのパターンがあると考えられます。そのため、以下では、それぞれの手順や注意点をご紹介します。

(1)新築の場合

①ステップ1. 建築用途や予算などを整理する

「ZEB」は、全国一律に同じ作り方でできるものではありません。建物の用途や立地などによって導入する省エネ機器や再生可能エネルギー設備も変わってきます。「24時間部屋を使うことを想定しているのか?」「給湯など熱を大量に使うか?」といった建築用途のほか、予算などもあらかじめ整理しておくといいでしょう。

なお、何を事前に整理しておけばいいのか見当がつきにくい場合は、類似の事例を見るといいでしょう。すでに「ZEB」を実現している事例には、オフィスビルや食品加工工場、学校など、さまざまなものがあります。似たような用途のビルで「ZEB」を実現しているケースがあれば大きな参考になります。

「ZEB」の事例については、一般社団法人環境共創イニシアチブ(以下、SII)がホームページで、「ZEBリーディング・オーナー一覧」を公開していますので活用するといいでしょう。

また、施設によっては、見学が可能なところもあります。実際に見学して、メリット(「ZEB」にしたことでどんな良いことがあったか)や苦労した点(「ZEB」化にあたってどんなところが大変だったか、思わぬトラブルはなかったか)などの話を聞いておくのもいいでしょう。なお、見学する場合は、必ず事前に連絡をするようにしてください。

②ステップ2. 専門家に相談しながら基本設計を行う

「ZEB」化のイメージが固まったら、基本設計に入ります。基本設計は、専門的な知識を持った企業などに相談するのが一般的です。

基本設計を依頼する設計会社にそうした窓口がない場合、SIIの登録情報から「ZEBプランナー」を探してみましょう。「ZEBプランナー」は、ZEBや省エネ建築物のプランニング実績を持ち、一般に向けたZEB相談窓口を設け、提案やプランニングを行ってくれる存在です。

「ZEBプランナー」は、SIIホームページの「ZEBプランナー一覧」から探すことができます。2022年3月25日現在、全国で設計会社やコンサルティング会社など383件が登録されています。

③ステップ3.ZEBの認証手続きを行う

「ZEB」であることを証明するには、国土交通省が「非住宅建築物に係る省エネルギー性能の表示のための評価ガイドライン」に基づき開始した認証制度BELS (建築物省エネルギー性能表示制度、ベルス)に基づいて、第三者評価機関の評価を受ける必要があります。

BELSは、国が定める計算方法でBEI(省エネルギー性能指標)値を計算し、その値によって5段階で☆の数が決まるものです。数値が小さい(=省エネルギー性能が高い)ほど☆の数が増え、最高ランクの☆5はBEI値0.8以下のものに付与されます。この☆5つの中でも、「ZEB」はBEI値0.5以下と、さらに省エネルギー性能に優れた建物にのみ与えられるものになります。

(2)改築の場合

改築の場合も基本的には、新築のステップ1~3と同じ手順です。

ただし、改築の場合は、既存建物の性能などによって「ZEB」化が難しい場合があり、基本設計とともに「ZEB」化が可能かどうかを検討することが必要です。

また、「ZEB」化を検討する際に参考になるので、既存の図面は事前に準備をしておくといいでしょう。

4.ZEB化で利用できる主な補助金

「ZEB」は、通常の建築よりもどうしてもコスト高になりがちです。国が「ZEB」を促進するための補助金を準備しています。

採択要件があり、すべてが採択されるわけではありませんが、積極的に活用したいものです。なお補助金の申請は、ZEBプランナーをはじめとする専門家が詳しいので、相談して進めるのが得策です。

環境省2022年度予算に盛り込まれた「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」、および経済産業省資源エネルギー庁2022年度予算の「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」をもとにご紹介します。

(1)新築建築物のZEB化支援事業

再生可能エネルギー設備や蓄電池などを導入し、停電時にもエネルギー供給が可能であって、換気機能などの感染症対策も備えたレジリエンス強化型ZEBの実現と普及拡大を目指すもので、以下の2事業があります。

1.「レジリエンス強化型の新築建築物ZEB化実証事業」
災害発生時に活動拠点となる公共性の高い業務用施設について、停電時にもエネルギー供給が可能なレジリエンス強化型のZEBに対して支援するもの。上限5億円で補助率は2/3~1/2です。

2.「新築建築物のZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」(経済産業省連携)
新築ZEBに資するシステム・設備機器などの導入を支援するもの。上限5億円で補助率は3/5~1/3です。

(2)既存建築物のZEB化支援事業

ZEBのさらなる普及拡大のため、既築ZEBに資するシステム・設備機器などの導入を支援するもので、以下の2事業があります。

1. 「レジリエンス強化型の既存建築物ZEB化実証事業」
災害発生時に活動拠点となる公共性の高い業務用施設について、停電時にもエネルギー供給が可能なレジリエンス強化型のZEBに対して支援するもの。上限5億円で補助率は2/3です。

2. 「既存建築物のZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」(経済産業省連携)
既築ZEBに資するシステム・設備機器などの導入を支援するもの。上限5億円で補助率2/3です。

(3)住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業

「ZEB」の設計ノウハウが確立されていない民間の大規模建築物(新築:1万㎡以上、既築:2000㎡以上)について「ZEB」化の実証を支援し、その成果の横展開を図るものです。上限は事業内容によって異なるため要問い合わせですが、ZEBの実証支援の補助率は2/3となっています。

5.身近な「熱」も「ZEB」実現への大きな武器

「ZEB」では再生可能エネルギーを利用しますが、再生可能エネルギーには広く知られている太陽光発電など「発電」のほか、「熱」を利用するものもあります。この再生可能エネルギーの熱をうまく使うことで、エネルギー消費量をさらに下げられる可能性があります。しかも、意外に身近に存在しています。

例えば、地中熱は、土地があれば基本的に全国どこでも使えるものです。太陽光発電などのように発電するものではありませんが、年間を通じてほぼ一定の地下の温度を利用する地中熱ヒートポンプシステムは、夏は外気よりずっと冷たく、冬は外気よりずっと温かい地中の温度を冷暖房などの熱源として利用し、電力消費量を効率的に下げます。

「ZEB」の事例ではありませんが、都内にある某テナントビルでは空気を熱源にする既存の空調機を、地中熱を熱源とするものに更新したことで、電力消費量を最大50%削減したケースもあります。

また、その土地に井戸があれば、その井戸水も冷暖房の熱源として利用できます。地中熱と同じく夏は外気よりずっと冷たく、冬は外気よりずっと温かい井戸水を熱源にすれば、電力消費量を大きく下げられます。

本社屋建て替えを機に「ZEB」化を図った某食品加工事業者は、使わなくなっていた井戸水を熱源とする冷暖房システムを導入し、ほかの省エネ設備などと組み合わせることで「ZEB」を実現しています。

ほかにも、年間を通じて日照量が多い土地で給湯の需要が大きな建物なら太陽熱も有効です。降雪量の多い土地なら、設備の冷却用や空調の熱源として雪を活用することも考えられます。

立地する土地で、うまく使えそうな再生可能エネルギーを組み合わせていくことは、「ZEB」実現に向けて大きな武器になりますので、「ZEB」を目指す人はぜひ検討してみて欲しいと思います。

最後に、2050年脱炭素(カーボンニュートラル)という目標達成に向けて温室効果ガスの排出抑制に取り組んでいくことはもちろんですが、昨今では戦争や自然災害などエネルギーの安定供給に大きな支障を来す不測の事態も多発するようになっています。

こうした現状を踏まえると、快適性を損なわずに貴重なエネルギーを効率よく利用する「ZEB」への関心が今後さらに高まって、普及拡大していくことを願ってやみません。

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